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CAPRICE -カプリース-  作者: 陽気な物書き
第一部 サリスティア王国編 ~第三章 急転~
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真相

「本当に親父なのか……?」


 驚きを隠せないアレスは、唖然とした顔で思わず口走った。


 本人の言葉を鵜呑みにすれば、ロアの肉体にルヴァロフの魂が宿っているいることになるが、こんな芸当、見たことも聞いたこともない。まさに前代未聞である。


『何を間の抜けた顔をしている』


 徐に立ち上がり、ルヴァロフは振り返った。


「何がなんだか、さっぱりわからない……本当に親父なのか?」


『あぁ。見ての通り、今はロアの肉体に憑依している状態だがな』


 他人の肉体にまだしっくりしないのか、ルヴァロフは首や肩を回してその感触を確かめている。


「これはどういうことでございますか、陛下。私には事の次第がわかりませぬ」


 隣で一部始終を見ていたノーラは、動揺を隠そうともせずにラドニスに訊ねた。


「ルヴァロフは、とある悪魔と契約するために命を断つ必要があった。だが、彼は自ら命を絶つことができない。だから余がその手助けをしたのじゃ」


「ではあの処刑はそのための演出だったというのですか?」


『それは違うな。俺は確かに処罰されて死んだ。そうするように仕向けた奴の思惑どおりにな』


 目を細め、ルヴァロフは怪しく微笑んだ。


 その微笑が向けられた相手――ノーラは、背筋が凍りつくような感覚を覚えていた。顔からは血の気が失せ、とめどなく汗が噴き出している。


『どうかしたのか? 顔色が優れないようだが』


「な、なんでもありません……」


 ノーラは汗を拭いながら視線を逸らした。


 三人の会話がそこで中断したのを見計らい、アレスは会話に割り込んだ。


「処刑の真意はわかった。だが、なぜ親父を貶めた。そこまでする必要があったのか?」


「それは処刑に真実味を付与するためであり、何よりルヴァロフ本人がそれを望んだのだ」


「親父が……!?」


 驚きに満ちた表情で、アレスはロアの姿をした父親の顔を見つめた。


『陛下のお言葉は事実だ。俺はこの国に迫る危機を察し、魔王の一人との契約に臨む決意をした。陛下はそれを承知してくださり、俺は早速行動に移った。そしてこれは俺を抹殺したがっている奴をあぶり出すいい機会でもあると判断し、俺は大逆犯となることを陛下にお願いした。俺の処刑後、フォルセウスやフォルナーといった連中が跋扈し、様々な出来事があったようだが、その間に俺は魔王との契約に成功し、こうして戻ってきた。市民に対する背信行為を行い、最も責を負うべき輩を排除するためにな。それが誰のことなのか、貴女なら当然わかっておられますな、宰相閣下』


「なっ……わ、私には……何の事だか……」


 不意に話を振られ、ノーラは無様に取り乱した。


『いかに白を切っても、俺は知っているぞ。真の国賊が貴様だということをな!!』


「な、何を馬鹿な! 虚言に惑われてはなりません。反逆者は彼らです! 早く取り押さえなさい。抵抗するなら殺しても構いません!」


 ルヴァロフを指差し、ノーラは声を震わせながら命を下した。だが、兵士たちは互いに顔を見合わせ、命令の遂行に二の足を踏んでいた。宰相の言葉の信憑性に懐疑的であることと、何より絶対的な力で国を支えてきた英雄に牙をむく愚かさを全員が等しく認識していたからである。


「何をしているのです! 私の言葉は陛下の言葉も同然。早く彼らを捕らえなさい!」


「見苦しいぞ、ノーラ」


 背後から一喝した声に心臓を鷲掴みにされたような胸苦しさを感じ、ノーラは恐る恐る振り返った。そこには厳しい表情でじっと彼女を見つめる主の姿があった。


「見苦しいとはあまりのお言葉ではありませんか、陛下」


「黙れ。国家の忠臣を害しようとする者など、余の臣下にいらぬ。もし恥を知るなら、その罪を自ら購うがよい」


「そんな……私はもう必要ではないとおっしゃるのですか……」


 悲しげに呟くと、ノーラは懐から短刀を取り出し、素早くラドニスの背後を取った。その喉元に鈍く光る刃を押し当てる右手は、小刻みに震えている。


『ついに本性を露わしたか』


「黙りなさい、この死に損ない! あなたのような悪魔召喚師という得体の知れない存在が容認される国などあってはならないのです。だから私はあなたを無実の罪に陥れ、この国を健全な体制に移行させるつもりでいたのに……このうえは!!」


「陛下!!」


 ノーラの短刀がラドニスの首に一筋の赤い線をつけたことに肝を冷やしたレイティスは、剣を抜きながら一歩踏み出した。それに呼応するように、兵士たちも身構える。


「動かないで! 一人でも変な動きを見せたら、陛下には黄泉の国へと旅立っていただきます」


「やむをえん、か……」


 レイティスは渋い表情で剣を収めると、兵士たちに広場から撤収するよう命じた。


 時を同じくして、騒ぎを聞きつけた他の武官たちが王宮から駆けつけてきたが、レイティスは職権をもって彼らの行動をも掣肘し、そのまま踵を返させた。


 この様子を間近で見ていた市民たちも異常な状況を察してか、野次馬根性を放棄して次々と広場から立ち去っていく。


 気がつけば、広場にはラドニス、ノーラ、レイティス、そしてルヴァロフ親子が残るだけとなっていた。

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