できたてホヤホヤ伝説の剣
遅れて申し訳ない!
光の柱が天井をブチ抜いてから数分後、天井に空いた大穴からメカ装備を装着したレイラたちが下りてきてヒーロー着地を決める。
予想より大分早い到着だ。
つーかレイラさんの装備エッチ過ぎませんかね。
女体の曲線を引き立てるピチピチ具合と謎素材のテカリに匠のこだわりを感じる。
ピチピチパイスーにメカ装備とはタッツンも中々いい趣味してるじゃねーの。神様ポイント五億点あげちゃう。
『よくぞ来た。選ばれし乙女と子分AとB! さぁ抜くがよい! 俺をこの地より解き放ち魔王の野望を止めるのだ!』
「誰が子分ですか。何してんですかこんなところで。ちょっと見ない間に無機物になってるし」
『実はかくかくしかじかってなわけで』
「くっ……! こいつ、直接脳内に!」
これまでの経緯を脳内へ直接ぶち込んでやると、こめかみを押さえてタッツンが僅かに呻いた。
あのアホ女神は痛みでのたうち回っていたのに、この程度で済んでいるのはやっぱり頭のデキが違うからか。
「んぎぎぎぎッ!? なんだコイツくっそ重てぇ!?」
マサが筋肉パワーで無理やり剣を岩盤からぶっこ抜くが、あまりの重さによろめいて剣を手放した。
おかしいな。俺が認めた者以外が触ると重さが六〇〇〇垓トンになるようにしたはずなんだが……。
ちなみに六〇〇〇垓トンは地球の一〇〇倍の重さだ。
『お前に俺を扱う資格は無いッ! 鍛え直して出直すがいいわッ!』
「はいはい、バカ言ってないでさっさとズラかるわよ」
息も絶え絶えに剣を手放したマサに代わってレイラが剣を拾う。
「なによ、軽いじゃない」
『やったねレイラちゃん、専用装備だよ』
「まったく嬉しくないわね」
などと言いつつ刃の腹を指でなぞるレイラの手つきはどこか愛おしげで。
「ンッンーッ! さっきのは効きましたよォ……ッ」
俺を回収したレイラたちが飛び立とうとすると、天井の岩盤が蠢いて大穴が塞がり、今まで沈黙していたビーが動き出した。
ビームに焼かれて真っ黒に炭化していた体表がボロボロと崩れ落ち、一糸纏わぬ美しいエルフの姿が徐々に顕わになっていく。
「アンタ、エルフだったのね」
「ンッフッフッフ……! この姿を同族以外に見せるのは初めてですよ」
レイラが剣を構えると、ビーの白肌が内側から焼け爛れてゆき、流れ出た毒血が岩盤を溶かす。
すると焼け焦げて炭化したはずの包帯が時を巻き戻したかのように元の白さを取り戻し、彼の身体にシュルシュルと巻きついて血まみれの身体を覆い隠していく。
「ワタークシの身体は生まれつき呪われていましてねぇ、こうして特別な包帯を巻いていなければ自らの毒血で周囲のあらゆるものを溶かしてしまうのですよ」
「わざわざ弱点を教えてくれるなんてよっぽどの自信家なのかしら。それともただのバカ?」
「ンフフフフッ! 勿論前者ですとも」
包帯が全身を覆い隠したところでビーはレイラたちに向け慇懃に腰を折り挨拶した。
「改めまして。エルフ族四賢者のチック・ビー・コリッコ・リーと申します。ワタークシの素顔と真名を冥府への手土産にアナータたちにはここで死んでいただくとしましょう!」
うわ変な名前!
なんてツッコむ間もなく、刹那、ビーの乳首から毒血がレーザーのように噴き出してレイラたちに襲いかかった!
