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こんなところにいられるか! 僕は帰らせてもらいます!(フラグ)

 エルフ族四賢者のチック・ビー・コリッコ・リーを倒した俺たちは、一度タッツンの母艦に戻り情報の共有と今後の方針について話し合うことになった。


『────そんなわけでウチの兄貴がまたやらかそうとしてたのを止めに来たら剣にされちった』


「龍になったり剣になったりホント忙しいわね」


 会議室のテーブルの上に置かれた俺を物憂げな表情で見つめ、頬杖をついたレイラが嘆息した。


『俺だって好きでこうなったんじゃないやい!』


「そんなこたぁどうだっていいのよ。宗助さんを倒せばアンタは元に戻るって認識でいいのよね?」


『た、多分……』


「そこは即答しなさいよ! 一応神様でしょ!」


『んなこと言っても結構ガッチリ封印されてっからなぁ』


 ウカノミタマから貰った首飾りのおかげで、レイラに力を貸す形でなら外界に干渉できるけど、逆に言えば今はそれ以外何にもできない状態だ。


『宗助を改心させて封印を解いてもらうってのが一番確実な方法ではあるんだが……』


「無理でしょうねぇ」

「無理だな」

「無理ね」


『口揃えて言うことないじゃんかよ』


 今の宗助は転生後のエルフ男の意識と混ざり合った状態にある。

 つまり宗助を突き動かす最大の動機は人族に故郷を滅ぼされたエルフ男の復讐心だ。

 あいつは元々虚無主義(ニヒリスト)なところがあるからな。

 世界がどうなろうと知ったことではないだろうし、むしろアイツなら世界が破滅する最後の時まで傍観者に徹するだろう。


 断罪刀クリカラであいつの罪はすべて祓ったし、反省したというアイツの言葉にも嘘はなかった。

 ただ、エルフ男の復讐心と宗助自身の特性が最悪な方向へ噛み合ってしまっただけ。


『……ん? 待てよ?』


 つまりエルフ男が復讐心を抱くきっかけになったイベントを阻止すればいいんじゃないか?

 そうすりゃエルフ男は力を求めて魂魄解放なんて禁術に手は出さないはずだし、そうなれば宗助が深淵から呼び起こされた事実もなくなって、俺が剣にされた事実も消えるってわけだ。完璧じゃん。


「また何か思いついたって雰囲気ですね」


「だが断るっ!」


『まだ何も言ってねぇだろ! お前らちょっと過去まで飛んで、宗助の転生体の悲劇を止めてきてくれ』


 俺は三人に今の宗助がどういう状態なのか話した。


「つまり動機ごと潰してこいと? また無茶なこと言いますねぇ」


『過去に飛ぶくらいこの船なら余裕だろ?』


「空間移動とはワケが違うんですよ。この世界の法則はこうしている今も船のAIが自動で学習してますけど、安全に時間移動できるようになるまでしばらくかかりますよ」


「しばらくってどれくらいだよ」


「ざっくり半年ってとこですかねぇ。ってか耳クソ飛ばさないでくださいよ汚いな」


 マサがほじった耳クソを床に飛ばしながら聞くと、タッツンが嫌そうな顔で答えた。


「そんな待てねぇよ!」


『宗助の魔法はミーム汚染で封じてあっけど、多分間に合わねぇな』


 八方塞がり。

 タッツンとマサが腕を組んで「むぅ」と唸ると、それまで腕を組んだまま目を閉じていたレイラが口を開いた。


「要は必要なデータさえ揃えばできるのよね?」


「ええ、でもそんな都合よく時間逆行に関するデータなんて……」


「あるわ」


「「どこに?」」


「こうすりゃいいのよ!」


 おもむろに俺を握りしめたレイラは何を思ったか刃を船の床に思いきり突き立て、片手で印を組み俺の力を船全体に流し込み始めた。


 おれと同化したことで魔神の権能を得た船のAIはこの世界の魔法則を完全に理解し、船は過去へ向けて時間跳躍の準備に入る。


「あーっ!? ちょ! 何してくれちゃってるんですか!?」


「便利なチートアイテムを使ったまでよ」


「いくらなんでも力技が過ぎるでしょうよ!? て言うか僕の船傷つけないでくださいよ!」


「いいじゃないこれくらい。どうせすぐ直せるんでしょ?」


 おれを床から引き抜いたレイラがにべもなく言うと、タッツンは床に這いつくばって空いた穴を覗き込みガックリと肩を落とす。


「そりゃそうですけど。あーあー、もうガッツリ穴空いてるじゃないですかぁ……」


「昔っからこういうとこ細けぇよなお前」


 マサがほじった鼻くそを床に飛ばして言うと、いよいよタッツンのこめかみに青筋が浮かんだ。


「だからほじった鼻くそ飛ばすなって言ってるでしょうがこのバカ筋肉が! だいたい三人ともいつもガサツ過ぎるんですよッ! 僕のオモチャ何度も壊したの忘れてませんからね!?」


