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始まりの塔 その1

 学校は影分身に行かせ、早速俺は塔の攻略へ取り掛かったのだが……。


「なんでお前らも普通に学校サボってんだよ」


 塔の入り口にまさかの全員大集合である。

 入り口付近にはすでに自衛隊の部隊が展開していたが、幻惑の魔法をかけておいたので彼らはまだ俺たちに気づいていない。


 小春含めて学生組が全員サボるなんて思ってなかった。

 みんなそんなに叶えたい願いでもあるのか。


「サボってないわよ。授業は式神が代わりに受けてるもの」


「僕も僕そっくりに作ったアンドロイドが代わりに行ってます」


 レイラとタッツンがそれぞれ呪符とリモコンを見せながら堂々言い放つ。

 どうやらみんな何かしらの手段を使い普段通りの生活をしながらやっているらしい。


「私は魔法少女だし? 魔法で分身作ればいいかなって」


「その手があったか! オレも真似しよ」


 小春からアイデアを得たマサが魔法少女に変身し、キラキラもわわーんと自分の分身を作り出す。

 おい、なんで本物よりイケメンなんだよ。


「そっちは頼んだぜ!」


「ウガ……。オデ、ガンバル」


 と、顔は本物よりイケメンだけど知能がだいぶ怪しいマサの分身が獣そのものの動きで駆け出して行く。

 あっちは山しかないんだがホントに大丈夫なのか……?


「まぁいいや。どうなっても自己責任だからな。期末テスト赤点取っても俺知らないぞ」


 一応釘を刺してから俺たちの塔攻略は始まった。



 ★



 大きく開かれた門を潜ると見上げるほど巨大な白猫が座布団の上で丸くなっていた。

 あれ、みんなは? つーかなんで猫?


「ようこそおいでくださいましたにゃ祖神様おやがみさま


「お前が地獄から逃げ出したっていう魔物か。……なんで猫?」


「これは仮初の姿にゃ。祖神様に塔の中を歩かせるのも失礼かと思いましたので直接ここまでご招待した次第ですにゃ」


「それ言うなら家の近所にこんな馬鹿デケェ塔生やす方が失礼なんじゃねーのかよ。おかげでウチの日当たり悪くなったじゃねぇか」


「それは申し訳にゃかったですにゃ」


 でっかい猫がむくりと起き上がり「にゃおーん」と鳴く。

 するとガコンと何かが切り替わったような音がした。


「周辺地域の日当たりに影響が出にゃいようにしたにゃ。ごめんなさいにゃ」


 千里眼の魔法で夜鳥羽市全体を俯瞰して見てみると空高く突き抜けていたはずの塔がすべて地面の下にめり込んでいた。


「対応してくれてありがとな」


「とんでもないですにゃ! 祖神様のお住まいを見下ろすなんて無礼千万もいいとこですにゃ」


 巨大にゃんこがごろごろ喉を鳴らして俺に顔を摺り寄せてくる。

 おーおー可愛い奴め。もふもふもふもふもふもふ……。


「そもそもお前らなんで地獄から出てきたんだ? 何かやりたいことでもあったのか」


「一度地上を見てみたかったのにゃ。けど祖神様のように肉の器を持たない我々がそのまま地上に出たら魂の波動で地上が滅んでしまうにゃ。だから仕方なく塔を立ててここから眺めることにしたのにゃ」


 つまりこの塔そのものがコイツらの身体って訳か。

 

「よかったのか? この塔地面の下に埋めちゃって」


「いいですにゃ。祖神様のご尊顔を拝めただけでも地上に来た甲斐があったというものですにゃ」


 むぅ、そこまで言われたらどうにかしてやりたくなるじゃん。


「我が家の日当たり問題に対応してくれたんだ。地上見物用の身体くらい創ってやるさ」


「にゃんと!?」


「ほーれ、ささやきいのりえいしょうねんじろー☆」


 指先から玉虫色に輝く混沌の種をひねり出し塔の床に『ぽとっ』と一滴垂らす。

 すると床の一部がモゴモゴ蠢き形を変え一匹の白猫になった。

 でっかいにゃんこが「くぁ」と欠伸して丸くなり、入れ替わるように小さな白猫がぱちっと目を開ける。


「おお! 視界が低い! おもしろいにゃ!」


 白猫がにゃんごろりんとご機嫌に転げまわる。

 よーしよしよし可愛い奴め。もふもふもふもふ。


「ちゃんと動かせるみたいだな。戻ろうと思えばいつでもここに戻ってこれるし、出ようと思えばいつでも外に出られるぞ。ただし外では俺の許可が無い限り力は使えないけどな」


