序章3話 『昔話-カイン・ハルベルト-』
3話目です!
前回の話しの続きです
カインとの出会いからですね。
「……」
「ワシの居ない間に……そんなことが。」
「大丈夫か?」
うつ向いて考え込んでしまった
スミスさんに問いかける。
大丈夫、なわけないか……
スミスさんにとっても
生まれ故郷なわけだしな……。
「ああ、大丈夫じゃ……もしワシが引っ越さなかったら、守れてかもしれんのに、と思っての……すまない。」
「大丈夫、もう過ぎた事だ。」
そう、過ぎた事だ……
今更気にしても仕方ない。
もしもスミスさんが居たらなんてそんな事
今更言ってもしょうがないことだ。
……今だに夢にうなされてる奴が
言っても説得力ないか。
「すまんの……ありがとう……。」
「いや、むしろ礼を言うのはこっちだ、ありがとう。」
泣きながら言うスミスさんにそうつげる。
そう、むしろ礼を言うのは俺なんだ
20年も会ってない母や皆ののために
涙を流してくれてるんだから。
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「……して、皆の墓とかは有るのかの?」
しばらくして
落ち着いたスミスさんが切り出した。
「ああ、村からすぐの丘……皆が集まるのによく使ってた丘に建ててある。」
「なるほど、あの場所に……。」
やはりスミスさんも知っていたか
まぁ元は村人なんだし当然か。
そう、墓は皆の好きだったあの場所に立ててある。
夏が来れば花が咲き乱れる……あの丘に。
「近いうちに、墓参りに行っても良いかの?」
「ああ、是非お願いする。」
むしろ、こっちからお願いするとこだった。
母や皆も絶対に喜ぶさ。
「……して、話の続きじゃがその後はどうなったんじゃ?」
「ああ、それなら。」
続きを話そう……
カインが現れた後の話を……。
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「私は、王国騎士団団長 カイン・ハルベルトだ。」
……突然現れた男はそう名乗った。
男は、純白の鎧を身にまとい
金髪の髪をオールバックにしている。
見た目の年齢は約30から35ほどで
背中には、騎士団長の証である
深紅のマントが棚引いている。
そして、腕中には
救出されたアリシアが眠っている。
「大丈夫か?」
「……。」
「怪我しているではないか、どれ……私に見せて見ろ……。」
カインは俺の前で屈んで
傷の状態を確認している……。
「結構裂けてしまっているな……。」
カインは腰に着けたウエストポーチから
消毒液を取り出し俺の治療を始めようとする。
パシッ!
「……。」
俺は……
消毒液を持つカインの手を
手の甲で叩いた。
勢いで消毒液が吹っ飛ぶ。
「騎士が今更何しに来た!!もう皆、死んだんだよ!!」
もう皆死んだんだ……
今更もう遅いんだよ……。
なんで今更になってから来るんだ……
なんでもっと早くきてくれなかった……
そしたら皆は……
母さんはっ……!
「すまない……本当はもう少し早く来れてればよかったんだが……。私も偶然近くを通りかかった身でな……。」
「……。」
「だが、この子はまだ生きている、笛の音が聞こえなかったら気がついてはいなかった……君が助けたんだよ、ほら。」
「アリシア……。」
カインはそう言うと
腕に抱えているアリシアを渡してきた。
重っ……。
はは、呑気に寝息立ててやがる……。
「さぁ、君の治療を開始しよう。」
カインはウエストポーチから
新しい消毒液とガーゼを取り出していた。
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「ところで、騎士がなんの用で、この村に来たんだ?」
俺は傷の治療を受けている途中
なんとなく気になった事を聞いてみた。
この村には特産品も特に無いし
村人も30人程しかいない、小規模な村だ
特に騎士が立ち寄るような場所では無いはず。
「ああ、それは」
俺の問にカインが答え始める。
「この先にある街に少し用事があってな、私は部下達と共に街に向かっている最中だったんだよ。」
この先の街か……
この先の街と言えば確か
セイドルとか言う領主が納める街があったな。
ここから
徒歩で移動して片道6時間
馬車でも約2時間と少しかかる距離。
日用品などの買い物は
定期的に行商人が来るので
それで大丈夫だったし。
それと、隣村にも少しだけだが
日用品などを売っている店はあるので
行商の来ない日はそこで買い物をしていた。
農作物の売却に関しても
行商人が買い取ってくれたり
隣村の店でも、買い取ってくれるので
大きな怪我や病気になったなど
余程の事がなければこの村の人は
その街には行きはしなかった。
何より……
あの街の領主は
この村の人を毛嫌いしている……
街に行けば、白い目で見られたり
陰湿な嫌がらせを受けたりするため
誰も、好きこのんであんな街には行きはしない。
「ほら、ちょうどそこにいる、ボウズ頭の男が私の部下だ。」
カインが指を指す方向では
白い鎧を着たボウズ頭の男が
何やら、紙に書き込んでいた。
外は夕日がさらに傾き
周囲が見えないほどでは無いが
暗くなって来ているため文字を書くには
不便な明るさになっている。
そのため、ボウズ頭の男は
ペンライトを口にくわえ、その光を頼りに
大変書きずらそうしながら紙に文字を書いている。
……周りを見渡せば、他にも。
何人かの騎士達が
村の被害を確認するため、動き回っていた。
「よし、これで大丈夫だ。」
俺の治療を終えて
カインが立ち上がる。
(変な巻き方……。)
俺の顔は、不器用なカインのせいで
包帯が変な巻かれ方で巻かれていた。
頭は怪我してないのになぜか
頭にも包帯が巻かれているし……。
「団長、確認終わりました。」
俺の治療が終わる頃合いで
先程のボウズ頭の騎士が話し掛けてきた。
「ああ、ご苦労オルト。」
