三六、日米開戦!!~富士一二〇八号を発動せよ!~
2013/06/29追記
時間的矛盾点を直しました(汗)
1941年12月7日午前七時(ハワイ時間)・第二機動艦隊旗艦天城艦橋
戦艦天城には、続々と米太平洋艦隊の動きが伝わってくる。
既に、米太平洋艦隊はパールハーバー…真珠湾を出港して、トラック諸島から出港した第二機動艦隊を目指して航海を開始している様だ。
しかし、米太平洋艦隊には戦艦八隻が主力に居て空母が全く居なかった。それは日本側も承知の上だ。
何故なら、事前に空母は大西洋に向かっていたからだ。
実は、第一機動艦隊が大西洋から攻撃をするという欺瞞情報に踊らされていたのだ。しかし、そんな大艦隊の移動なんて見逃す筈が無いとしてブラフだと判断したが、時既に遅しであった。既にサンジェゴ軍港には米空母三隻が投錨していた。
さて、対米戦の初戦の作戦:富士一二〇八号であるが、発案者は源三郎であった。
源三郎は、アメリカと戦う上で正々堂々戦うことを念頭に置いた。史実では、宣戦布告の遅れによりアメリカ国民の敵愾心を思いっきり煽ってしまったからだ。
では、どうするか?宣戦布告の後の攻撃では返り討ちが予想される。だが、宣戦布告の直後ならば…と考える人も居るかもしれないが、攻撃直前の宣戦布告は国際法上違反に当たる。源三郎は、事実上の宣戦布告の声明を出して、回答期限を過ぎたら宣戦を布告するという方式を取ることにした。勿論、数時間位は間を開ける必要があるが…
更に、源三郎はもう一つの策を打った。先ずは、第一機動艦隊が大西洋から攻撃をするという欺瞞情報を流す。トラック諸島に待機した第二機動艦隊が第一機動艦隊の暗号符丁を使った為、米国情報部ではトラック諸島経由で第一機動艦隊が大西洋に現れると判断した。
そして、逆に第一機動艦隊が第二機動艦隊の暗号符丁を使う上に、ジョンストン島かウェーク島へ攻撃をするという欺瞞情報に引っ掛かった為、米太平洋艦隊は南下をしていた。
そして、源三郎の考えは〝米太平洋艦隊と艦隊同士で対決をしよう〟であった。だが、第二機動艦隊の戦艦は天城のみだった筈…だと思ったら大間違い。巡洋艦の浅間以下六隻が答えとなるであろう。
「長官、時間です」
源三郎が腕時計を見て依子に何かを促す。
「うむ。空母部隊は予定通りの行動を行え!」
依子は分かったと言わんばかりに、指令を発す。
「ハッ!」
この指令は、一旦潜水艦へ発光信号で伝えられてその後に静巴が開発した長距離航行可能無線通信魚雷により、4日に富士以下六隻の空母は重巡二・駆逐艦一六・補給艦一〇を伴って戦艦・巡洋艦部隊と分かれた空母部隊に伝えられた。
午前七時三十分・米太平洋艦隊旗艦ウェストバージニア艦橋
米太平洋艦隊司令長官:ハズバンド・キンメル海軍大将率いる戦艦八隻を主力とする米太平洋艦隊は、第二機動艦隊を求めてジョンストン島・ウェーク島方面へと進出していた。
「長官!水偵から報告!敵艦隊を発見!戦艦一!大巡六!重巡二!駆逐艦六!!位置はジョンストン島東550km!!」
通信兵が、キンメル大将にそう伝える。因みに、米太平洋艦隊はオワフ島南西340kmの海域を艦隊速度12ノットで西進していた。
「よし!戦闘配置!!…ん?空母は居ない…そんな馬鹿な…」
キンメル大将の疑問は最もである。第二機動艦隊は第一機動艦隊と共に公式艦隊として、世界に認知されているからだ。
その時、通信兵が駆け込んで来た。
「長官!ジョンストン島航空基地より平文で緊急電!我、敵空襲ニ遭イ!!」
「何!?…そうか…空母はそっちに向かったんだな!!」
キンメル大将はそう確信した。
だが、そうではない。これは平文であったことに留意しなければならない。
実際、ジョンストン島に空襲など無かった。ジョンストン島の緊急電は、ジョンストン島近海に居た伊号潜から打電した欺瞞電であった。そして、離脱した空母部隊は何処へ行ったのか?それは後に分かることとなる。
午前七時四十五分・第二機動艦隊旗艦天城艦橋
「米太平洋艦隊を発見!戦艦八・軽巡四・駆逐艦二〇…以上です!!」
通信兵が三人に敵戦力を報告する。
「空母が居ないな…諜報局の情報通り、大西洋に行ったのかな?」
静巴は軽く笑う。
「いや、サンジェゴ軍港だよ。秘密電で今先届いた」
源三郎は、自作の無線機から出た用紙を見て訂正(?)する。
「でもまあ、島からの空襲以外は考えなくても良さそうね?」
「しかし、こっちの制空能力は皆無…相手も同じですが…」
