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戦空の翼  作者: 芝生侍
第一章 時代の背景
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初出陣

長門編

 出撃命令とは突然である。

私は丁度トイレにいる時だった。

手を洗っていると、基地内のスピーカーからうるさいほどのサイレンと、出撃準備をせよという命令が流れた。

私は手を拭きつつ廊下に出た。

数人の兵士が前を通り過ぎていった。

兵士の慌てる姿から察するに、それなりの一大事のようだ。

私も急いで空中戦艦が停泊しているドッグに向かう。

途中すれ違う兵士の話を方耳で聞いた。

その話によると世界でも有数の巨大テロ組織が動き出したらしい。

なるほどそういうことか。


 新国際連合軍の一番重要な仕事は、世界の秩序を守ることである。

そのための活動として各国の紛争の仲介に入ったり、核兵器などを取り締まったりする。

他にも各国の不利益に繋がるテロ組織への攻撃も行う。

更には本部が判断を下すことで、敵からの攻撃を受ける前に制裁を加えることもある。

秩序を守るためなら敵組織を壊滅まで追い込むこともあるのだ。

つまり新国際連合軍はその圧倒的な武力を使って、大きな戦争に繋がる火種を揉み消す組織なのだ。

これまでの出撃で何度も第四次世界大戦になるのを防いでいる。

しかし、この組織はどの国にも属さない独立したものである。

よって日本人である私も欧州の兵士も戸籍が新国際連合軍になっている。

入隊する段階で戸籍が、全て生まれ育った国から抹消されるのだ。

この制度に不満を持っている人は数多くいる。

愛国心が強い人はかなり反発している。

だがこの制度により、どんな大国に対しても国の私情を挟まずに攻撃ができるのだ。

これは大国が誤った道に進んだ場合に制裁を加え易くした為だと言える。

簡単に言うと世界の正義であり、法律であり、秩序そのものである。新国際連合軍に逆らう者は同時に世界に逆らっていることになる。

正直なところかなり曲がっているような話だが、こうでもしなければ人は争いを止めることはないだろう。


 私がドッグに着く頃には、大勢の作業員が空中戦艦の点検を行っていた。

私は真っ直ぐ戦艦の入り口に向かう。

入り口にはエレベーターが付いており、数十秒で艦橋まで私を運んでくれる。

艦橋に着くと霧島三佐が部下に指示を出しているところだった。


「無線確認して!!」

「装備と弾薬の搬入はどうなってるの?」

「航空部隊は到着したの?」


 そこにはおっとりとした霧島三佐はいなかった。

指示がどれも的確で部下が必死に付いて行こうとしている。

私と同期の青葉二尉が、戦艦の操作モニターと格闘している。

戦艦の火器系統を操作しているようだ。

この戦艦の火器は、艦橋からの指示と各部署の指示の両方で操作できるようになっている。

しかし艦橋と各部署が同時に異なった指示を出すと、ASOシステムが瞬時に状況を分析して、より良い結果を出す仕組みになっている。


 ASOシステムとは「Automatic ship operation system」のことで日本名で「自動船体操作システム」と言う。

このシステムは新国際連合軍の空中戦艦全てに搭載されていおり、巨大な戦艦を操作する上での微調整を行っている。

主には人間の操作の補助の役割を果たしているが、フル稼働させると戦艦の全てを自動で動かしてくれるほど優秀である。

まさに空中戦艦の脳とも言えるだろう。

だがシステムはフル稼働させると電力が30分しか持たない。

このシステムはその微調整の的確さや状況を瞬時に分析することに全力を注いでいる。

よって電力を大量に消費するのだ。

電力を使って飛行を可能にしている空中戦艦にとっては、自分の稼動電力をシステムに回さなければならない為、30分稼動で飛行能力が低下し始める。

計算によると38分間フル稼働を続けると飛行能力が完全に失われるらしい。


「おい!!長門!!さっさと持ち場に着け。こっちは忙しいんだ!!」


 霧島三佐の言葉で私の身体は考える前に動き出した。

航空科である私の仕事は操舵である。

私は小走りで、艦橋の真ん中にある操作盤に向かう。

訓練は手を抜かずにやっているはずだが、手が思うように動かない。

本番の緊張というものは、訓練ではなかなか習得できないということがよく分かった。

人は教訓に学ぶ生物である。

怒鳴り声のような霧島三佐の指示を背中に受けながら、私は戦艦の舵を握った。

訓練を思い出せ。

私の頭もどうやら電力が足りないらしい。

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