二七、新鋭艦等々登場+第二機動艦隊&超超弩級戦艦誕生
今回は話の流れが短兵急になりました(汗)
1940年4月15日には、帝國陸海軍は撤退準備を完了してフィンランドを去った。
帰還後も源三郎・静巴・依子に暇は無く、訓練や開発等の忙しい日々を送っていた。
8月某日・横須賀海軍工廠造船ドック
「…暑いな…」
「そうですね…」
源三郎は、帝國技研から転向して源三郎の秘書官として配属された、宮本 狭杜浬海軍中尉と共に横須賀海軍工廠造船ドックの進捗状況視察に来ていた。因みに狭杜浬には姉が居て、その姉がフィンランド湾早朝遭遇海戦で名を馳せた宮本 真弓である。
「宮本中尉、マル五計画の主力艦の進捗状況を教えてくれ。最近多忙で忘れ掛ける」
「分かりました。現在は…浅間型六隻が竣工…あと、天神山型護衛空母の増産発注分がそろそろ来年半ばに竣工する予定です。尚、呉・長崎で建造中であるマル三計画の主力艦は、一号艦及び二号艦が武装の本格的取り付けに入り、目下横須賀の三号艦の武装取り付けは年内には開始するようです」
「そうか…ありがとう、思い出した」
源三郎は宮本中尉に礼を言って、水筒を取り出して水を飲む。
「…ふぅ…口付けてないから飲むか?」
「…良いんですか?」
「水分不足で部下が倒れたとか言われなく無いし、こっちだって倒れては困るからな」
「では、御言葉に甘えて…」
宮本中尉は、源三郎に差し出された水筒を受け取って水を飲む。
「ふぅ…生き返った~……ハッ!///」
宮本中尉はしまったと思った。水筒の口に自分の口を付けて飲んだからだ。
「ん?どうした?」
因みに、源三郎は建造中の〝三号艦〟を見ている為、そのようなことは知らない。
「いえ、何でも有りません///」
宮本中尉は赤面になりながらも水筒を返したが、口を付けたことは言わなかった。
「そうか…まあ、水筒…宮本中尉の分も購入しなければな…」
「え?」
「上官から分け与えられているのも難だろう?」
「そ、そうですね…でも…」
「何、俺の財布から出しとくよ…部下にあまり負担させちゃあいかんしな…」
源三郎はそう言って水筒の水を飲む。勿論、口に触れなしで…
「よし、ヘルメット被って中の視察行くか…」
「はい」
二人はヘルメットを被って、建造中の艦艇へと足を運ぶ。
「おお、これは山塚大佐!久し振りですな!!」
「おう!久し振りだな、主任」
源三郎に声を掛けて来たのは、建造中の艦艇の工事主任者であった。
「今の所の状況はどうだ?」
「来年の春までには終わると思いますよ?まあ、四年間掛けてですから苦労は多かったですが…」
主任者は苦笑いをした。
「そうか…すまんな」
源三郎もつられて苦笑いをする。
「しかし、これで竣工時に海軍に引き渡されるとなると…感無量かもしれませんね?」
「そりゃそうだろう…何せ、長門型戦艦以来の新型戦艦を作るのだからな?」
「はい!腕が鳴ります!!」
そう、三号艦とは戦艦のことだ。読者の中でも、これがどういう戦艦になるのかは予想が着く人は着く。ここでの詳細は伏せて置く。
その後も工事現場を視察して、昼頃には視察を終えた。
12:05・戦艦建造工事従業員食堂
「いや~飯まで御一緒は嬉しいですね~」
「まあ、腹が減っていたからな…それに、たまには工員達と話すのも良いからな…」
源三郎と宮本中尉は従業員の食堂で昼飯を御馳走になっていた。
「しかし、この飯は美味いな。やはり、飯が美味くなくてはやる気は出ないな」
「それは同感ですよ?まあ、その分きついですけどね…」
「まあ、腹が減っては戦は出来ぬだ。何処に行ってもこれは変わらんよ…軍も企業も皆同じだ…」
その後、昼休みに工員達と快談をして有意義な時を過ごした。
この視察の後も忙しい日々が続いた。
1941年4月18日・横須賀海軍基地
「ここに第二機動艦隊創立を宣言する!!」
連合艦隊司令長官・山本 五十六大将の宣言により、戦艦一・空母六・巡洋艦六隻を基幹とした機動艦隊「第二機動艦隊」が誕生した。
第二機動艦隊
第一機動艦隊(堀悌吉中将指揮)と並ぶ機動艦隊。艦隊速力25~30ノットを弾き出せる高速長距離行動可能艦隊で、担当海域は変幻自在ではあるが、太平洋や大西洋・インド洋まで幅広く活動範囲が大きい。旗艦は天城。尚、独自裁量が認められてるが、戦略・作戦目的に(当たり前だが)抵触しない程度の範囲である。
別称もあり、活動範囲の広さと独自裁量の特徴に相まって「遊撃艦隊」と言われている。
戦艦:天城
空母:富士・土佐・紀伊・尾張・駿河・近江
巡洋艦:浅間・常磐・八雲・吾妻・出雲・磐手
駆逐艦:秋霜・清霜・初夏・初秋・早春・島風・朝潮・大潮・満潮・荒潮・皐月・水無月・文月・葉月・長月・神無月・霜月・師走
潜水艦:新型四隻
補給隊:高速補給艦10隻
