季節の旅人
むかし、どの村にも必ず四季社があって彼の者を迎えるのに使われていた。大きさは四畳半、窓はなく東側と西側に戸があった。
彼の者は東から現れ西に消えた。その姿は白髪の老人であることもあれば、まだ幼さの残る女、若い男、まるでバラバラであったが、どの者も口を揃えて言った。
『宿を借りたい、季を齎すぞ』
その言葉を聞いた村人は何も言わずに四季社に連れて行った。
村人は季節の変わり時になると彼の者の訪れを悟り四季社に供え物をした。村人は供え物をする時以外は決して社には近づかなかった。
ある時社に落雷があり社が燃えてしまった。その村の社は彼の者の訪れに間に合わず彼の者を泊めることができなかった。彼の者は西へ去りその村に季節が訪れることはなく全ての作物は枯れ家畜は死に絶えた。村人は抗うこと叶わず他の土地に移った。