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ほんと、投稿遅くて申し訳ない。
『その鹿毛の馬とお嬢さんも一緒によこしな』
盗賊デオテオードの言葉にリディアン達は息を詰まらせた。
盗賊の中には金品の他に、女、子供までさらう者達もいる。
人も立派な金のなる木だからだ。
子供なら労働力として売られることが多い。特に魔法使いの資質のある者、あるいは精霊が見える者の利用価値は高く、そう言う者達は貴族と呼ばれる高い位の者が買って兵として育てるのだ。
女の場合は慰み者にされ、その後は殺されるか売られていく。助かったとしても売られる先は娼館か貴族の屋敷。娼婦として働くか貴族の囲い者になるかの違いだ。
余程腕の立つ人間が一緒でないと、女、子供は容易に旅に出ることは出来無いのだ。
そんな理由もあって、リディアンは出発する前に姿が分からないよう、メルベインのフード付きコートを被せられていた。
上から下までリディアンの身長をすっぽりと覆い隠す濃い臙脂色のコートは、ゆったりとした作りをしており、しかも厚みもそれなりにあったので、着てしまえばリディアンだとは分からないとクライフから太鼓判をおされた。
オルトなどはコートを着た状態のリディアンを見て大分ショックを受けてしまい、始終『可愛くない』『こんなの姫様じゃないっ』と連呼していた。
まあ、その後メルベインに連れていかれ、帰って来てからは大人しくなっていたが。
ともあれ、これならば早々に見破られることもない。
そう、全員が思っていた。
「聞こえねぇのか?怪我しくなかったら大人しく、そこのフードを被った嬢ちゃんと馬を一緒に渡すんだ」
暴露ている。
ばれている。
バレテイル。
クライフが切れ長の瞳をさらに細め眉間にシワをよせる。
ヴァンハルトは油断なく辺りに目を光らせながら今にも動き出しそうなオルトとメルベインを制する。
オルトとメルベインは剣に手をかけたまま、リディアンを護るように両脇へとついた。
リディアンは被ったフードの上から自分の心臓部分をギュッと握りしめた。
心臓の鼓動がやけに早く、煩いくらいに高鳴る。
デオテオードが命令する。
「フードをとって顔をみせろ」
リディアンはゆっくりとフードを取り払った。絹糸のような銀の髪が揺れリディアンの顔が露わになる。
色白の肌に幼さの残る顔立ち。儚げな印象を受ける美少女がそこにはいた。もう少し年を重ねれば絶世の美女となるに違いない。
ゴクリ
周りを取り囲む盗賊の数人がリディアンを見つめたまま唾を飲み込んだ。
「頭…!」
「ああ、こりゃあ久々の上物だ」
盗賊たちが色めき立つ。
値踏みする男たちの視線が容赦なくリディアンにつきささる。
ハッキリ言って気持ち悪いことこの上ない。
デオテオードは上機嫌で今にも祝宴でもあげそうな勢いだった。手下の一人がデオテオードに話かける。
「頭、あの女の情報通り、フードの奴は女でしたね」
「金も女も手に入るとはな。俺も最初はそんな上手いはあるわけねぇと思ったが、俺たちにもようやくツキが回ってきたか」
ピクリとクライフが反応を示す。
「あの女?」
会話から察するに、盗賊たちはその女に言われるまま、リディアン達を襲ったようだ。
しかも、一行の中にリディアンがいることもその女から知ったらしい。
「てめぇらには関係ねぇ話だ。さぁ、女をこっちへ貰おうか」
デオテオードは寄越せと言わんばかりに手を差し出した。
リディアン達が先ほどから全く反抗せず素直に従っていたからだろう、彼は油断していた。
だか、その油断が命とりになる。