肆…夏期長期休業其ノ肆
前回の少し後の物語です。よろしくお願いします。
眩しい、電気がついている。たまらず目を開らいた。また、目の前に火憐の顔があった。『また』というのは、春の或日(といっても五月の最初位なのだが)に『悪霊』と戦った時にも同じ様な事があったからだ。その時は、俗に言う膝枕状態にあった。勿論、今回も同じだ。僕は、絶対に本物のいつも愛用しているダニが付きにくい枕を使ってなた筈なのだが…いつ、どうやって、今、この状況に持っていったのか不思議に思う…。だがしかし、前述の様に冷静に考え事をしたのは、次の行動や会話の後なのだが…因みにこの時間は今日か明日か分からなかった、しかし夕焼けは無かったので夜だと思われる……。
「あっ。起きた。どう?体調は?しんどい?それとも、辛い?」
目の前にいる女…田仲火憐が僕の顔の上で話しかけてきた。さっきも大体同じ様な事を語ったように僕はこの時、冷静に判断ができなくなっていた。『殺される!』と、思ったのかもしれない…本能が…。すぐさまそこから飛び退き(玄関と反対、部屋の奥の方に)身構える。その後退路が無いことに気付くが…。物を造る体力だって十分に無いのに刀…炎龍刀を造る。無論息切れする。
「酷いな…暁人君は、せっかく膝枕をしてあげたのに…。私とわかると直ぐに逃げようとする。街とかで偶然出会っても私を避けるように行動する…。何で?」
「アタリマエダロ。ボクハキミニコロサレソウニナッタンダ。キョウフヲオボエナクテドウスルンダ?マタコロシニキテイナイカホントウニコワカッタンダゾ…。」
「あははははは。」
「もう貴方を殺さないわよ。だって目標は達成したんですもの。」
「は?」
「『あの人』は、貴方を殺せと、私に命令して私もそれに従った。貴方が死んだら…病院で死亡確認されたら…私も死のうと思って実行した…。しかし、貴方は死ななかった。多分『あの人』は、貴方が死なないと察してしたのでしょうね。貴方が物を造れない程度に体力を吸い取るようなナイフを私に託してくれたのよ。だから貴方はもう、物が思った様に造れない。死んだも当然なのよ…。」
「は?じゃあ、何で俺を殺そうとしたんだ?何か理由があったんだろ?」
と、火憐に問う。勿論警戒は解かずに。炎龍刀を構えて。
「『悪魔』って知ってる?」
いきなり悪魔と言われても…
[悪魔]………①仏道を妨げる悪心の総称。魔羅。②悪および不義の擬人的表現。キリスト教のサタン。③残酷・非道な人のたとえ。
と、広辞苑に載っている。まず、仏教かキリスト教とかをはっきりさせたい。
「その『悪魔』とは何処の宗教の、『悪魔』なんだい?」
「どういう事?」
「前に広辞苑でたまたま『悪魔』を調べたら…
[悪魔]………①仏道を妨げる悪心の総称。魔羅。②悪および不義の擬人的表現。キリスト教のサタン。③残酷・非道な人のたとえ。
って載っていたから…」
「貴方の記憶力どうなっているの?何で日本語の記憶だけ良いの?」
「ごめん今、軽くディスられた感じがしたのだけど…」
「うん、だってディスったんだもん」
え〜マシでか。自覚ありか…自覚無しよりはマシか…
「暁人君。私が言っている『悪魔』とは、多分、キリスト教系の悪魔っぽい。」
「キリスト教系?」
「だって仏教の悪魔とは多分…全然違うもの。」
よく考える。そして思い付く。物語の『悪魔』を…よくある物語を。
「もしかして…三つ願い事を叶えてくれる代わりに魂とかと交換する系の『悪魔』?」
そもそもこんなこと他人に言っていいのか?