間一髪三人が血のレーザーを躱すと、今度は両手の指先から噴出させた毒血の鞭がビュンビュンと空を切り裂き乱舞する。
毒血が触れた壁や天井はドロドロに溶け落ち、三人を覆うバリアさえも掠めた部分から徐々に溶け崩れていく。
「クソッ! なんだこの攻撃!? バリアまで溶かすとかそんなのアリかよ!?」
「ンッフッフ! 当然でしょう。ワタークシの血は万物を溶かし尽くす劇毒! ワタークシ自身、超再生能力が無ければとっくに滅びていたでしょう」
空中を高速で飛び回り毒血の鞭を躱し、片手で印を組んだレイラが呪術を発動させる。
ビーの身体が青い炎に包まれ、そこへすかさずタッツンがプラズマグレネードを投げ込み、
「燃え尽きろ!」
マサがビーに向けた掌を握りしめると、炎の色が青から白へと変わり、ビーの姿が白い光の中に消えてゆき────
「んぁぁーっ♡ エクスタシー!」
バァン! と、光が内側から弾け、全裸のビーが姿を現す。
どうやら肉体の損壊が一定を超えると超再生が始まって全回復するようだ。厄介な。
自分の肩を抱き寄せ、恍惚とした表情でくねくねと悶えるその様はどこからどう見ても変態だった。
「イイッ! イイですよぉ! この痛み! ここまで深く傷ついたのは久しぶりですよォ! あそーれ! ビンッ☆ ビンッ☆」
「嫌ぁぁぁぁっ!? 変態!」
ビーがコミカルな動きで腰を振り、光り輝くイチモツを強調する。
見た目はおふざけしかないのに凄まじい力の波動を感じる。なんて変態力だ。
「我々エルフ族は長命種ゆえに、常に一定の刺激を受けていないと心が先に死んでしまうのですよ。だからこそ性的興奮を追求する痴的探究文化が生まれた。そして我々は長き歴史の中で性的興奮を異能に変換する技術を開発した。それこそがリビドーアーツ」
何か重要なことを言ってるはずなのに左右交互に光る乳首とジ●ジョみたいな謎ポースが気になってまったく頭に入ってこない。
おい包帯、なんで股間と乳首を避けて巻き付くんだ。隠せよ。
「そしてワタークシは痛みに性的興奮を覚えるマゾヒストでしてねぇ。ヒヒッ、さっきのはイーイ痛みでしたよぉ♡ おかげで超回復が呪いによる破壊速度を上回ってしまいました」
じゅるりと舌なめずりしてニチャリと汚く笑うビー。
っていうかさっき四賢者って言ってたからコイツに匹敵するド変態があと三人もいるのか。
そりゃエルフの森燃やされても仕方ねぇよ。
「だったら痛みすら感じさせず一瞬で完全消滅させてやりますよ」
「できますかねぇ。たかがヒューマン如きに。ワタークシの頑丈さと敏感さはすでにご覧の通りでしょうにンフフフフ!」
生半可な攻撃では超再生で回復されてしまう上に、攻撃すればするほど強くなられては手のつけようがない。
何かアイツの弱点を突ける武器でもあれば話は別なんだが……。
『あ』
俺がなればいいのか!
こんな剣になっても俺が一つの世界を創造した最上位神格である事実は変わらない。
俺の力を使用者に付与すればあるいは……!
「っ!? 何これ、力が溢れてくる……!?」
『うっし上手くいった! 俺を使えレイラ! 俺を身に着けている間、神の権能の一部を使えるようにした』
「ンンンン? 気配が変わった……? いや、この場合剣の神性が乗り移ったとでも言うべきでしょうか。というかアナタ、その剣普通に持ってますねぇ。ワタークシでは重すぎて地面から抜くことさえ叶わなかったというのに」
「それはアンタがコイツに嫌われてるからよッ!」
一閃。
背部ブースターを噴かせて地面スレスレを一直線に駆けたレイラが横薙ぎに剣を振りぬく。
ビーはその一閃を避けもせず腹で受け────そのまま再生することなく上半身がズルリと斜めに滑り落ち、
「ば、馬鹿なっ!? 再生できない!? あっあっあっこれ死ぬイイッ! イイですよぉ!!!! ンンンンッ!
エクスタシ────ッ!!!!」
常人には理解できない快楽に顔を歪ませ、断面から溢れ出た光に飲まれて爆散した!