「十分すぎますにゃ! ありがとうございますにゃ!」


 嬉しさ余って俺の胸に飛び込んできた白猫を抱きしめ思う存分もふもふしてやると、猫は気持ちよさそうにごろごろと喉を鳴らした。


「くくく、ここがええのんか」


「にゃふん。そこそこ、そこですにゃぁ。いつか他の魔物たちにも会いに行ってやってくださいにゃ。きっとみんな喜びますにゃ」


「おう、近々そうさせてもらうわ」


「ところでご友人方もここにお呼びしたほうがよかったですかにゃ?」


「いや、アイツらには自力で来させる。一番最初にここに辿り着いた奴の願いを叶えてやる約束なんだ」


「それにゃらここで彼らの様子でも眺めにゃがらのんびりされるとよろしいですにゃ」


 白猫が「うにゃん」と鳴くと目の前に複数の画面が「ヴンッ!」現れ、レイラたちの様子がリアルタイムで映し出される。

 俺が退屈で死ぬ前に誰でもいいから早く上がってこーい。すりすりもふもふ。



 ★



 一方そのころ。

 キャットウォークが立体的に交差した複雑怪奇な異界の中を麗羅たちはそれぞれの方法で攻略していた。


 麗羅、涼葉、辰巳の三人は式神や使い魔などを大量に放ち迷宮内をくまなく探索させて正解の道を暴き出す方法で。


 ベルダ、雅也の二人は勘に任せてひたすら突き進み、小春と一二三は探査と転移の魔法を併用して異界の中を縦横無尽に飛び回っていた。


 戦闘狂の老執事だけは攻略ガン無視で魔物狩りを楽しんでいるがそれはさておき。

 現在最もゴールに近い位置にいるのは意外にも雅也とベルダの二人だった。


 黄金の甲殻纏う狒々へ変身した雅也と獣の因子を開放し黒獅子となったベルダが折り重なったキャットウォークの隙間を縫うように上へ上へと飛んでいく。

 塔なのだから上に行けばゴールがあるだろという雑な理論だったが今回だけは正解だった。


 にゃおーんと上方のキャットウォークから跳びかかってきた猫のニンジャをバレルロールで吹き飛ばし更に上へ。


 ここに来るまで何度も猫モンスターたちを蹴散らしたおかげか二人とも霊力が数十倍にまで増えていた。


「に゛ゃ゛ぁ゛ーん゛!」


 と、キャットウォークに化けていた巨大な猫がむくりと起き上がり二人の行く手を阻む。


 妙にダミ声で何故かネズミ柄のパジャマを着ているが誰がなんと言おうと猫である。


「合わせろベルダ!」


「合点承知!」


 黄金の狒々が漆黒の雌獅子を抱きしめ炎を纏いながら高速回転して巨大猫に突っ込んでいく。


「「雷炎爆走破ァァァッ!!!!」」


「ン゛ア゛ア゛────ッ゛! オ゛ネ゛イ゛ザァ゛────ン゛!!!!」


 汚い末期の叫びを上げて爆散する巨大猫。

 二人が爆炎を突き抜けるとその先に怪しげな気配を放つ黒い鳥居が見えた。


「飛び込むぞ!」


 勢いそのまま二人同時に鳥居へ飛び込むと周囲の空間がぐにゃりと歪み、勢いを殺された二人が空中に吐き出され大きな白猫の背中にもふっと受け止められた。


「おー、一時間五〇分四八秒! おめでとう。世界レコードだ」


 勘だけで異界を突破してきた二人を晃弘が拍手で出迎える。


「同着の場合願いを叶えてもらう権利はどうなるんだ?」


「あー、そういやその辺考えてなかったな。まあいいや、二人とも叶えてやるよ。ただし、このにゃんこに勝ってからだけどな」


 晃弘の手の中で撫でられていた白猫が目を閉じ、巨大猫がのっそりと起き上がる。


「手加減無しで頼むぞ」


「承知しましたにゃ!」


 猫が『スッ……』と立ち上がりうんにゃらむにゃうんと唸る。

 すると今まで抑えていた魂魄の波動が轟と吹き荒れ、霊力の繭を突き破り猫がその真の姿をあらわにした。


「ニャハハハ! 手加減はしてやらにゃいから覚悟するにゃ! がおーっ!」


 猫の頭を持つ三面六臂さんめんろっぴの巨大な鎧武者が地獄の炎を身に纏い大きく吼える。


「来いよゆるキャラ! 骨まで食い尽くしてやるぜ!」


「猫風情が獅子に勝てると思うなよ!」


 戦闘態勢を整えた雅也とベルダが霊力を漲らせ吼え返す。


 刹那、巨大な力同士がぶつかり合い爆轟と衝撃波が最奥の間を埋め尽くした!

オ゛ネ゛ィ゛ザァ゛ン゛!!!!(ダミ声)

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