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後編その二

これで終われなかった件(白目

もう少しだけお付き合いください





 信長討死の報が尾張中に知れ渡り、三好軍に抵抗していた織田軍は次々と降伏していった。那古野城に入城していた長慶は尾張が降伏した事に満足げに頷いた。


「宜しい、ならば清洲城へ移動する。那古野城だと少々狭い」


 そして清洲城へ入城した長慶が本丸に入ると控えていた鳥養、今村等の諸将が長慶に頭を下げる。


「長房、降伏した織田の諸将は?」

「此方にでござる」

「丹羽長秀でございます」


 同じく控えていた丹羽長秀以下の諸将が頭を下げる。


「降伏した諸将は基本、三好家に取り入れるが最終的には本人の判断とする」

「……先程まで我等は戦っていたのでございますが?」


 長慶の言葉に長秀は恐る恐るそう言う。


「無闇に首をはねてはその家は直ぐに滅びる。優秀な奴は取り入れる。それだけだ」


 長秀の返答に長慶はそう答えた。


「信長とは気が合いそうだったがなぁ……それで信長の首は?」

「此処に」


 信長の首が長慶の前に出る。それを見た長秀達織田の家臣達は涙を流すが長慶は御猪口に酒を注いで信長の前に置く。


「………」


 長慶は何も言わずに自身が注いだ酒を飲み干す。


「丁重に葬ってやれ」

「はは」


 数日後、三好家は織田の旧家臣達を吸収して勢力は大きく増える。家臣には丹羽長秀、柴田勝家、滝川一益、佐久間信盛、河尻秀隆等である。この時に長慶は木下藤吉郎がいない事に不審に思うが調べると藤吉郎は那古野城の戦いにおいて討死していたのであった。妻ねねは藤吉郎を弔うために尼となっていた。


「うーん……加藤清正と福島正則のフラグが消えたような気がする……」


 そう呟く長慶だった。一方、美濃方面では竹中半兵衛の調略は失敗して西美濃三人衆も調略は失敗した。


「申し訳ありません」

「いや、構わん。竹中半兵衛は中々に強情なところもあるからな。俺が一筆書いて所領安堵とするから手出しはするなとするか。勿論西美濃三人にもな」

「乗ってくるでしょうか?」

「乗ってこないなら潰せばいい」

「は、それで問題は……」

「……市姫と犬姫だな」


 久秀の言葉に長慶は溜め息を吐いた。


「長義様はまだ正室を迎えておりません。二人のどちらかを正室に迎えては如何でございますか?」

「……二人とも室にしよう」

「は……?」

「正室は市姫、側室は犬姫とする」

「ぎょ、御意」


 長慶は面倒だったので二人を次男長義の正室と側室にさせた。


(お市だと三姉妹は確定ぽいし、お犬だと三人ほど男児を産んでるからな。まぁ大丈夫だろう)


 長慶の思案はさておき、いきなり二人を正室と側室にされた次男長義は少々困惑していたのであった。


「……父上……」


 長義の前には市姫と犬姫がいる。


「……まぁいいか」


 流れに身を任せる事にした長義だった。そして美濃はというと……。


「殿、稲葉と氏家が降伏しました」

「うむ」


 西美濃三人衆に所領安堵の臣従書状を三度も出していた長慶だが三人衆は臣従に応じなかったので尾張と伊勢から兵力を出して西美濃を攻略した。安藤守就は討死する結果となるが残りの稲葉良通と氏家直元は降伏して臣従する事になる。