「あぁん!? バカ筋肉だとこの野郎! 筋肉バカはいいけどバカ筋肉はダメだ訂正しろやゴラァ!」


『どーでもいいわ! つーか主に壊してたのはマサだろ! 俺は間違えてセーブデータ上書きしたくらいだろが! このアホと一緒にすんなや!』


「ラスボス戦手前のデータ消しやがったクズ野郎は黙っててくださいよ! このクズ野郎!」


『あー!? 二回も言った! 誰がクズ野郎だ祟るぞゴラァ!』


「ちょっと!? 私までこのバカと一緒にしないでくれる!? 私はバカヒロがタッツンのオモチャ返そうとしなかったから取り返してあげようとしただけでしょ!?」


「それで僕の超合金真っ二つにしてちゃ世話ないんですよ! あーもう、思い出したら腹立ってきましたよ! もういいです! 知りませんから!」


 と、タッツンは肩を怒らせ部屋から出て行ってしまった。

 なんだよアイツ。


「謝ったほうがいいかしら……」


『ほっとけほっとけ。どうせ明日にはケロッと忘れていつも通りだろ』


かしこぶってるけどアイツが一番中身単純だからな」


「全員どっこいどっこいでしょ……」


「『んだとー!?』」


 なんて、その時は楽観していたのだが、翌日タッツンは艦内からぱったりと姿を消していた。



 ◇



 早朝。

 晃弘たちと口喧嘩してから一度も顔を合わせることなく一晩を過ごした辰巳は、翌朝になってもまだ昨日のことを引きずっていた。


「ああもう腹立つ! 結局謝りにも来ないなんてなんなんですかアイツら! もういいですあんな奴ら知りません! 僕は地球に帰らせてもらいます!」


 などとプリプリ怒りつつ自作の小型ポッドに乗り込んだ辰巳はコンソールに数値を入力していく。

 準備が完了し発進ボタンを押すとポッドが光に包まれ、次の瞬間には『バシュン!』と辰巳が乗ったポッドがその場から消え失せ、時空のトンネルに入った。


「さーて、帰ったら涼葉さんに会いにいきますかね」


 などと可愛い彼女のことを考えてすぐさまご機嫌になった辰巳だったが……


「ん? なんのアラートだ? ……げぇ!? なんですかこの数値!? あわわわヤバイヤバイヤバイ!?」


 液晶画面に表示された数値に慌てふためき辰巳が操縦桿に手を伸ばした、次の瞬間!


 ガオンッ!


 と、時空のトンネルに裂け目が生じ、辰巳が乗ったポッドをまるごと飲み込んでしまう。

 そのまま時空の乱気流に流された辰巳はどことも知れぬ時間軸に放り出された。


「痛ってて……。ゲホッ! ゲホッ! クソッ! なんなんですか一体!?」


 不時着の際に故障して煙を吐き出すポッドから辰巳が脱出すると、そこにいたのは……


「わぁ! ゆーしゃさま! ゆーしゃさまきた!」


「ほんとにきた!」


「すごいすごい!」


「たすけてゆーしゃさま!」


「は? え、なんですか君たち」


 身長一〇センチ程度。

 デフォルメキャラみたいな三頭身。背中には半透明の虫みたいな羽がある。

 皆一様に幼い子供のような顔立ちで、一言で例えるなら絵本の妖精さんのような。


 ふと周囲を見渡せば、足元には解読不能な異世界の魔法陣があり、木の根が絡み合ってできた壁の隙間から無数の視線がこちらを見ていた。


「ぼくたちフェアリー!」


「あのねあのね! わたちたちのおともだちがあぶないの!」


「わるいニンゲンたちがせめてくるの!」


「だからたすけてゆーしゃさま!」


「たすけてくれたら、どんなねがいもかなえるよ!」


「おねがいおねがい! たすけてゆーしゃさま!」


「あーもうわかったわかった! 分かりましたから顔の回りでブンブン飛ばないでください! 羽音が思ったよりリアルで耳障りです!」


 顔の回りに寄ってたかる羽虫どもを片手で散らしながら、辰巳は妖精たちの言い分を頭の中でまとめていく。


「つまり僕は君たちが召喚した勇者で、君たちの友達が人間に襲われそうだから助けてくれと」


「「「「うん!」」」」


「またベッタベタのテンプレ展開ですね……。で、そのお友達ってのは誰なんです?」


「エルフだよ!」


「……またタイムリーな」


「エルフのくにのおひめさまがね」


「りゅーがくさきのニンゲンのくにで、おーじさまと」


「おうさまと」


「だいじんと」


「みんなとエッチなことしちゃって」


「それがばれて、おきさきさまにごーもんされたの」


「それでね、エルフのくにのばしょ、わるいニンゲンにおしえちゃったの!」


「バカなんですか。バカなんですね」


「あたまはユルユルだけど、あっちのほうはキツキツってひょうばんだよ!」


「心底どーでもいいわ! 可愛い顔してオッサンみたいな下ネタぶっ混んできますね……」


「おねがいおねがい!」


「クソビッチのひめさまのしりぬぐいさせるみたいで、とってもこころぐるしいけど」


「このままじゃむじつのエルフまでみなごろしにされちゃう!」


「だからたすけてゆーしゃさま!」


「たすけてくれたらなんでもするよ!」


「ほう、今何でもするって言いましたね?」


「「「「あっ……」」」」


 言質取ったり。

 ニヤリと悪い笑みを浮かべた辰巳に、妖精たちは身を寄せてたじろいだ。


「いいでしょう。結果的にあのバカを助けることになるのは癪ですが、やってやりますよ」


「あ、あのね……? なんでもとはいったけど、あんまりひどいことは……」


「ぼくたちオ○ホにされたらしんじゃうよ……」


「しませんよンなこと!なぁに、酷いことは言いませんよ。クックック……!」

新作投稿しました。

よかったらそちらも読んでみてくださると嬉しいです。


タイトルは「クソデカダンジョン」です。

作者マイページからどうぞ

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[一言] エルフの姫はエロフだったか
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