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三三、日米開戦への序曲~不明潜水艦を拿捕せよ!~

 ここから日米対立サイドが続きます。

 1941年11月1日・米領フィリピン沖東500km




 この海域と東シナ海では、帝國海軍とタイ王国が共同で護衛船団の訓練をしていた。



 シーレーン防衛の一貫として、1936年から開始されて少しずつ錬度が上がってきている。



 たまに、イギリス船籍やフランス船籍・ドイツ船籍の輸送船が護衛の依頼をするので、それも請け負っている。これは、錬度向上と国益確保の一貫として積極的に行っていることだが…



 尚、護衛依頼理由はソ連海軍の潜水艦の脅威があるからだと口を揃えて言っているが…




「うむ…我海軍も変わったな…」


 そう呟くのは、大日本帝國海軍の木村(キムラ) 昌福(マサトミ)大佐である。現在彼は、最上型重巡洋艦三番艦・鈴谷の艦長をしている。



 まあ、今の所は…




「そうですね…しかし、ここで将棋を打ってて良いんですかね?」


「まあ、良いじゃないか…」


 …最上型重巡洋艦に配備されている最新鋭兵器の技術的オブザーバーとして乗艦している、源三郎と艦長室で将棋を打っていた。



「しかし、最近のアメリカさんの動きは怪しいですな…」


 源三郎は駒を動かしながら、話しを切り出す。



「そういえば、中国共産党がほぼ一掃されたらしいな?そこからだね…」


 木村大佐も駒を動かしながら返す。



「はい。国民党は約束通り三個歩兵師団を満洲帝國に派遣して、対ソ連戦に備えています。それに、蒙古ソ連両方面でも各五個師団を張り付けているだとか…」


「まあ、共産主義の南下は我帝國として頭の痛い懸案だな…」


「ですね…」


 尚、将棋は一進一退の状況だ。



「…一進一退ですね…」


「だね…」




 その時、警笛が鳴る。




〝潜水艦発見!我海軍及びタイ海軍の潜水艦ではない国籍不明艦!!〟


「…確か、今米国籍の輸送船三隻を護衛中…」


「…拙いな…現在、アメリカとは仲が悪くなりつつある。ここで沈んでもらっては我々の攻撃だという口実を与えてしまうな」


 源三郎も木村大佐もこの状況を理解していた。



「さて、艦橋に上がるか」


「お供します」


 源三郎は木村大佐の後を追う。



 所で、鈴谷は姉妹艦の最上・三隈・熊野も改装を受けたということだが、現在の最上型重巡洋艦のスペックは、以下の通り。




最上型重巡洋艦(第二次改装後)


同型艦:最上・三隈・鈴谷・熊野


基準排水量13000屯


満載排水量16500屯


全長200m×全幅20m×吃水6.2m×全高30m


機関ディーゼル四基四軸(160,000馬力・軽油2000屯)


最大速力33ノット


航続距離20ノットで10000海里


武装:

50口径九九式20.3cm連装砲五基

零式対艦誘導弾二基八発

65口径九八式7.6cm速射砲四基

零式連装魚雷発射管二基酸素魚雷二〇本

一式近接防御誘導弾二基五〇発

九八式40ミリ機銃連装四基単装二基

九六式25ミリ機銃連装四基単装四基

12.7ミリ機銃一二挺(移動可)

対潜兵器一式

掃海具一式

陸戦装備他


艦載機:搭載機数三(零式水上戦闘偵察機×3)


電子装備:

九九式対空電探

九八式水上電探

九七式水測

九八式射撃指揮装置

九九式多機能無線機(電話・電信・電送)

