序章3
男はまず友人の新の遺体の前に立つ。
小舟に横たわり切り開かれた身体を再度見ていく。
「すいまない新…お前の身体を調べさせてもらう」
亡き友人の遺体に手を合わせ身体を隅々まで調べていく。
だがいくら観察しても見えている範囲にはカギは見当たらず、残りは身体の中しか残されていない。
「…クソッ」
男はゆっくりと友人の胸部へと手を伸ばしていく。
グチュグチュという音が鳴る度に、男の顔は友人に対する申し訳なさと内臓をかき回すという不快感で歪むが、手を休める事はせず胸部から腹部、その下へと移動していく。
そして股間のあたりでコツッと当たる物があった。
周囲の肉や内臓を避けてみるとそこにはゾウさんの絵がモチーフにされたカギがあった。
「クソッ、悪趣味にもほどがある… 頭のイカれた最低のクソ野郎かよ…」
一つ目のカギを回収すると再度遺体に手を合わせ次の遺体へと進む。
「次は委員長か」
男が次に向かったのは本田義子の遺体の前だった。
遺体と言っても原型を留めているのは顔だけで、顔から下は後ろの機械の中だろう事は想像できる。
男はまた遺体の前で手を合わせ、まずはプレートの上でジュージュー音を立てながら焼かれているナニカを調べ始める。
鉄板は高温になっていて直接触れないので、まずはこの熱源を調べる所から始める。
プレートの周囲を観察しスイッチや温度調節をしている物がないか調べ始め、それはずぐに見つかった。
プレートの裏側に回り込んだ時に側面に電源のボタンや温度調節のボタンがあり、それですぐに電源を落とすことはできた。
だがすぐには鉄板は冷えない為、男は後ろに置いてある機械に向かう。
そこにはピンク色したなにかが掻き回されていて、その中身を想像したのか男は顔を逸らして口を手で覆う。
だが20分と短い時間しか残されておらず男は、自分の気持ちを押さえつけその機械の前に行き周囲を調べ始める。
当然このままでは探すことができない為、まずはこの機械を止めなければならない。
機械を止める為のスイッチはすぐに見つかったがそこで一つ問題が発生した。
捻るタイプのスイッチになっているのだが、そのスイッチが回らないのだ。
力任せにやってもびくともせず、スイッチの横についている鍵穴に注目する。
カギをを差さないとスイッチが回せないタイプのようで、自分が先ほど手に入れたカギを見てみるが規格が違うのかカギが合いそうにない。
この機会を止めない事には中を調べられない為、仕方なく男はプレートのほうに戻る。
まだプレートは熱を持ってるが、先ほどのように何かが焼けるような音はなくなっている為、多少は冷えているようだ。
男はプレートで焼かれていたナニカを調べだす。
先ほどまで焼かれていた為、かなり熱くなっているが男は構わずそのナニカを開き中を確認する。
そのナニカの中には小さなカギが入っていた。
男はそのカギを掴むと再度先ほどの機械の前に戻りそのカギを使って再度鍵穴に差し込んでみる。
その小さなカギが正解だったようで鍵穴にピッタリとはまる。
カギを回し再度スイッチを横に捻ると今度はちゃんとスイッチがまわり機械が停止したようだ。
男は機械が完全に停止した事を確認し中を確認する為、その中に腕を突っ込んで中を調べていく。
鍋の底、淵側に何か突起物が張り付けられているようだ。
それを引き剥し確認すると、今度は猫をモチーフにしたカギになっていた。
男はそのカギを仕舞うとすぐに次の遺体に向かう。
その際、ちゃんと遺体に手を合わせることは忘れずに。
男はこの部屋で最後の遺体の前に立つ。
「次は幸人か…」
男は釣り上げられている、原型を留めていない友人を床に下ろす為に周囲の観察を始める。
天井まで伸びている鎖のを目で辿っていくと巻き上げるための機械が取り付けられている。
その機械には配線が通っていて配線の先には操作パネルがあった。
そのパネルの前まで行き確認すると、上昇と下降のボタンしかないようだ。
このまま下ろしてしまうと再度鍋の中に幸人を入れてしまう為、先に鍋を動かしその後に幸人を下す。
その為に未だにグツグツ煮えている大きな鍋のほうに向かい、鍋を支えている台座を見ると滑車が付いていて押せば動くようだ。
だが大きな鍋には大量の油が入っていて多少押した程度ではビクともしない。
男は勢いをつけ全力で台座を押すが多少動くがまだ全然力が足りないようだ。
「どんだけ重いんだよ…」
男は少し乱れた呼吸を整え再度鍋を見る。
男は少し考えた後鍋に触れてみるが、熱されている為鍋はすごく熱くなっている。
男はそれを確認した後、鍋から距離を取り15mほど離れてから、鍋に向かって全力で走り鍋にドロップキックをかます。
男の体重+助走の勢いがあった為か、衝撃受けた鍋はそのまま倒れ中の油床一面流れ出す。
「幸人を入れるつもりはないし、油がある必要もないしな!」
男は友人達をひどい方法で殺害した犯人に対して、憂さ晴らしのような気持ちもあったようで顔には少しの笑顔があった。少し不気味な笑顔だが…。
そして鍋のあった場所にある台座を退かす為近づくと、その台座の表面に窪みがあり、そこにカギが綺麗に嵌っていた。
「おいおい、これ俺が鍋を蹴り飛ばさなきゃ見つからなかったって事だよな…」
男は手紙を寄越した人物の悪意を感じるが、言ってもしょうがない為カギを回収して確認する。
そのカギは熊をモチーフにしたカギだった。
この部屋の遺体からはすべてのカギを回収し終えた男は、呼吸と気持ちを整え入ってきた扉とは別の扉を見る。
その扉には先ほど入ってきた扉と同じ子供の絵が描かれている。
同じ子供の絵ではあるが、先ほどとは違う部分もある。
さっきはナイフとフォークを持った子供の絵だったが、今回はナイフとフォークを持った子供の前にテーブルがあり。
下半身が無く胸を切り開かれたウサギ
吊るされたクマ
鉄板の上で焼かれるネコ
体を切り開かれ船盛りのように盛りつけられたゾウ
この四つの絵が一緒に描かれている。
男はこの絵を見て「この絵に見た立ててみんなを殺したっていうのかよ… クソ野郎がッ!!」と憤怒の形相と怒りのあまり握りこんだ拳から血が滲む。
この怒りを犯人に今すぐぶつけたいと思いながら、男は扉を確認しにいく。
扉の前には合計四つの鍵穴があり、それぞれの鍵穴の上に動物の絵が描かれておりこの絵の通りにカギを差し込めという事だとわかる。
「四つって事は最後のウサギのカギは晴子の所にあるのか」
男はそう呟くと来た道を走って戻りだした。