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仮面の男、現る

 翌日。いつもよりも大分遅くに目を覚ます。


 ……あれ。俺、いつの間に帰ってきたんだっけ……?

 臥龍院さんの城のお風呂に入った所までは覚えている。……が、そこから後の記憶が全く思い出せない。


 えっ、俺、どうやって帰ってきたの!? 怖っ!?



 時刻は九時十一分。


 スマホを見ると、タッツンからラインが来ていた。

 一〇時に近所の神社へ集合。とだけ書いてある。


 恐らく昨日の件の説明をしろという事なんだろう。


 母ちゃんに「遅よう」と嫌味を言われつつ朝飯を食い、諸々準備を整えて家から神社まで徒歩で向かう。


 家から五分も歩けば、真っ赤な鳥居が連なる稲荷神社が見えてくる。


 ここの本殿の裏には偶にエロ本が捨てられているので、地元の中学生たちの隠れたホットスポットだったりする。

 スマホでエロ動画をいつでも見られる時代とは言え、フィルタリングをかけられた中高生にとってエロ本の価値は未だに計り知れない。


 階段を上り鳥居を潜って神社の境内に入ると、注連縄を巻かれたご神木の下でタッツンとマサが腕を組んで待っていた。


「「おら、昨日の続き話せよ」」


「いきなりかよ。まあ、いいけどさ」


 俺はゴールデンウイーク初日の夜から起きた一連の出来事を、見たまま感じたまま、全て話した。

 最初は半信半疑だった二人だったが、レベルアップで上昇した身体能力を実際に見せたら二人とも口をぽかんと開けたまま動かなくなってしまった。


「……つー訳で、今の俺の戦闘力は四億って事らしい」


「なんだよ四億って!? スーパーサ●ヤ人かよ!?」


 マサのツッコミはもっともだ。

 というか、俺自身そこまで強くなったという実感があまりない。

 まあ、それもこれも全部、逢魔さんに殺されまくったせいなんだろうけど。


「……ちなみに、参考までに聞きたいんですが僕たちの戦闘力ってどのくらいなんですか?」


「んー? ちょっと待て……お、出た出た。マサが戦闘力二九〇で、タッツンが戦闘力二五〇……って、二人とも結構強いな、オイ」


「そうなのか?」


「ちなみに普通の爺さんが戦闘力一だ」


「まあ、僕の場合色々隠し持ってますし、マサは見た通りゴリラですから? そんなもんじゃないんですか?」


「ウホッウホゥ!」


 マサがウホウホと分厚い胸板を叩いてドラミングする。やっぱゴリラじゃねーかコイツ。

 まあ、こいつらも大概変な奴だしな。俺が言えたことじゃないけど。


「まあ、お前ら昔から変な奴だったしな。多少戦闘力高くても納得だわ」


「「シスコンバーサーカーがなんか言ってる件」」


「誰がシスコンだ誰が!?」


「妹のストーカーを縛り上げて泣いて謝るまでこちょこちょした奴が何を言うか」


「妹の誕生日を毎回盛大に祝おうとして若干ウザがられてる奴が今更何をって感じですね」


「う、ウザがられてねーし!? ……って、なんか急に暗くなってきてねぇか……?」


 と、俺はここで周囲の異変に気付いた。

 ついさっきまで雲一つなかった空が、急に分厚い雲に覆われて、びゅうびゅうと生暖かい風が吹き始める。


 この感じ……なんか嫌な予感がする。なんだ、この気持ち悪い気配は。


「お、おい。なんか急に天気悪くなってきたぞ!?」


「一度帰った方が良くないですかコレ!? なんか明らかにヤバい感じですけど!?」


「……っ!? な、何か来る! 二人とも、逃げるぞ!」


「「は? えっ、ちょ!?」」


 戸惑う二人をたわらのように肩に担いで、俺は全力で神社から離れようとした。


 だが、遅かった。



「ぐあっ!?」

「いてっ」「ぐえっ」



 鳥居を潜ろうとした瞬間、俺の身体は斥力のような力に跳ね返されて、神社の境内まで押し戻されてしまう。

 転んだ拍子に担いでいた二人を落としてしまい、二人が悲鳴を上げるが今はそんな事に構っている場合じゃない。……来るっ!