「正解!あー大丈夫大丈夫。この事について話して良いって『あの人』に言われているから。因みに私の代償は、『あの人』の言うことを素直に聴く事。もし守られなければそこまでの命…。後、もう遅くなってしまって申し訳ないのだけれど…同じ事は何回も語らなくて良いんだよ?読者の皆様だって、同じ文は読みたく無いと、思うでしょう?」
またコイツは変な事を言ってやがる。一体どうしたのだろう?同じ事って何だ?最後の発言だけに最初は反応してしまったが…コイツ今、とんでもない情報を言わなかったか?何か…もうそれまでの命…とか。と言うか…『あの人』って『奴』の事だよな…て言うことは、僕の推理(笑)は外れたと言うことか、皆にどうやって説明しよう…。
「そろそろその刀、下ろしてくれない?近寄り難いのだけれど。」
「怖くてできるわけないだろ。」
「だから言ったでしょう!私はもう貴方を殺さなくて良くなったと。」
「いや言ってないよ!」
「同意の発言だったじゃない!」
「ッウ」
ここで回答が詰まる。確かに言っていた。同意の言葉を…。淡々と。余りにも淡々としていたので気付かなかった。Howeverやはり、僕の命を取ろうとした人と一緒にいるというのは精神的に何かくるものがある。あえて一言で表すのであるのなら『キツイ』それだけだ。それ以上でも以下でも何事でもない。但しそれ以上を越えることもあるのかもしれない。
「で、どうなんですか?」
凄い圧力を感じる。火憐が発した言葉に圧力がある。潰される。これを言霊とでも言うのだろうか。言葉には魂がある。
「全く持ってその通りです。言葉は、違ったけれど…同じ意味の発言はしていました。」
「よろしい!」
満足したらしい。しょうがないので警戒の構えを解き床・畳に座る。火憐も座った。恐怖以外の何者でも無い。僕はどうしたら良いんだよ!このまま此処にいろって言うことか?冗談じゃないよ!しかし今まで火憐は物凄い演技を行ってきた事になる。『奴』と契約を切ったように見せてまだ契約は生きているし、僕を殺すために様々な、方法で僕に近づいてきた。その中でも、本音と、嘘とが絡まり混じりよくわからなくなってはいたが、自分の目標だけは決して変えようとはしなかったはずだ…。
そんな事を思っていたら、火憐から話題を振ってきた。
「言いにくい事なのだけれど、まだ、陸や海への差別は消えていないわ。うちのクラスだけが殆ど無くなった感じで、他のクラスから敵対行動を起こされる事だってあったそうよ。多分…佑と、日差が外部に情報を流したと思うけど。仮にそうしなくても。皆と仲良くやってもこうなるのかな?」
今までの事とは全く関係のない。全く違った内容の話題だった。
差別は絶対に無くならない…。というのは百も承知だし、無くなった瞬間それは人では無くなる。人・動物とは、常に他の仲間より上へ上へと行きたがる。そういう本能だ。だから人を差別し、自分が上になって優越感に浸ろうとする。だから表面上では差別を無くしても(見えなくしても)内面上は変わらない。例外は少なくともいることにはいるが…。実質このクラスだって表面上では差別をしてなくたって裏や、心の奥底で差別をしていることだってあると思う。なので僕は差別が無くなることに期待は、していなかった。しかし、希望(笑)は、持っている。
今まで陸の奴らは、僕に・山(奥)の人間に差別そのものを行ってきた。いくら僕達の方が強いとはいえ、人を殺したり暴力を振ることは、犯罪だ。だから 、数が多い陸がいつも優位に立っていた。しかし、その優位を捨て、僕達と仲間、友達になろうとしてくれたのはとても嬉しかった。これだけは絶対に…。
だからこう返す。
「大丈夫だよ。火憐。僕達は君達、クラスの、友達になってくれた皆に感謝している。表面上では差別が無くなっても、完全に消し去ることはできない。人はそういう生き物だから。しかし、一緒に話したり、協力できる様になって嬉しかった。」
「なにまとめみたいのに入ってるの?でもそう思っている事は始めて知ったわ。でも私は、それでも諦めないわ。絶対にこの差別を無くしてやるわ!」
そう、之が彼女の目標。多分『奴』に、山の人間を殺せと、命令があったと思うのだが…それでも心はその事をずっと考えていたに違いない。
「分かった。期待するよ。そして協力する。」
火憐は、例外の中の一人なのだ。
「ありがと。」
それにしても、彼女、田仲火憐は、過去に何かがあって陸以外の地域が好きでは無い…。と、噂で聞いたことがあるのだが…。
「質問なら言ってくれない?気になるじゃない。」
「気分を悪くするかもしれないよ?」
「いいよ。話してみて。」
「分かった。噂で聞いたのだけれど、火憐。君って…陸以外の地域が好きでは無いって本当の事なの?」
「あーその事ね…。ええ。好きでわ無かったわ。前までは。でも貴方達と知り合い、海の皆とも知り合い。悪い人達ではなく、楽しい人達なんだと感じたわ。」
なるほど。その噂は、前までの火憐の噂だったという訳か。ホッとした。でも、嫌いになった理由もあると思うが今日は、聞くのをやめておこう。
「やっぱり、お互い理解し合う事は大事なんだね…」
自分に言い聞かせるように言う。火憐も頷くだけ。
理解し合う事だって理想論だ。固定概念を無くさなければ理解する事だって難しい。だから宗教戦争や、テロが起こるのだ。しかし、それでも例外は、あるので諦める理由にはならないが…時間がこのまま 経てば、といっても途方もない時間だが…理解し合えると思う。
また眠くなってきた。結構頑張って話したからな。しょうがない。後、ずっと見られてた様な気がする。陰人かな?まぁ良いや。
「おやすみ。火憐、僕、もう限界だわ。」
「おやすみ。暁人君。ごめんね。」
そう言って電気を消して寝た。何故か安心できた。
夏休み九日〜十日経過…
人は色々な情報を得るために他の動物よりも視力に頼っているそうです。なので夜など暗闇では余り物が見えなくなるので恐怖を感じるらしいです。本当かどうかはわかりませんが…でも、夜は怖いですよね?私は、怖いと感じます。特に月が出ていない夜は。あっても怖いですが…
読んでくださいました皆様に感謝しつつ今回はこれで終わりたいと思います。これからもよろしくお願いします!
参考文献 広辞苑 岩倉書店