尚、天城・富士・土佐・紀伊・尾張・駿河・近江は遠州海上輸送株式会社から徴用された貨客船並びに油送船である。遠州海上輸送株式会社自体が半分ダミーの様な企業であるが、貨客船と油送船も海軍力を増強する為のダミーであった。だが、建造して数年間は日本の為に頑張ってきた。客を運んで資金を稼いだり、大容量を生かして大量の石油を日本に運んで備蓄して対米戦に備えたり等々…
これら七隻は、欧米から帰国後に改装が開始されてものの数ヶ月で終わり、五ヶ月掛けて乗員の練成に励んでいた。
そして、他にも新型戦艦が誕生していた。数は三隻。
「大和型戦艦…まあ、これは外すことは出来ないよな…」
翔鶴の艦橋で新型戦艦・大和を眺めている源三郎がポツリと呟く。
「正に大艦巨砲主義の申し子ね…私は航空主兵主義の申し子だけど…」
隣には、空母翔鶴の艦魂:翔鶴が立っていた。
「まあな?ただ、空母は航空機有っての空母だということを忘れないでおくれよ?」
「分かっている…確か、この後に新型戦闘機の受領もしなければならんしな…」
「新型機は三菱さんが心血を注いで作り上げたものだ…期待大のな」
「それは楽しみだな…だが…」
翔鶴は、顔を下に向けて目線と源三郎の足元へと向ける。
「…辞令、読んだな…」
「うん、戦艦天城の艦長に異動だってね…」
「それと、第二機動艦隊の参謀だよ…通信参謀兼任で慣れてはいるけど…」
「…頑張ってね…」
「そっちこそ、妹と一緒になってイチャイチャするなよ?」
「それ何時見てた!?///」
カミングアウトに翔鶴は顔を紅くした。
「はて?それは忘れてるよ…今は何時何処かまでは覚えてられないよ…プライベートのことに関しては…」
「い、忙しいもんね///」
「他にも色々とやらなければならんことが山ほどあるぜよ」
源三郎は明後日の方向に顔を向ける。
「…頑張れ~…」
翔鶴は源三郎の憂鬱に冷や汗をかきながら応援する。
その夜・戦艦天城防空指揮所
「…乾杯!」
『乾杯』
防空指揮所で源三郎・静巴・依子…そして、戦艦天城の艦魂:天城と酒を飲み交わす。
「…どうだ?天城になった気分は?」
「まあ、天ノ川丸が貨客船から軍艦になるのは、薄々勘付いていましたが…まさか戦艦とは…」
戦艦天城は最初からではなく、若干ながら前述で紹介された改装戦艦なのだ。それ故か…
「まだメイド服とはな…私の為かな?」
静巴は天城をやや圧倒する様にして迫る。
「いや、元貨客船の名残でしょ」
「はい…」
源三郎のツッコミに、天城の否定が出た。
「まあ、そんなことは如何でも良い…大事なのはメイドさんかどうかだ!!」
「や、止めてください~///」
静巴は天城の胸を揉み始める。
「また揉まれてる…」
依子はちょびちょび酒を飲みつつ苦笑する。
「ですね…」
源三郎に至っては呆れていた。
「…源三郎…」
突然、依子が源三郎に寄り掛かる。
「はい?」
「…私の胸、揉むか?」
依子は、自分の胸を上下させた。
「え?…あ、いや、その~…」
源三郎は一瞬理解出来なかったが、1秒後に理解した。混乱付きで…
「どうする?今なら不敬罪に問われなくて済むが?」
依子は、悪魔の様な微笑みで更に源三郎に寄り掛かる。
「ううううう…」
源三郎は、この状況を打破出来ずに居る。どうやら、男は男だが相手が相手なので心の中で葛藤している様だ。
「何をやっている?」
何処からかヒョコリと女性将官が現れた。
「…敬礼!」
源三郎は、肩章にある階級章を見て少将だと悟って敬礼をする。
「…おお、飲んでいたか…これは失敬したな」
「いえ、滅相もございません」
「いや、良いんだ…私も混ぜてくれないかな?」
「はい、喜んで…」
「ありがとう…」
突然現れた女性少将も酒を飲み始める。
「あ、自己紹介がまだだったな…」
女性少将がふと思い出した様に呟く。
「まあ、皆には初めてだが…私は、山口 多萌である!階級は少将だ。第二機動艦隊の指揮官として任命された。よろしく頼む!」
山口多萌と称した女性将官に、一堂唖然した。
「…はい、よろしくお願いします…」
「まあまあ堅くならずに…と言っても、大佐二人には無茶な話か…」
山口多萌は意味深長な発言をして、湯飲みに残っている酒を飲み干す。
「…私はな…山本長官から君らのことについて聞かさせ貰った…未来から来たとな…」
そこで漸く、源三郎と静巴はハッとした。
「私は君らの居た世界で言う…山口 多聞と言ったところか?まあ、男性だったと聞いた時は少々驚いたがな…」
源三郎と静巴は思った。この提督は死なせてはならないと…
だが、頼もしくも思った。この人の下ならいけると…
そうして行く内に、飲みは深くなって行く。
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