三一、第二次世界大戦勃発
1941年9月1日・ポーランド第二共和国ソ連側国境
この日、この国境を警備しているポーランド兵は何時もと変わらぬ一日を過ごすだろうと思っていたに違いない。
だが、それは一発の発砲により掻き消された。
「こちら第三五監視哨!T―26が発砲!歩兵を連れて前進中!!」
「第四八監視哨!BT-7が多数接近!!」
「第一六防空隊!ソ連機多数確認!!これより防空戦闘に入る!!」
各所・各隊からソ連軍の襲撃を知らせる報告をして来た。
「司令官!大統領より伝言!ドイツ派遣軍がそちらに向かう!!共闘されたし!!であります!!」
「おお!あの冬戦争の英雄か!!」
司令官は士官の報告に楽観した。ソ連は食い止められると…
だが、そんな希望は直ぐに打ち砕かれる。
9月2日・ポーランド第二共和国首都ワルシャワ・軍司令部
「た、退却戦ですと!?」
ポーランド軍の司令官は体を乗り出して、ドイツ派遣軍の司令官に迫る。
「はい。残念ながら…」
ドイツ司令官は残念そうな顔をした。
「どうしてですか!!」
「ソ連は大量の兵員と武器を使って、大いなる犠牲があろうとも目的が達成しない限り、ソ連兵が次々と現れてくるでしょう…私は冬戦争で実感しました」
「…そうですか…」
ソ連と直接戦ったドイツ司令官の言葉に、ポーランド司令官は反論出来なかった。
「僭越ながら、我総統閣下は貴国の大統領に亡命政権準備の打診をして、結果ここの首都ワルシャワが落とされた時点でポーランド亡命政権を樹立すると言ってきました」
「!?…そうですか…」
亡命政権という言葉を聞いて、ポーランド司令官は沈黙した。
「兎に角、熾烈なる抵抗を続けて西方に退却しましょう。まだ活路はあります」
「分かりました。それで行きましょう」
数週間後、ポーランド第二共和国は国土の七割がソ連に占領された。
残りの三割は独波連合軍の猛攻により凌ぎ切った。
だが、戦いはここだけではなかった。
9月5日・独逸第三帝国東プロイセン・旧リトアニア側国境
ここでも、ソ連戦車を中心としたソ連軍が雪崩を打って攻め込んで来た。
「赤軍が来たぞ!防戦用意!!」
「各所から防戦準備完了との報告有り!」
「よし!攻撃開始!!」
だが、ここは一坪の占領を許さずに凌ぎ切った。実は、1日のポーランド侵攻を受けて独逸は予め新鋭の戦車を中心とした二個師団を追加配備していたのだ。
更に冬戦争経験者も多数居る為、ソ連軍は最初こそ善戦であったが殆どは破れて壊走状態だった。
結果はソ連がポーランドの七割を占領しただけだが、これが第二次世界大戦の発火となった。
ドイツ・イギリス・フランスを中心とした連合国は、ソ連に対して抗議をしたが無視された。
連合国は、ソ連に対して宣戦を布告。ポーランド解放を目指して、ソ連が占領する地へと攻め込んだ。
「やはや…あると思っていたとは言え、9月1日にやってくるとは…」
独逸第三帝国の総統・ゾフィーは自室で苦笑していた。まさかの第二次世界大戦が、9月1日であることに前世の因縁があったのかと思ってしまったからである。
「だが、このままソ連が黙っている訳が無い…」
ゾフィーは覚悟をしていた。ソ連が領土拡張に走っていることを…バルト三国併合だけでなかった、ポーランド占領が証拠となる。
だが、次は何処を狙うか?
ゾフィーでも、前世と大分違う歴史の流れ故に悩んでいた。
一方、大日本帝國の状況は緊張の感があった。ソ連が領土拡張に走り出した為、満洲帝國にも来るのではないかと噂されているからだ。
「いやはや…始まりましたね?」
源三郎は、9月1日の夕刊の新聞と2日の朝刊の新聞に目を通している。
「そうだな…二年遅れだが、始まったことに変わりはあるまい…」
「だが、こうなると大変なことになるな?ソ連はポーランドの七割を占領…次は何処か…」
呆れの静巴に考える依子。
「でも、地理的には、ルーマニアからのヨーロッパ制覇も考えられます」
源三郎は、世界地図を広げてルーマニアの所からヨーロッパ全体へと指を動かした。
「意外にも満洲帝國か?」
静巴は反対の満洲帝國を指して、ハバロフスク・ウラジオストクから満洲帝國へと指を動かす。
「それだと大慶石油採掘所と精製所が狙われますね。あそこは、去年から稼動して満洲国内や中華民国の国民政府地域や我帝國に提供していますし…」
今度は源三郎がチタから満洲帝國へと指を動かした。
「それに、反共同盟の打破すらも画策しておるかもな…」
依子は苦笑する。
しかし、戦争と言うのはおいそれと終わるものではない。
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