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こたつの上の異世界

作者: 杯符折る銃

「魔王、今お前を倒す!」

「勇者よ、此処が貴様の墓場だ!」


平原の真ん中で両者が切りつけ合う。

勇者の背後には魔王軍を打倒して大陸を取り戻そうとする人間の連合軍が控えている。

魔王の後ろにも人間たちを殲滅せんとする魔王軍が控えている。

人間たちは勇者の勝利を神に祈り、魔族たちは魔王の勝利を信じて疑わない。

俺も固唾を飲んで戦いの行く末を見守っている。


「行くぞ!」

「ぬうう!」


魔王の魔法と勇者の斬撃がぶつかり、衝撃波を生む。

勇者と魔王は吹き飛ぶが大してダメージはない。


「「「うわあああああっ!」」」


連合軍が余波で一部が吹き飛ぶ。


「「「ぐああああああっ!」」」


魔王軍もまた吹き飛ぶ。


勇者と魔王は再び剣を交える。

力は拮抗してどちらも引こうとしない。


「おおおお!!」

「ぐぅ…」


魔王が押され始める。


「止めだ!」

「お、おのれ…」


勇者が聖剣を魔王の胸元目掛け突き刺す!


「勇者様が魔王を倒したぞ!」

「勇者様バンザイ!」


連合軍から歓喜の声が上がる。

勇者が歓声に応えようとしたとき、魔王がうめき出した。


「おのれ…おのれおのれおのれ!脆弱な人間ども!」


魔王は刺さったままの聖剣を体内に取り込み、巨大化した。

第二形態だ。


「そ、そんな…」

「もうおしまいだ…」


人間たちが怖じけつく。連合軍は今いまにも逃げてしまいそうだ。魔王軍はその姿を見て嘲笑っている。


「諦めるな!希望がある限り、僕たち人間はけして負けることはない!!」


勇者が叫ぶ。その声で連合軍は正気を取り戻す。


「行くぞ魔王!」

「グオオオオオオ!!」


勇者が身一つで強大な魔王に向かっていく。


「いやーすごいな。あ、コーラ取ってー」

「はーい」


俺はその戦いを尻目に相棒に飲み物を取って来てもらう。


「お待たせーえっ!」

「あ」


なんと相棒は転んでしまった。コーラの500ミリリットルのペットボトルが勇者と魔王のいる戦場へ飛んでいき――


勇者に魔王、連合軍や魔王軍を押し潰した。

それどころか魔王領へと転がって行き、全てを無に帰した。


「あらー」

「あ…ああ…」


戦場には大きなクレーターができ、生命の息吹が一切感じられない。


「ご。ごめんなさい」

「いいよーまた作ればいいし」


相棒は長い黒髪を垂らし、謝罪を述べ落ち込んでいる。

俺は頭を撫でて許す。


こたつの上には魔王が滅び、平和になったと思われる世界が広がっている――――

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― 新着の感想 ―
[良い点] パノラマが生きてるようなワクワク感と、死力を尽くしても彼らより強大な者のミスで壊滅状態になる儚さ、虚無感のコントラストが素晴らしいです。
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