だが、ここで空母六隻を全力投入した場合は戦術的勝利を得るかもしれないが、戦略的には負けである。史実のアメリカは、帝國海軍が示した航空主兵を目の当たりにしてチートな工業力に物を言わせて大量の空母を建造したのだ。結果、航空主兵は多大な消耗になった為、生産能力の低い日本は米国に敗北した。
だが、戦艦主兵になると少し話は変わってくる。様は命中率の戦いだ。
戦艦に積まれてる主砲の命中確率は、戦艦長門の場合は理論値上32,000mで12%である。まあ、遠くからの砲撃は基本命中率が低いが…
話は戻して、現状の把握と行こう。
現在、艦隊間の距離は約110kmである。よくこんなにも見付からずに…と思うかもしれないが、実は数時間前から数回の敵水偵の接触があった。だが、新しく制式採用された零式水上戦闘偵察機は、三座でありながら九六式艦戦と互角の勝負を演じたという化け物である。製造は川西航空機だが、設計は静巴である。御都合か!?というツッコミが有るかもしれないが、ここは静巴がそれ程の人物だと解釈して頂きたい。
作者である私も時々制御不能になるので(汗)by作者
午前八時五十分・米太平洋艦隊旗艦ウェストバージニア艦橋
「敵艦隊発見!!距離約35000!!」
「やはり、これれだけか…参謀、確かアサマタイプの主砲は31cmだったかな?」
キンメル大将は双眼鏡から目を話して参謀の方を向く。
「はい、アラスカ級大型巡洋艦の対抗艦ということで建造したようですが…一時期とは言え、一気に六隻を集中的に建造しましたから、数で押されては…」
参謀は資料を見ながらキンメルの質問に答える。
「そうか…まあ、奴等は戦艦一隻で向かってくるとは…無謀な…」
この時、キンメル大将は気付くべきだった。浅間型の主砲が31cmならば、巡洋艦部隊同士を想定している筈だから、戦艦同士の戦いには無謀過ぎると…
同刻・第二機動艦隊旗艦天城艦橋
「距離36000!」
見張員の報告に依子は椅子から立ち上がる。
「よし!先ずは敵前衛をやるとしよう…源三郎、貴様の作戦…やらせてもらうぞ?」
依子の悪魔めいた微笑みに、源三郎は苦笑する。
「まあ、上手く行けば我々に有利な戦いが出来ますよ…では、木村 昌福少将に行動開始を伝えます」
「頼む」
源三郎は通信室へと行く。尚、木村 昌福は第二機動艦隊の一時編入の時に、少将へ昇任した。
天城通信室
「木村少将の乗る最上に回線開け!」
源三郎は通信兵に最上への通信回線を開くことを命じる。
「了解しました!……こちら天城…こちら天城………はい、木村少将を…はい…艦長、どうぞ」
通信兵から受話器を受け取る。
「ああ…こちら山塚です」
「こちら木村、いよいよだな」
「はい。木村少将、予定通り重巡と駆逐艦を御願いします。戦艦への牽制は我々に任せてください…敵戦艦には水雷戦隊に対して一発も撃たしゃませんよ」
「何、こちらも君らの戦艦に敵前衛の一発も撃たせんよ」
「「アッハッハッハッハッ!」」
両者、不敵の笑いが響く。
「では、健闘を」
「そちらも武運を」
無線が切れた。
「よし、俺は艦橋へ行く。戦闘時の通信量に混乱を極めるかもしれないが、頑張ってくれ」
〝ハッ!!〟
源三郎はそう言って、艦橋へと戻る。
天城艦橋
「木村少将に伝言完了しました」
源三郎が艦橋に上がって来た。
「よし…じゃあ始めるとするか?富士一二〇八号を発動せよ!」
依子は双眼鏡を覗き込んでいたが、その双眼鏡を首に下げて作戦発動を叫ぶ。
「了解!第一機動艦隊にも打電します!!」
「最上より発光信号!我行動ス!」
「零偵離艦!九九回転も離艦しました!!」
次々に報告が飛び交う。
「距離34000!!」
「砲撃戦用意!浅間以下六隻にも下命!!」
そして数分後…
「敵艦との距離32000!」
「全艦主砲射撃用意良し!」
準備完了に、依子は頷く。
「…全艦!主砲射撃開始!!」
依子の声、艦橋に力強く響く。
「主砲撃て!」
源三郎は直ぐに主砲射撃を命じる。
「テッ!」
砲術長、これに答えて復唱する。
ドドーーーーン!!ドドーーーーン!!
天城が発砲すると、続いて浅間以下六隻も発砲する。
一方、米太平洋艦隊も…
「敵艦発砲!」
「砲撃準備完了しました!!」
二つの報告を受けたキンメル大将は怒鳴った。
「よし!全門砲火開け!ウテッ!!」
ドドーーーーン!!ドドーーーーン!!
旗艦ウェストバージニアに続いて、メリーランド・ネバダ・オクラホマ・ペンシルベニア・アリゾナ・テネシー・カリフォルニアも発砲する。
ここに日米開戦の火蓋は切って落とされた。
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