九八式現在位置検出装置

九八式小型電子計算機




 鈴谷艦橋



「敬礼!」


 副長が木村大佐と源三郎に敬礼して、続いて艦橋要員も続けて敬礼をする。木村大佐と源三郎は返礼をする。



「うむ、状況はどうか?」


「はい。聴音手の報告によりますと、サーゴ級に似た潜水艦とのことです」


 士官の報告に源三郎は何かを思い出した顔をした。



「山塚大佐、何か心当たりでも?」


「はい、諜報局から潜水艦に関する情報が有りまして…その中にアメリカは、第一戦線に使える最新のサーゴ級潜水艦が配備されたという情報が…」


 源三郎は諜報局からと言ったが、半分は自分の知識から引用している。



「尚更だな…確か、大淀が近くに居たな…大淀に連絡!貴艦ノ回転翼機ノ発艦ヲ要請スル!!」


「了解!」


 史実では水上機搭載となっている大淀だが、この世界では回転翼機搭載となっていた。



 大淀型軽巡洋艦のスペックは以下の通り。




大淀型軽巡洋艦


同型艦:大淀・仁淀・長良・五十鈴・名取・由良・鬼怒・阿武隈


基準排水量8000屯


満載排水量10500屯


全長180m×全幅15m×吃水6m×全高30m×甲板高6m×艦橋高18m


機関ディーゼル四基四軸(100,000馬力・軽油1000屯)


最大速力36ノット


航続距離20ノットで10000海里


武装:

65口径九六式10cm高角三連装砲二基

零式対艦誘導弾二基八発

65口径九八式7.6cm速射砲四基

零式連装魚雷発射管一基酸素魚雷二〇本

一式近接防御誘導弾二基五〇発

九八式40ミリ機銃連装四基単装二基

九六式25ミリ機銃連装六基単装四基

12.7ミリ機銃六挺(移動可)

九九式爆雷40発

対潜兵器一式

掃海具一式

陸戦装備他


艦載機:搭載機数四(九九式回転翼機×4)


電子装備:

九九式対空電探

九八式水上電探

九七式水測

九八式射撃指揮装置

九五式多機能無線機(電話・電信・電送)