「被害状況は、死者31名、生存者2名、村の建物は全壊、家畜も全滅……かなり酷い状況ですね……。」
カインにオルトと呼ばれた男は
村の被害状況を紙にまとめ
カインに報告する。
死者31名……
俺とアリシア以外全員か……。
小さな子どもや
赤ちゃんも居たのに……酷いな……。
「それと、魔者ですが、村を見て回ったところ団長が退治した4体以外にも、10体の魔者を発見しましたが、全て対処いたしました、怪我人は居ません。」
さっきは必死に走り回っていたので
解らなかったがまさかそんなに
大量の魔者が入り込んでいたなんて……
ここら辺は普段は魔者は愚か
危険の生物も居ない
安全な場所なのに……
なぜ突然……。
「わかった……オルト、村の人達はどちらに?」
「はっ!あちらの方、村の中央にまとめて運んであります。」
「そうか、ご苦労。」
騎士達の働きにより
完全に暗くなる前に村の皆は
1ヶ所に集められ、布をかけられて居た……。
「ウッ……ウェェ……。」
俺は、まだどこかで……
信じられないで居たのだろう。
改めて目にする現実を前に
つい……
吐いてしまった……。
「……大丈夫か?」
「……ああ、大丈夫だ……なあ、カイン頼みが有るんだが。」
「ああ、なんだ? 私にできる事なら協力しよう。」
「皆の墓……作るの手伝ってくれないか?」
皆の墓を作ってあげたい……。
皆をこのままにするのは……
かわいそうだ……。
「ああ、勿論だとも!」
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その後俺たちは
明るくなるのを待ち、作業開始した。
朝までに皆に別れを告げ……
明け方には目を覚まし、レシアさんから
離れようとしないアリシアを説得するのに
時間がかかったが。
騎士達とカインの手伝いもあり……
作業は意外と早く終わった。
廃材を使って作られたそれは
とても墓と呼べる代物ではなかったが
現時点でできる精一杯の物だった……。
(今はこれくらいしかできないけど我慢してくれ……。
いつかちゃんとしたの建てるから……)
「……いい場所に建てたな、ここなら村が一望できる。」
「ああ、皆で祭り事とかあるたびに集まってた、思い出の場所だ。」
そう、墓はあの丘に建てた。
皆の思い出の場所……
俺にとっても思い出の、あの丘に……。
「カイン……さっきは悪かった、ありがとう。」
「いや、いいんだ。君たちを助けれて本当によかったよ。」
そう言いながら
アリシアの方を見る俺とカイン。
アリシアは再び泣き崩れ……
疲れて眠ってしまっていた。
アリシア上には
カインのマントがかけられている。
「さて、私はこれから本国に一度、報告のため戻るが……君たちはどうする?当てはあるのか?」
「……いや……。」
俺たちの知り合いはもう居ない……
当てなんてあるわけが無い……。
「そうか……ならば、君たちさえ良ければだが?一緒に来るか?」
「……。」
「もちろん、無理にとは言わないがな。」
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「---とっ、こんなところだな。」
「なるほどのぉ、してそれからはどうしたんじゃ?」
「それから俺たちは、カインの家に世話になってな。15になった俺は騎士団に見習いで入ったんだ、そして3年経って15になったアリシアも騎士団に入ってきたんだ。」
「そうじゃったのか……。お主も大変だったのぉ。」
「ああ、まさかアリシアまで入って来るなんて思わなかったは、「大きくなったらケーキ屋になる!」とか言ってた奴がだぜ?」
「ホッホッホ、人生なんてそんなもんじゃて。」
人生なんてそんなもんか……
いや、ケーキ屋と騎士じゃ全く違うがな
笑えるよ、ほんと。
「して……お主は何故血まみれで倒れてたんじゃ……?」
「それは……。」
……
言って良いのだろうか……
あの子の事……。
いや、スミスさんが
信用出来ないって訳ではないんだが。
「すまんの……言いづらい事なら無理せんくてもよいよ。」
俺に向けて、スミスさんが謝る。
いや、謝るのは俺なんだが。
「ごめん、スミスさん……。」
「いいんじゃ、いいんじゃ。」
いつかちゃんと話すよ……
でも、今は……。
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「てな訳なんだが。な?笑えるだろ?」
「ホッホッホ、それは面白いのぉ。」
俺は、スミスさんが運んできた
食事を食べ終えた後、世間話に花を咲かせていた。
「っと、もうこんな時間じゃな。体に触るからもう寝なさい。」
スミスさんは食べ終わった
食器を片付けようと椅子から立ち上がる。
言われて時計を見てみれば
確かに時間は夜の20時を回っていた。
たしか今日は14時に起きたから……
6時間も話して居たのか。
結構話したな。
「ああ、わかった。しかし……全く起きないな。」
「そうじゃの、流石に心配じゃな。」
隣で寝ているあの子は、まだ眠っている。
てっきり飯の匂いにつられて
起きると思ったんだがな……。
「まぁ、明日には起きるじゃろうて。ではゆっくり休むんじゃぞ。」
「ああ、おやすみ、スミスさん。」
俺は布団に入り、そっと目を閉じる。
部屋には時計の音が静かに木霊する……。
お読み頂いた方、大変ありがとうございますm(__)m
投稿してから毎日30~60人位の方にアクセスいただいています。
大変感謝です!!
感謝仕切れませんねホント・・・。
そこで、物は相談なのですが・・・
ほんの少しでも面白いと思って頂けたらで良いので。
改善点などご意見を聞きたいですので
ここはこうした方が良いなどありましたら。
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と思いますです。
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