プロローグ
炎を手から放ちテロリストを焼き尽くす。
だが、それでテロリスト達は倒れない。
脚力を強化する能力で一足飛びをして、瞬時にテロリスト達の前まで距離を詰める。
テロリストの持つ短銃など、彼の能力の前には何の意味もなさない。反応すらできないテロリストの顔面に鉄拳を撃ちこんだ。
テロリスト達は短銃の銃口を自分に向ける。それよりも早く回し蹴りを放った。
回し蹴りは突風を生み出し、テロリスト達を壁にまで飛ばす。
テロリストたちはそれで降参したのか、そこで戦いは終わった。
勇士はヘルメットを外した。
勇士は自分のゲームの成績を見て溜息を吐く。
「俺にもこんな能力があればなぁ」
今、勇士がしていたのは、ヴァーチャルリアルゲームだ。ゲームの中に実際に入ってプレイをできるというもの。最近になって発売されたのだが、今の時代こんなものがなければ超能力の体験すらできない人間の方が少数派だ。
今は超能力を持つ人間が人口の九割を占めている。
小学生の頃にみんな習う事だ。ある時突然地球の磁気が狂い、人工衛星や通信に障害が起きて世界的な大損失が起きたことがあった。世界的に経済的な損失はあったものの、すぐにそれらは改善されて、いまでは携帯電話もGPSもの問題なく使えるようようになっている。
そして、その事件は大きな副産物も作った。
世界中の人間に超能力が発現をしたのだった。
ある者は透視や千里眼の力に目覚め、ある者は霊能力に目覚め、テレパシー、サイコキネシス、テレポート。
創作物の世界でしかありえなかった数々の超能力に、ほとんどの人間が目覚めたのだった。
その超能力を悪用する人間も現れた。超能力を正義のために使う人間も現れた。
悪用する人間はアメリカンコミックの悪役から名前をとられ『ヴィラン』と呼ばれる。正義のために使う人間は『ヒーロー』だ。
今や数々のヒーロが現れ、世界中で悪事を働く『ヴィラン』達を成敗する事で『ヒーロー』達が人気取りをしあって激戦をしているほどである。
勇士はその中で能力に目覚めなかった人間の一人。ヒーローに憧れ、それでもなれなかったよくある少年のうちの一人である。