二〇、北海合同演習~開始前~
1939年12月1日・ポーツマス
既にドーバー海峡付近には、英海軍・独海軍が集結していた。
「いや~戦艦一二に空母一〇!壮観だな!!」
静巴は見張り場に立って、ネルソンやビスマルクを眺める。
「空母の八割はこっちですけどね…取舵5!急げ!!」
源三郎は他の艦艇の邪魔をしないように、舵取りを指示している。
「それでも凄いな…ドイツは潜水艦を大量に寄越してきたが…」
依子は情報参謀として、英・独海軍の参加艦艇の資料を纏めて、最終確認をしていた。
「確か数日後に演習だったね…今夜は顔合わせのパーティーだったかな?」
第一機動艦隊の堀長官が依子に尋ねる。
「はい。我々参謀も出席とのことです」
「そうか…情報参謀は控えめで御願いしますよ…」
「承知しております。ですが、流石に皇族となれば、会話を交わさずには居られないでしょうけど…」
「それはもうお任せしますよ」
依子の正論に堀長官は苦笑した。
「あ、それと艦長と主席参謀も」
更に、源三郎と静巴への注意も忘れずに言う。
「私は問題ないと思いますが、主席参謀が心配ですよ…45秒後に面舵12!」
「これでも場を弁えていますから、心配にならなくても…」
源三郎は寧ろ静巴を気にして、静巴は苦笑する。
「こりゃ色んな意味で顔合わせがきついぞ…」
堀長官は三人を見てまた苦笑する。
その後、日・英・独の陸海軍の首脳部は顔合わせのパーティーに出席した。
このパーティーで、依子は今上陛下の娘で海軍大佐であることに、英・独海軍の話題の的となり、静巴は静巴で奇計を巡らす作戦家として話題となって、源三郎は後方支援・船団護衛等の戦術を日本海軍流に作り上げたことに話題となった。因みに、源三郎は臨時駐英武官の時に色々な所へ歩き回って、後方支援や船団護衛等の教えを請うた。これが、英・独海軍から「準備・支援を考え歩く山三郎」と渾名された所以となった。山三郎は、単に山塚源三郎を短くした結果である。
問題なくパーティーが終わって、演習までに各陸海軍は英気を養うこととなった。
12月4日…この日から一週間は、陸海軍の演習を行う予定を立てていた。
しかし、(急ではなるが)これは11月30日に勃発した冬戦争のソ連に対する牽制の一つでもあった。
08:55(ロンドン標準時間)・北海
海軍の演習は、艦隊・航空・潜水艦の三つを主軸とした演習だが潜水艦と航空機を集中的に行うという。
戦艦ビスマルク・艦橋
「あれが長門か…」
眼帯にポニテの18歳位の少女が立っていた。だが、艦橋では独海軍将兵が最後の確認作業をやっていたが、それを差し引いても彼女に声を掛ける者は居ない。丸で見えてないかのような…
彼女の名はビスマルク。戦艦ビスマルクの艦魂である。
だが、この世界の彼女の艦は史実とは異なっていた。
ビスマルク級戦艦
同型艦:ビスマルク・ティルピッツ
基準排水量45000屯(予備浮力36000屯・満載排水量53000屯)
全長251m×全幅36m×吃水10m
機関ディーゼル九基三軸(200,000馬力・軽油標準3600屯)
最大速力30ノット・航続距離18ノットで12000海里
武装:
47口径40.6cm連装砲四基八門
55口径15cm連装速射砲六基
65口径10.5cm速射砲八基
40ミリ機銃連装四基単装六基
20ミリ機銃四連装二基単装一二基
艦載機:水上偵察機4(カタパルト一基)
電子装備:
レーダ三種(対空・水上・射撃用)
ソナー
無線機
電子計算機
因みに、シャルンホルスト級も史実と異なっている。
シャルンホルスト級戦艦
同型艦:シャルンホルスト・グナイゼナウ
基準排水量38000屯(予備浮力26000屯・満載排水量45500屯)
全長235m×全幅30m×吃水9.7m
機関ディーゼル九基三軸(200,000馬力・軽油3600屯)
最大速力33ノット・航続距離20ノットで12000海里
武装:
55口径35.6cm三連装砲三基九門
55口径15cm速射砲連装八基
65口径10.5cm速射砲七基
37ミリ機銃連装八基
20ミリ機銃連装五基
艦載機:水上偵察機3(カタパルト一基)
電子装備:
レーダ三種(対空・水上・射撃用)
ソナー
無線機
電子計算機
尚、相違しているのは裏でゾフィーが夢の情報を頼りに図面を引いて、海軍省で修正したのを建造したからだ。
「そろそろ開始だな…」
「はい、09:00に開始予定です」
艦長と情報士官の会話だ。
刻々と演習開始への時間が迫っていた。
御意見・御感想、御待ちしております。




