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一五、張鼓峰事件

 1938年7月29日・張鼓峰




 張鼓峰や沙草峰へソ連軍が本格的に侵攻して来た。ここに張鼓峰事件が勃発した。



 事前に諜報部と監視部隊からの報告を受けて準備をしていた朝鮮軍第一九師団は、予てからの遊撃師団・機甲化師団の訓練成果が試されるということで士気が高い。



 これは源三郎・静巴の入れ知恵で、遊撃師団・機甲化師団の創設は対米・対ソ戦を想定して練り上げられたものである。



 この後の幾多の戦場で、それは活躍するであろう。




 話を張鼓峰事件に戻そう。事態は既に戦闘態勢に入っていた。



 下準備として、連山爆撃隊が張鼓峰山頂に居るソ連軍を250kg爆弾による空爆で一掃する。これにより一晩で張鼓峰山頂に居たソ連軍は壊滅した。まあ、油断していたというので当然のことだが…その後、帝国陸軍歩兵第75連隊が張鼓峰山頂を占領した。



 これより、日ソ両軍の激しい戦いは始まったのだ。




 帝国陸軍歩兵第75連隊・最前線



「敵戦車発見!」


「第193砲兵中隊は、連絡を取りつつ各個敵戦車撃破せよ!!」


「了解!」


「敵重砲射撃準備に入りました!」


「全員壕に隠れろ!!急げ!!」


〝うわーーーーー!!〟


 塹壕でソ連歩兵を待ち構えていた歩兵は、直ぐ後ろにある隠れ壕へと急いで入る。



「朝鮮軍第三航空隊から連絡が入りました!敵重砲の位置を把握して、これより爆撃するとのことです!」


「おう!…全く、ソ連の奴等は突撃ばかり繰り返しやがって…一昨日昨日の戦場を見てなかったのか?」


 愚痴を言っているのは、第75連隊長を務める佐藤(サトウ) 幸徳(コウトク)陸軍大佐。



「しかし、航空機や戦車の援護があるから幾分マシか…」


 その時、重砲が着弾して地響きが起きる。数分後、通信士官が入って来た。



「連隊長殿!航空隊より入電!〝敵重砲沈黙セリ。敵戦車多数見ユ。尚、歩兵ヲ伴ウモノナリ〟以上です!!」


 電文を聞くなり幸徳は直ぐに指示を出す。



「分かった!返信!〝砲兵・戦車ト共同撃破ヲ要請スル〟以上!」


「了解しました!」


 通信士官は急いで通信室へと戻る。



「総員!塹壕で待機!射撃準備だ!!急げ!」


 幸徳も三八式歩兵銃を持って塹壕へと出向く。



 塹壕では、幸徳の指示を受けた兵士が塹壕で射撃準備をしていた。




 数分後…



「敵戦車発見!距離1800!!」


「敵歩兵も多数!」


 歩兵の報告に幸徳は次の指示を出した。



「第196戦車大隊に敵戦車群の両翼を叩いてくれないかと聞いてくれ!」


「了解であります!」


 伝令兵が麓で待機している、第196戦車大隊の指揮営へと向かう。



「砲兵には距離1500で徹甲弾による精密射撃を指示!」


「了解であります!」


「我々は距離450で敵歩兵を狙い撃つぞ!」


〝了解しました!!〟


 歩兵は三八式歩兵銃の薬室(チャンバー)に弾薬を装填する。



 その時、第196戦車大隊の指揮営へ行っていた伝令兵が帰って来た。



「連隊長!第196戦車大隊は敵戦車群の両翼に対して攻撃するとのことです!尚、距離800で射撃開始とのこと!」


「分かった!」


 幸徳は口元を少しニヤつかせた。



「我航空隊!急降下爆撃を開始!!」


 ソ連の装甲車や戦車は、頭上の軽爆撃機から爆弾を落とされて吹っ飛ばされる。それでも無事なものは…



  ズドーーーーーン!!



 日本側の重砲の精密射撃で吹っ飛ばされる。



「敵!850に接近!!」


「まだ頭出すな!鉄兜ごと頭持ってかれるぞ!!」


 その時、ソ連戦車から嬉しくない戦車砲弾が撃ち込まれる。だが照準合わせがなっていない為か、日本側に人的被害が無かった。



  ズドンッ!……ドガアアアアアン!!



九五式軽戦車(ケイ)及び九六式中戦車(チハ)が発砲!両翼を囲んでいます!!」


「来たか!!」


 その報告に幸徳も思わずニヤける。九五式軽戦車・九六式中戦車の射撃精度が優れていることは、幸徳も知っていた。それと、行進射撃の演習では白軍・赤軍共に同数の着弾車が居たことは耳に入っていたのだ。



「敵歩兵は前に進めず…あ」


 幸徳の副官が、双眼鏡でソ連歩兵が頭を撃たれた瞬間を見た。



「逃げようとして督戦隊に撃たれたか…ソ連兵は前後に脅威がありますね」


「確かにな…まあ、孫子曰くの戦わずして勝つをやってやろうじゃないか…」


 幸徳は伝令兵を呼んで用件を伝えた。伝令兵は用件を聞くと、すぐさま走って行った。



「連隊長殿?伝令兵に何を指示したんですか?」


「ちょっとな…まあ、見てな…」


 一分後、ソ連側に異変が起きた。




「あれ?歩兵が逃げても撃たれない?」


 双眼鏡で敵情を見ていた副官が呟く。



「まあ、督戦隊を排除してもらったからな…」


「…え?本当ですか?」


 史実でも、ソ連兵士が無断で後退すると後ろに居る督戦隊の機関銃とかで〝処刑〟される。



 だが、幸徳の指示で狙撃に腕のある兵士が督戦隊を狙い撃って排除したことにより、ソ連兵士が後退…というより、逃亡し易くなっていた。



 まあ、それでも突撃するソ連兵士も居る訳で…




「よーい…撃て!」



  ダダダダダダダダダダ!!ダンッ!ダンッ!ダダダダダッ!



 九六式軽機関銃・三八式歩兵銃・九二式重機関銃が勢い良く銃弾を弾き出す。



 その後も戦闘は続いたが、夕方までには決着が着いていた。



 そして、帝國陸軍の御手芸の夜襲によって日本側の陣地を拡大。8月9日には張鼓峰に続いて沙草峰・将軍峰の山頂を確保した。尚、この状況は停戦が結ばれた8月12日まで続いた。




 8月12日、日ソ両軍停戦。ここに、張鼓峰事件は終結を見た。



 この張鼓峰事件は、戦車・重砲・航空機が連携して敵機甲師団を撃破することが重要と認識させられた。






 それに、軽兵員輸送車に分乗して機動性を高めた〝遊撃歩兵〟も活躍した。彼らは、軽兵員輸送車を使って敵の進路先で待ち伏せ攻撃を主にやっていた。そして、事終わると軽兵員輸送車に乗り込んで撤退若しくは転進したりして戦果を挙げていた。だが、彼らは今の台数では機動力が不足がちだと指摘。これがフィードバックされて、軽兵員輸送車を大量生産することとなる。

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