九六式現在位置検出装置

九八式小型電子計算機



 阿賀野型をベースにした対空・対潜を重視した軽巡洋艦。水雷装備は阿賀野型より一つ減らされたが、代わりに回転翼機からの対潜魚雷が削減分の補填という形に変貌した。




 話は戻して、大淀の後部飛行甲板では、対潜装備をした九九式回転翼機の発艦準備がちょうど終わっていた。




「こちら、大淀ヘリ三番機!機内最終点検完了!異常無し!!発着艦管制室、発艦はまだか?」


「こちら、発着艦管制室。待ってくれ…今降りた!くれぐれも撃沈はするな」


「了解!大淀ヘリ三番機!発艦する!!」


 大淀ヘリ三番機は、直ぐに発艦して国籍不明の潜水艦が発見された海域へと急行する。



「全く…アメ公の潜水艦の可能性有りって…」


 大淀ヘリ三番機の機長、山方(ヤマガタ) (アユム)海軍少尉が愚痴る。



「機長、まさかアメリカは…」


「余計なことを考えるな。考えるのは任務の終わってからだ」


「ハッ!申し訳有りません!!」


 山方少尉は分かっていた。米国船籍の輸送船が沈んでしまったら、帝國への圧力が一層強まると…




 一方、国籍不明の潜水艦は…



「敵は気付かない…か…」


 国籍不明の潜水艦こと、サーゴ級潜水艦・サーゴの艦長、ショー海軍少佐は頭を悩ませた。原因は、大統領直々の命令書の内容だった。



〝ジャップの艦艇と護衛している輸送船を攻撃せよ〟



 という、国際問題有りまくりの命令書だった。現在、アメリカは日本とは仲が悪いものの、妥協点を見つければ対立しなくても良いというのが世論の大勢を占めているからだ。



 そこへ、昨日開封した命令書だ。確実に合衆国は戦渦に巻き込まれるだろう。




「…命令は命令だ…」


 だが、軍人は上官の言うことには逆らえない。



「艦長、魚雷発射準備完了しました」


 ショー少佐は副長の報告に対して頷くだけだ。



「…(神よ、我らを許したまえ…神よ、我らを救いたまえ…)…発射用意…」


 ショー少佐は心の中で神に懺悔をする。



「…発射用意よし…」


 副長は、気の乗らないことはしたくないのか迫力が無かった。それは乗組員も同じだった。



 誰も、戦争等望んではいないのだ。




「…皆、責任は私にある…艦首四門!魚雷発射!!」


「発射!!」


 艦首魚雷発射管から四本の魚雷が走り出した。



「急速潜航!深度…」


 ショー少佐が急速潜航の深度を言おうとした時、聴音手の絶叫を交えた報告が飛んで来た。



「上方に着水音確認!!爆雷です!!」


「何!?」


 ショー少佐は悟った。やはり、着けられていたと…



 アメリカ海軍は北海合同演習に関する情報に触れる機会があったので、皆が資料を読み漁っていたのだ。



「…終わった…」


 ショー少佐が絶望の淵に追いやられる直前に爆雷が爆発した。その数分後、通信室から連絡が入った。



「艦長…ジャップからモールスで、浮上し武装解除をすれば助けてやると、連絡が…」


 通信士官の報告に、ショー少佐はだらんと通信士官の方を見て、副長の方を見る。



「…副長、罠かと思うか?」


「…少なくとも、ジュネーブ条約は守ってくれる筈です…」


「そうか…浮上しよう…」


 艦橋要員は一瞬艦長が血迷ったかと思ったが、直ぐに冷静になった。大統領の方が、血迷っているという考えが少なからずあったからだ。




 時系列はやや戻って海上に居る鈴谷へ…



「やはり撃って来たか…対潜兵器!投擲爆雷発射用意!!」


 木村大佐は新型対潜兵器の投擲爆雷(ヘッジホッグ)の発射準備を下命する。



「これ一発でも魚雷に当たってくれれば、連鎖的に爆発するんですけどね…」


「まあ、こりゃ運頼みかな?」


 オイオイとツッコミたくなるかもしれないが、ヘッジホッグは直接接触しないと爆発しないからだ。一応、時限信管等色々な信管もあるから待ち伏せとかにも使えるが…



「魚雷四!雷速31ノット!距離4000!!本艦左舷に向かって来ます!!」


 聴音手の報告に源三郎は見張り場に出て、双眼鏡から雷跡の有無を確認する。



「…雷跡から見て、Mk14の可能性有り…アメリカだな…」


 源三郎は、雷跡が見えることを確認した。



「距離300で投擲爆雷発射を進言!」


「うむ。水雷長!距離300で投擲爆雷発射だ!!」


 源三郎の進言は、木村大佐の即答で採用された。



「…流石勇猛というか何と言うか…」


 源三郎は、自分の進言を即採用に苦笑する。



「何、君が一番詳しいんだ」


「まあ、開発には関っていますけど…」


 基本、オーパーツモドキは源三郎と静巴が必ずと言って良い程関っている。



「こちら水雷班!投擲爆雷発射準備完了!!」


「了解。聴音手から距離を教えてもらえ。タイミングは任せる!」


「了解しました!!」


 投擲爆雷の準備は二分で完了したが、時速31ノットは分速約957mの速さであり、既に2000mを切ろうとしていた。



「まだだ…まだだぞ…まだ一分半以上もある…」


 水雷長は、自分に言い聞かせて発射の時を待つ。そして…




「距離600!……500!…450…400…」


「発射用意!!」


「350…300!!」


「発射!!」


 一斉に投擲爆雷は宙を舞って海面へと舞い落ちる。



「当たってくれよ…」


 水雷長が呟くように、誰もが当たれと願う。



 その時、水柱が一斉に立った。



 水雷班は固唾を呑んで結果を待つと共に、投擲爆雷の次発装填にかかる。




「こちら聴音室!魚雷音無し!迎撃に成功!!」


 聴音手の報告に乗組員が沸き上がる。



「潜水艦の拿捕確実はまだだが…」


「今先、大淀から通信が入りまして…浮上して武装解除したとのこと…艦長以下、乗組員全員が乗り気ではなかったとのことですが…」


 通信士官の報告に、木村大佐と源三郎は只々苦笑するしかなかった。



 その後、サーゴは機密書類等を回収されつつ横須賀へ曳航された。



 書類の中には、〝ジャップの艦艇と護衛している輸送船を攻撃せよ〟という大統領直々の命令書も発見されて、流石の今上陛下も…



「これは交渉をやっても無駄に思えてならない…」






 と落胆の声が漏れたとか…

 御意見・御感想、御待ちしております。


 PS


 最近、更新が遅れて申し訳ございません(汗)。

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