三九、一時の休暇
ちょっとノホホンとさせます…
1941年12月28日・海軍省軍令部総長室
源三郎は、山本大将に呼ばれて軍令部総長室に来ていた。
「第二機動艦隊艦隊参謀、只今出頭しました」
「うむ、御苦労…掛けてくれ」
「失礼します」
源三郎は山本大将の向かいの椅子に腰を掛ける。
「先ずは、富士一二〇八号作戦御苦労様…お陰で米軍から戦艦八隻を分捕れた」
山本大将はニコニコである。
「ですが、米太平洋艦隊所属の空母三隻はサンジェゴ港に停泊中です。これでは、史実のミッドウェー海戦の再現が起こるかもしれません」
源三郎は対照的に眉を寄せる。
「まあ、君の進言で偵察型潜水艦を配置したお陰で今の所は敵勢力の接近は無いよ」
山本大将の隣に座る堀中将は、苦笑いで答える。
「それでも不安ですよ…ただ、諜報局から情報を貰ったのですが、米国が早くも反抗作戦の協議に入ったと…」
「ああ、アメリカの腹は来年三月の開戦だったからな…」
「だが、流石に彼らの史実通りに動いていると思うか?」
堀中将は源三郎と山本大将とは違う考えを示した。
「第二次世界大戦は今年の九月から勃発した。だがアメリカは戦争気分では無く、我帝國が宣戦布告をするまでは無かったと思う」
「なるほど…戦の準備がまだまだ不足している…ということですね?」
「そうだ。まあ、油断は禁物だが…」
その後、三人は第二作戦や対米講和構想を協議した。源三郎は協議後退席して海軍省を出た。途中で寄り道して定食屋で昼飯を済ませ天城へと戻って行った。
戦艦天城司令官私室
源三郎はそのまま司令官私室へと入った。
「山塚 源三郎、只今…って、依子さん、静巴さん…何しているんですか?」
思わず呆れる源三郎。理由は…
「どうだ?そそられるだろう?」
「ど、どうじゃ?」
…コスプレをしていた。
「…バニーガールとメイドさん…か…ハァ~…」
源三郎はしゃがんで頭を抱えた。
「何であるんだ…」
「そりゃ大和丸の中に有ったのを拝借したのさ…まあ、私が源三郎君の家に置いといたものだが…」
源三郎の嘆きに近い疑問に、静巴は整然と答える。
「他にも、ゴスロリ服やセーラー服やビキニやスク水やら…」
「あ~あ~あ~もういいっす…」
静巴のコレクションは、結構持っているのを確認した源三郎であった。
「まあ、流石にこのままではいかん…ゴスロリ服にでも着替えるか…」
静巴はそう言ってカーテンがある所に入って、カーテンを閉じる。
「はあ~…まだマシかもしれんが…止めてくれないかな~」
源三郎は立ち上がって気を取り直したが、まだ頭痛の種は残る様な感じだった。
「源三郎…ど、どうじゃ?///」
「…正直に言って良いんですか?」
「ああ…」
「…メチャ可愛いっす…」
「あ、ありがとう///」
紅くなる依子、自分の中で葛藤した源三郎。
まあ、相手が相手だから分からんでもないが…
「さてと…行くかな!」
どうやら、静巴の着替えが終わった様だ。勿論、ゴスロリ服で…
「え?行くって…」
「こちらです」
源三郎の質問を遮る様に、天城は依子・静巴・源三郎を連れて第五会議室へと転移する。
天城第五会議室
「え~っと…天城、これは宴会でもやるのか?」
源三郎は、相変わらずメイド服を着ている天城に質問した。
「はい、訓練が一段落してからの予定でしたが、開戦と同時に投入されたので延期してました」
「こいつは失礼…」
「いえ、良いんです…今日は無礼講ですから♪」
天城は源三郎に笑顔を見せた。
「その笑顔見たの…何年振りかな?」
源三郎は制帽を少し動かして、やや自嘲な笑いを浮かべる。
「それに…」
「ん?」
天城が何かを言おうとした瞬間…
「あ」
「あ!」
「あ…」
「フベシッ!!」
少女三人が源三郎を下敷きにして降り立った。
「「「大丈夫(?・~?・…)」」」
「大和丸・武蔵丸・信濃丸…久し振りだな…」
少女三人の正体は、源三郎・静巴と共に(?)この世界に来た輸送船の船魂だった。
「しかし…お前らも呼ばれてたのか…」
源三郎はずれた制帽を被り直した。
「はい、あの時以来…ちゃんと会いたいなと思っていましたから…」
「でも姉さんはちょっと恋しがっていた様な~」
「武蔵姉さん、滅多のこと…あれ?大和姉さん?」
「///」
大和丸は赤面顔だった。理由は…まあ、言わずと知れたという奴だ…
「それより…全員が揃ってないな…」
「直ぐに着ますよ…」
天城がそう言った瞬間、ざっと十数名の少女(?)が現れた。
「ああ…浅間六姉妹…」
浅間型戦艦の浅間・常磐・八雲・吾妻・出雲・磐手の艦魂だった。
「私達も忘れては困るよ?」
そう言って源三郎の後ろに現れたのは…
「富士か…」
「私達も忘れないで欲しいですね…」
「まあ、土佐達も来てるよな…」
富士型航空母艦の富士・土佐・紀伊・尾張・駿河・近江も来ていた。
その後、他の艦艇の艦魂も続々と集まって来て宴会が始まった。
「何かこう…久し振りに賑やかになったな…」
源三郎は酒を飲み合っている艦魂達を見てニコリと笑う。
「そうか…源三郎、貴様に意中の乙女は居るか?」
「…どうでしょうか?でも、この戦いが終わるまでは…決められないでしょうね…」
依子の意味深長な問い掛けに、源三郎は疲れた様な口調でノラリクラリと明確な答えを出さなかった。
「そうか…これは、フラグが建ったかな?」
「止めてください…本当に建ちますよ?」
「構わん…私は貴様が気に入っておる。静巴もじゃ…」
依子は源三郎に寄り掛かる。源三郎は何もせず、何も言わずに酒をもう一口飲む。
「今日は深くなるな…」
宴会は夜遅くまで深まった。
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