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二、他にも居たようです。それと…捕まりました。

〝我民間船、機関ハ既ニ停止シテイル〟


 源三郎がポケットから取り出した懐中電灯で、発光信号を送って主砲弾を撃ち込まれるという最悪の事態は回避出来た。



〝臨検隊ヲ送ル。暫シ待テ〟


 この返事に二人は溜め息を吐いて〝了解〟と返すしかなかった。




 輸送船:大和丸の船橋見張り場



「…臨検隊、来ましたね…」


 源三郎は船橋から双眼鏡を持って来て、辺りを見渡していた。



「…お?源三郎君!!後ろにも何か居るぞ!!」


 静巴も船尾側で辺りを見渡して居た。その静巴が何かを発見したようだ。



「え?…戦艦とか巡洋艦とかじゃあありませんよね?」


「いや!コンテナを一杯に積んでいる輸送船だ!!その後ろにももう一隻居るぞ!!」


「マジっすか?」


 源三郎は、船尾側に行って静巴が指差す方向に目を凝らして双眼鏡を当てて見る。



「…確かに、コンテナを一杯に積んだ輸送船が二隻居ますね…」


 そして、目線を船橋に移す。



「…ありゃ?何で右に船橋が偏ってんだ?それに船橋に人の気配が無い…」


 源三郎がそう不審そうに思っていると、静巴も目を真剣にして考える人になっていた。



「うむ…これは私達と輸送船三隻は飛ばされた様だな」


「飛ばされた?」


「そうだ…時に、源三郎君はパラレルワールドを信じているかね?」


 静巴は目を真剣にしたまま、チラリと源三郎を見る。



「いきなりですね?…まあ、一応は。小説でも出て来てますし、論理的にもある意味の存在性は有りますからね…でも、これがタイムスリップっていうことも…」


「だが、大和丸やあの輸送船は私達が居た世界に存在したか?」


「いえ、してません…これだけ大きければ、話題になっていますよ…」


「それに、この世界の気配は違うと思うな…」


 その時、下から大声が聞こえてきた。




「ラッタルを降ろさんかー!」


 中年男性の声である。恐らく臨検に来た軍人であろう。



「…俺、降ろして来ます…」


 源三郎は、静巴に一言言って駆け足で甲板(と言ってもコンテナだらけで狭いが)に降りて、ラッタルを降ろす。



「重いな…」


 だがそこは日本男児というのか…いや、そうではないのだが、数トンあるラッタルを動かして展開する。



「固定完了…乗船出来ますよ~!」


「全く…早く準備しないもんかね…」


 中年軍人は愚痴を言いつつラッタルを駆け上がる。



「すいません、人手が足りな過ぎるので…」


「…貴様がこの船の船長か?」


「いいえ。ですが、この船に乗って居るのは私ともう一人だけです」


「…信じ難いな…」


「私だって信じられませんよ、寝て起きたら船の中なんですから…」


 その後、源三郎は輸送船:大和丸と後ろの二隻の輸送船を説明した。後日、本当に船員が一人も居ないことに海軍関係者は驚いたという。



「それで…私達は一体…」


「一時拘束な」


「ですよね~」


 ということで、源三郎・静巴は臨検隊に拘束されて戦艦長門の営倉に放り込まれた。




 戦艦長門・営倉



「いや~あの船どうなるんですかね?」


「大丈夫だ!私と君以外では動かせない様に工夫しといた!」


「…え?そんな短時間じゃあ…」


「出ておいで!」


「人の話聞け」


 静巴の聞く無さに源三郎は悪態吐いた。



「…はい…」


 船長とかが着る白の制服を着ていて、源三郎や静巴と同い年の少女が現れた。



「…静巴さん、何処から攫って来たんですか?」


「攫ったとかと失礼な!この()はちゃんと自分の意志で来たのだぞ!」


「そうです。初めまして、大和丸です。よろしくお願いします」


 少女は自己紹介をして、源三郎に御辞儀をする。



「ああ、どうも。山塚 源三郎です。こちらこそよろしく」


 源三郎も囚われの身とは言え、これ位はきちんを弁えているので御辞儀をする。



「静巴さん、あなたの言う通りにしました」


「ありがとう♪」


 静巴は笑顔で大和丸の頭を撫でる。



「…///」


「(…懐かせるの上手いな~相変わらず…)」


 源三郎はそう思いつつ辺りを見渡す。相変わらず営倉の中だ。



「…え?」


 だが、ふと視線を戻すとそこには居なかった筈のもう一人の少女が居た。少女は源三郎らと同い年だが、服装が第二種軍装であった。



「…」


「…」


 御互いに沈黙を保っている。



「…あなたは誰ですか?私は大和丸です」


 先に沈黙を破ったのは、何と大和丸であった。



「私は長門…あなた、船魂ね?」


「あたなは艦魂ですね?」


 そして、再び沈黙…






「おお!可愛い()ちゃん!!」


 …の筈が、静巴によって沈黙状況再開を阻まれてしまった。



「…」


 長門は静巴の抱き着きを華麗に避ける。が…



「甘い!☆」


 静巴は急旋回して長門の懐に抱き着く。



「…ハァ~」


「~♪」


 長門は負けたとばかりの溜め息を吐き、静巴は満足気になって長門に抱き着いて放さない。



「…あの~長門さん?この人、可愛いと思った女子には所構わずとまでは行きませんけど、抱き着きますから…あ、申しくれました。山塚 源三郎です」


「長門です。あなたは…この時代の人間ではないな?」


「仰る通りです」


 長門の指摘に源三郎は抗わずに素直に認める。



「なるほど…では何処から来た?」


「2021年の日本から来ました」


「そうか…今年は1931年…なら90年後に来たということか…」


 長門はしめたと顔に出す。






「ですが、そこまでの〝ある過程〟はこの時代の人達にとって、酷く受け容れ難く辛い試練があるのですがね…」

 …今日、専門学校に入学します…四年間頑張ろう…



 御意見・御感想、御待ちしております。

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