NEXT STAGE
犬飼 晃弘 レベル∞(アレフΩ) (☆☆☆☆☆☆☆)
戦闘力 ∞(無限超克究極連次多元宇宙)
保有ソウル
アレフΩ(MAX)/アレフアレフワン(NEXT)
保有スキル
【神躰】
『不滅の身体Ex』『超霊闘気Ex』
『超感知Ex』『絶対防壁Ex』
『払魔闘術Lv一〇(MAX)』
『仙術Lv一〇(MAX)』
【神霊】
『霊力波Lv一〇(MAX)』
『霊力弾Lv一〇(MAX)』
『超破霊拳Lv一〇(MAX)』
『龍力操作Lv一〇(MAX)』
【神技】
『呪怨封緘Lv一〇(MAX)』『飛行Lv一〇(MAX)』
『魂魄開放Lv三』『メタ殺し』『魔核破壊』
『自動書記』『魔導士書』『魔導の極み』
『魔法創造』『悪魔創造』『空間移動』『混沌の種』
『ミーム汚染』『存在改変(馬)』『数え羊』
『夢現』『原始回帰』『無敵殺し』『自我喰らい』
獲得称号
『超越者』
自分に連なるあらゆる並行世界を内包・統括し多元宇宙の外側へ逸脱した超越者の証。
この称号は多元宇宙の中で得た称号のすべてを内包する。
神化が完了し意識がハッキリしてくると、俺は奇妙な空間にいた。
白く渦巻く光の中から真上に向かって幾つも円柱が伸びていて、それぞれ高さの違う円柱の上には個性的な格好をした超越者たちが座り俺を見下ろしている。
上から数えて二番目に高い円柱の上に閻魔様、三番目に臥龍院さん、四番目には龍姫の母親の龍宮乙姫の姿が見えた。
どうやら今俺たちが座っている円柱の高さはそのままそれぞれの実力を示しているらしい。
俺が一番下かよ。くそっ。
「ほっほ、ようこそ臥龍院の秘蔵っ子。随分と早かったな」
下から数えて三番目、背中に大きな白い翼を持つ純白のトーガを身に着けた老人が穏やかに笑う。
頭の上に天使の輪っかもあるし、ザ・天使って感じの見た目だ。
「そしておめでとう。お主は神の支配から抜け出した八番目の超越者じゃ」
天使の爺さんの拍手に続き他の面々からも拍手が送られる。
「ここは……?」
「ここはテメェがついさっきまでいた次元宇宙の大外。筆舌に尽くしがたい化物どもが巣食う無窮の混沌だ」
下から二番目の柱に座っていた黄金フルプレートの騎士が俺の問いに答える。
目測三メートルはありそうな巨体なのに声があまあまロリボイスで頭が混乱しそうだ。
「より正確にいえば僕たちで形成した仮想空間だけどね。この空間の外は無限に等しい数の概念だけが渦巻く情報の海。こうして時間と空間を定義しておいたほうが個々の判別も容易だし、悍ましい概念に触れて気が狂うリスクも減るからね」
下から四番目、大司祭の法衣を着た十歳くらいの白髪ショタがそう付け加える。両腕が白蛇だ。
ふむ、本来〇と一だけで行なわれているコンピュータの内部処理をOSを介して人間にもわかりやすくモニターに表示しているようなものか。
多分今の俺なら概念だけの世界でも問題なく活動できるはずだけど、うっかりヤバイものに触れて俺の潜在意識を介して宇宙に悪影響が出ても嫌だしな。
「私たちはここを『座』と呼んでいます。ここに辿り着いた今のあなたの状態こそが魂魄解放の第三段階。即ち、あらゆる多元宇宙の創造主からの開放です」
「ぶっちぎりの最短記録だよ。おめでとう」
遥か高みから見下ろす閻魔様の言葉を拾った白髪ショタが拍手すると俺の頭上にカラフルな紙吹雪が舞った。
【称号『レコードホルダー』獲得】
『レコードホルダー』
異空間での体感時間を含めたトータルタイムで座に最速で到達した者に贈られる栄誉称号。
特に効果はないが自慢できる。やったね!
いやぁ、どーもどーも。へへへ。って効果なんもないんかい!