「しかし所領安堵で宜しいので?」

「なに、その分こき使うから問題はない」


 後に二人は散々とこき使われるが大名となるがまだ先の話である。ちなみに竹中半兵衛はそのままとなり隠匿してその生涯を終えるのであった。

 順調に進んでいた三好家の拡大だが永禄六年、長慶の嫡男である三好慶興がこの世を去ってしまったのだ。死因は黄疸である。


「愛宕……」

「大丈夫です殿。今は戦国の世ですのでいつか死ぬ事は覚悟しておりました。ですが……」

「……今日は俺と共にいようか」

「……はい」


 その日、青葉や虎は二人の邪魔をせずに二人きりで過ごすのであった。それから数日後、喪に服していた長慶は実休らの前に出る。


「兄上……」

「大丈夫だ実休。心配をかけた」

「いえ……」

「さて、慶興が死んだのは辛い。しかしだ、死んだ者は帰ってこない。慶興の分まで我等は力を尽くそう」

『御意!!』


 長慶の言葉に皆は頭を下げる。


「それでだ、家督をどうするかだが……」

「義資様ではないので?」

「確かに慶興の嫡男だ。まだ幼いから元服して二十ぐらいに家督を思う……が」

「何かあるので?」

「……九条家がな」

「成る程」


 長慶の言葉に久秀は納得したように頷いた。


「九条家は養女を一存殿に嫁がせておりました。その子である十河重存殿に白羽の矢が立ちまする」

「そうなると重存を養子にですか? しかしそうなると十河家が……」

「存之は庶子で家督は継げん。となると……実休」

「……存保を……ですか?」

「……済まない」

「いえ……存保を十河家の養子に出しましょう」


 史実通りに存保は十河存保となり家老には庶子の十河存之となる……はずだった。しかしある意味好機とも言える横槍を入れたのは久秀だった。


「あいや暫く」

「どうした久秀?」

「十河家は重存様が継げば問題は無いであろうと某は思いまする」

「ふむ、だが三好家の家督はどうする?」

「無論、慶興様の嫡男義資様でしょう」

「だが九条家が五月蝿くなるではないか?」

「ならば義資様の正室を九条家から迎えれば宜しいのです」

「……そうか」


 長慶は思わず手を打って納得した。実休らも妙案だと頷いている。


「別に今、九条家から正室を迎えなくても後々義資様が元服してから迎えれば宜しいかと」

「分かった久秀、その方向でいこう。義資の補佐に友通と久秀が付け」

「「御意」」


 こうして三好家の家督継ぎは何とか収まったのである。それからの三好家の統一への道のりは順調だった。


「河野通宣、大儀だった」

「はは」


 永禄八年、飯盛山城で長慶は伊予の河野通宣と対面していた。


「約束通り伊予はそなたに任せる」

「はは、有り難き幸せ」


 河野は土佐攻略に参戦していたのでその見返りである。なお、土佐は伊予と阿波の二方向から攻められ抗戦した長宗我部氏等は滅び、土佐には備えとして佐久間信盛が宛がわれた。


「織田家の将をいきなり取り入れるのは些か早すぎませぬか?」

「人材は織田の方が多い、仕方あるまい」

「返す言葉も有りませぬ」

「なに、今は三好家の将だ」


 元織田家の将との交流はしておりそれなりの仲となっている。ちなみに永禄八年は永禄の変と三好三人衆と松永久秀らが共謀しての足利義輝を殺害するが、既に義輝は故人なのでそのような事は起きなかった。また、明智光秀が任官を求めて長慶の元に来ており今のところは朝廷との連絡係として動いている。


「それに松平もバラバラ……か」


 清洲同盟をしていた松平家康は打つ手無しと見るや三好に臣従を打診していた。だが長慶はその情報を今川氏真に流した。情報に激怒した氏真は朝比奈泰朝を大将に八千が三河になだれ込み、家康は討死して家臣の多くも討死したのである。逃れたのは本多正信や渡辺守綱くらいなもので逃れた後は久秀と長慶の家臣となっている。ちなみに井伊直親は史実通りに謀殺され井伊家は長慶を頼りに畿内に来て虎松は長慶の養子としている。(それでも井伊家の後継ぎ)


「東は氏真が押さえると思うが……五年くらいだな」

「そうですな」


 長慶は久秀らを加えて茶会をしていた。なお、久秀は平蜘蛛を出している。


「ですが兄上、問題は六角と浅井かと」


 実休はそう言う。二家は攻め込む理由が無いのでこれまでは兵力を差し向けてはいなかった。


「六角は大軍を持って攻めれば問題はあるまい。だが浅井賢政は厄介だ。野良田の戦いの例もある」

「なれば……?」

「……浅井に嫁をやる」

「夕姫をですか?」


 側室青葉姫の長女である夕姫は現時点では十七歳だった。


「臣従しますか?」

「しなければ両方とも滅ぼす」


 そう言う長慶だった。ちなみに浅井賢政はお家存続のために臣従を決意、これにより夕姫との婚姻が決まった。


「済まないな夕」

「大丈夫ですわ父上。近江ですから近いです、それに賢政と仲良くします」

「……ありがとう夕」


 長慶は最後に夕姫を抱き締めて夕姫は賢政に嫁入りするのであった。なお、夫婦仲は非常に円満であり後に三男二女を産み長政(改名)を後ろから支えるのである。そして六角も臣従を決意して飯盛山城で長慶に頭を下げるのであった。






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― 新着の感想 ―
[一言] ここで徳川の系譜は無くなったわけですな
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