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戦空の翼  作者: 芝生侍
第二章 偶然の交錯
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空中戦

村雨編

「畜生!!どうなってんだ?」


 ラブーン准尉が怒っている。


「レーダーの反応が鈍い。妨害電波か何かか?」

「その様ですね。私の機体のレーダーも同じ状況なので、故障ではないと言えます。」


 ベルナップ二尉が答えた。


「落ち着け、お前ら。こっちもUAV飛ばしてんだから状況は同じだ。」


 隊長は流石だ。

この状況でも落ち着いてる。

経験の多さが違う。


「このままでは先制攻撃が出来ませんよ?」


 私は聞いた。


「仕方が無い。夜真瀬やませも迎撃任務中だから細かい事は出来ん。」

「そうですよね。最悪ドッグファイトという可能性もありますね。」

「そうだ。総員目を皿にして敵を探せ。」

「了解。」


 情報が勝敗を担う現在に措いて、敵見方の位置はとても重要である。

特に空中戦となれば、情報がそのまま命に係わる。

レーダーで敵を捕らえ、戦わずして勝つというのが一番望ましい。

逆に、戦闘機同士でのドッグファイトは最悪の事態である。

下手にドッグファイトに持ち込まれると撃墜される可能性がある。

いくら軍内最強のパイロットと言えども、不死身ではない。


「レーダーに反応!!」


 私の脳はベルナップ二尉の声で、臨戦態勢に入った。


「何?どこだ?」

「一瞬でしたが、確かに捉えました。11時の方向こちらに向かって来ます。」

「距離は?」


 ベルナップ二尉が一瞬固まるのが、無線から伝わって来た。

誰もが本能的に、やばいと感じたのだろう。


「目の前です!!」


 その直後に私の目にも、灰色の飛行物体が映った。

私も叫んだ。


「隊長!!未確認機を肉眼で捉えました!!」

「何だと?」

「前方!!灰色の機体が複数!!」


 しかし、私達は敵を捕らえるのが遅過ぎた。

既に空中戦は始まっていたのだ。


「おい!!対空ミサイルだ!!避けねぇとあの世逝きだぞ!!」

「ブレイク!!ブレイク!!」


 私は反射的に操縦桿を右に倒した。


「こちら第三航空隊!!未確認機を捉えた。攻撃を受けている。敵機と見なし、攻撃を開始する!!」


 対空ミサイルは、私の機体の左上を通過した。

あと一瞬遅ければどうなっていた事か、想像したくはない。

敵機が編隊を崩したのを横目で確認する。

最悪の事態に突入した。

鯱のショータイムである。


 私を追って来たのは2機だ。

見た事の無い機体である。


「ちっ!!」


 機体を左へ急旋回ブレイクさせる。

2機を同時に撃墜するのは不可能だ。

とにかく、今は逃げてチャンスを待つ。

再び急旋回ブレイクを行う。

今度は右だ。

これで少しは引き離したか?

しかし2機は見事に期待を裏切り、ピッタリと後ろを付けて来る。


「やべぇ!!こいつら付いてくる!!」


 今回はラブーン准尉に賛同だ。


「何なのこいつら?」

「このままでは長期戦は不利です!!」

「短期決戦かよ?」 

「落ち着け!!今は逃げるのが優先だ。数も状況も劣勢だ。」


 隊長が叫ぶ。


「総員アフターバーナーを点火しろ!!敵の射程圏外まで何とか踏ん張れ!!」

「了解!!」


 私はアフターバーナーのスイッチを入れた。

機体が加速する。

機首を下へ向けて位置エネルギーを使い、更に加速を掛ける。

Gが身体を襲う。

ロックを外す為、何度か急旋回ブレイクを織り交ぜる。

少しずつ敵が遠くなる。

流石最新の戦闘機だ。

運動性能は劣らない。

どうやら敵から離れる事が出来たらしい。


「全員生きてるか?」

「こちら村雨、無事です。」

「何とか生きてるよ。」

「こちらベルナップ、生存。」

「よし。ベルナップ、敵は?」

「6時の方向。深追いはして来ません。」

「何とか逃げ切った様だな。」

「助かったぜぇぇぇぇ。」

「ですね。」


 手には汗が滲んでいた。

私はそれをズボンで拭き取る。


「こちら第三航空隊。一時帰還する。」


 今回の敵は只者ではない。

この第三航空隊の誰もが感じているだろう。

私もその一人だった。

この重い雰囲気を破ったのは、やはりラブーン准尉だった。


「焼魚に成らずに済んだな。」


 緊張が解けて、思わず笑ってしまった。


「さっきから気になってるけど、鯱は哺乳類よ。」

「そうだっけ?」


 鯱4機は雲の海を泳ぐ様に飛んだ。

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