やったね! じゃねぇよ。ステータス画面でちょいちょいおちょくってくるのなんなんだ。
「妾たちの目的はただ一つ。確定した滅びの運命を覆すこと。お主はその鍵となる」
龍宮乙姫がフリフリのついた扇子で口元を隠し、瞳の奥に複雑な感情の色を含ませ俺を見下ろす。
もう一人の俺にとっては義母にあたる人だけど、俺は別人格の犬飼晃弘だから微妙に気まずい。
「……つーかよくよく考えたら宇宙自身がアザトースの外に出たならもう宇宙の滅びは回避されたんじゃねーの?」
「そう簡単な話ではないのですよ。すべての多元宇宙は物理的には隔絶していますが、霊的には密接に繋がり合っているのです。他の多元宇宙が滅びてしまえば魂の循環機能が崩壊してしまう。そうなればあなたの宇宙にはやがて何も生まれてこなくなるでしょう」
「それにここにいる超越者たち全員があなたのように宇宙を内包しているわけではないわ。私たちは一蓮托生なのよ」
俺の疑問に閻魔様と臥龍院さんが答えてくれた。
なるほど。やっぱきっちり決着はつけなきゃいけないんだな。
「それ以前に問題なのは鍵となる貴様が弱いことだ。吾輩の鼻息一つで消し飛ぶレベルでは話にもならん」
一番高い柱の上から厳めしい声が響き、声の主がのそりと首をもたげ後光が俺を照らす。
ア、アルパカ……だと!?
若本○夫みたいな声なのにどう見てもアルパカ! お前その姿で全多元宇宙の頂点とかふざけてんのか!
「ま、アザトースまでの『道』もまだ未完成だしな。それまでにアタシらで鍛えてやるしかねぇだろ」
黄金騎士がよっこいせと立ち上がり首をゴキゴキと鳴らす。
「道?」
「さっきも少し説明したけど、座の外は無限に等しい概念が渦巻く情報の海。だけどそこには明確な階層が存在するんだ。そしてアザトースはその最下層にいる」
誰に向けたわけでもない問いに蛇腕の白髪ショタが答える。
「アタシらがいる座は無窮の混沌の最上層。最下層に至るまでには特定の順序に従って階層を下って行かなきゃならねぇ」
「そして最下層に至るまでの間には触れただけで宇宙が消し飛ぶレベルのヤバイものがそれこそ無数に渦巻いてる。宇宙を滅亡から救おうとしてるのに道中でやられちゃったら意味ないだろ? だから安全な道をみんなで作ってるところなのさ」
「それってどれくらいかかりそうなんだ?」
「そうだね。霊界標準時間でざっと〇・〇〇五時間ってところかな」
つまり地球の時間に換算して約半年か。
「ギリギリじゃねーか。本当に間に合うのか?」
「間に合わせるさ。というか道だけできても肝心の君が弱いままじゃ話にならないからね。まずは彼女の管轄する宇宙で修行してくるといいよ」
蛇腕の白髪ショタが黄金騎士に視線を向ける。
しっかり体操して準備万端といった感じの黄金騎士は虚空から光り輝く剣を取り出しその切先を俺に向けた。
「ひとまずオメェには言いたいことが一つある。よくもあんな化け物をアタシの世界に送り込んでくれやがったなコラ!」
「は? なんのことだよ」
「とぼけんなテメェの兄貴のことだ!」
うぇっ!? アイツまたなんかやらかしたの!?
「あの野郎、転生してからメキメキ力をつけて今やアタシに比肩するほどのエネルギーを内包してやがる。問題はそのエネルギーの使い方だ! アイツすべてのエネルギーを使ってアタシの世界を完全に閉じようとしてやがる!」
なるほど。つまり俺とは完全に逆方向のアプローチで宇宙を守ろうとしているのか。
俺は神化によって宇宙自身の強度を上げて力技でアザトースの外に出た。
宗助は逆にそのエネルギーで宇宙の強度を限界まで高めて閉じることで、アザトースの目覚めによる滅びに抗おうとしている。
きっと魂のリソース管理もすべて自分でやるつもりなんだろう。
魂だってずっと転生を繰り返しているわけじゃない。何度か転生したら数万年単位で休眠を取らせなければ摩耗してしまう。
一つの宇宙だけですべてを循環させようとすれば確実に生物の多様性は失われる。
どうせ宗助のことだから霊的なリソース消費が大きい上位種族の数を大きく減らして、蟲とか植物の比率を上げることで釣り合いを取ろうとか思ってるんだろうな。
いかにも人類の選別なんて馬鹿げたことを大真面目にやろうとした宗助らしい。
「別にアタシは神じゃないし人類種族の文明が滅びようと知ったことじゃねぇが、人の分際で命の選別なんて大それたことをしようとするその傲慢さが気に食わねぇ! けどアタシは『道』の構築で忙しい。だからお前、代わりに兄貴のツラぶん殴ってこい! ちょうどいい修業になるだろうぜ」
「ちょ!? ぐぶぇぇっ!?」
黄金騎士が輝く聖剣を振うと俺の背後で空間がパックリ裂ける。
一瞬で距離を詰めてきた黄金騎士のグーが顔面にモロに決まり、俺は鼻血を噴いて裂け目の中へ落ちていくのだった。