 神社の境内につむじ風が吹き荒れ、砂ぼこりを巻き上げてびゅうびゅうと唸る。

 つむじ風が「轟っ!」と弾け、中から一人の男が現れた。



「よっと……。ふふふふ、中々黒幕っぽい登場だろ? もっと恐れおののいてもいいんだぜ?」



 両手を広げておどけてみせるのは、黒いスーツ姿の般若面の男。


 戦闘力……測定不能。文字化けして読み取れない。


 だが、男からは底知れない不気味な霊力をひしひしと感じる。

 コイツ……ふざけちゃいるが、動きに全く隙が無い。



 スキル【霊力察知Lv四】習得。



 新スキルを習得したことで、今までぼんやりと感じていた男の気配がより鮮明に感じられるようになった。

 それによって俺は確信する。コイツは今の俺よりはるかに強いと。



「テメェ、何者だ」


「うーん、そうだなぁ。スカウトマン、とでも名乗っておこうか」


「スカウトマンだぁ?」


「ああ、そうだ。俺は君をスカウトしに来たんだ。昨夜の戦いを見る限り、君は随分と強いみたいだからね。予定変更ってやつさ」



 予定変更……?

 口ぶりからして、コイツはどうやら昨夜の件を知っているようだし……ま、まさか!



「テメェ! あの髪の毛女の仲間か!」


「仲間? ははっ、まさか。あれは単なる小手調べの道具だよ。君の実力をテストするためのね」



 道具…………だと……っ? 

 罪も無い赤ん坊たちの魂を穢して、呪いでこの世に縛り付けておいて、それを道具だと……っ!?



 ────許せねぇ。



「波ァァ────ッ!!!!」



 オーラを最大まで高め、前面から霊力波をぶちかます。

 格上だろうが知った事か! コイツは、コイツだけは絶対にここでぶっ殺す!


 俺の放った霊力波は間違いなくスカウトマンの全身を捉え直撃した。


 だが、



 ────パァン!



 風船が弾けるような音がしたかと思えば、急に捉えていた筈の手ごたえが消失し、スカウトマンの気配が背後に現れる。

 慌てて振り返ると、スカウトマンはタッツンとマサの首に手を回して、本殿の屋根の上に立っていた。



「なっ!? 二人を放せ!」


「やーだよ。だってお前、俺の話聞いてくれないんだもん。お前に与えられた選択肢は一つ。俺たちの仲間になることだけだ」


「「うぐっ!?」」



 スカウトマンが二人の首を絞める腕に力を籠める。



「やめろっ!」


「ウチは待遇いいぜ? 給料はバリ高だし、望めばどんなものだって手に入る。いい女も抱きたい放題だし、美味いもんもたらふく食えるぞ? な? 賢く生きようぜ?」



 くそっ! 何か、何か手は無いのか!? 二人を傷つけずに助け出す方法は……っ!?

 霊力波は……駄目だ! 二人まで巻き込んじまう!

 霊力弾も駄目だ。あれじゃ遅すぎて当たらねぇ!



「反応が鈍いなぁ。君さ、立場分かってる? 俺も暇じゃないんだよ。だから早く頷いてくれないと、お友達、殺しちゃうよ?」


「「かはっ……!」」


「や、やめろっ! やめてくれ!」


「じゃあ、俺たちに従うって言えよ。そしたら、こいつらは解放してやるから」


「ぐっ…………………」



 くそっ! せめて一瞬だけでも隙が作れれば……!



「行きなさい! 『左魂(サコン)』『右魂(ウコン)』っ!」



 

 転機は突然訪れた。


 スカウトマンの背後の空間から姿を現した大きな二匹の狐が、スカウトマンの頭を噛み砕いたのだ。

 再び風船のように割れて、境内へと転移するスカウトマン。



 い、今の声……まさか!



「はんっ! 人質取られるなんて情けない。これだからごり押しバカは!」



 覚えのある気配に振り向くと、そこには狐の尻尾と耳を生やした巫女姿の麗羅がいた。



霊力察知は相手から漏れ出ている霊力を感じ取るスキル。(偽装されている場合はレベルに応じて偽装を暴く)


霊力探知は自分から霊力を飛ばして、それに引っ掛ったものを見つけ出すスキルです。(ようするにアクティブソナー)


似てるけど微妙に違うのだ!





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