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CAPRICE -カプリース-  作者: 陽気な物書き
第一部 サリスティア王国編 ~第三章 急転~
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 アルジャーノは常人離れした跳躍力で半壊した聖堂の建物に飛び乗ると、たった二度のジャンプで最高部に達した。頭上には、巨大な竜の姿がある。


「策があると言ったな、小僧」


「あぁ、これだよ」


 アルジャーノは懐から何の変哲もない一本のロープを取り出した。


「そんなもの、何の役にも立つまい」


「だからさっき訊いたんだよ。地上に降ろせばいいのかってね。これがあれば、アレスくんとの約束は十分果たせるよ」


 自信ありげに微笑むと、アルジャーノは天高く跳躍した。そしてロープを構えて竜の背中――ヴァラクの背後に降り立った。


 ヴァラクは緩慢な動きで振り返るが、その時にはもう体は後方へと倒れかかっていた。すなわち、アルジャーノがロープを首に巻きつけ、躊躇なく竜から飛び降りたのだ。


 ヴァラクはすぐに鎌でロープを切断したが、滞空能力がないため、重力を味方につけたアルジャーノと共に無様に落ちていく。


 それに気付いた竜が首を背後に向けようとした瞬間、長い二つの首は血飛沫を撒き散らしながら宙に舞った。アルジャーノの頭を踏み台に跳躍したロアが、人間の姿となって一刀の元に斬りおとしたのだ。


 頭部を失って落ちていく竜を横目に着地を果たしたロアは、アレスと目が合うなり、物凄い剣幕で怒鳴りつけた。


「何をしている! ヘルマイオスを呼ばぬか!!」


「あ、あぁ……」


 二人の連携に見とれていたアレスは我に返り、すぐにヘルマイオスを召喚した。


 視線の先には、身動き一つしない竜が横たわっている。


「殺ったのか……?」


「まだだ。気を抜くな!」


 ロアの叱咤が響く中、竜の首の切断面からまるで植物が生えてくるように頭部が現れた。


「馬鹿な、再生したのか!?」


「そうだ。ヴァラクは自分の体はおろか、配下の竜でさえ、欠損した部位を容易に再生できる」


「まるで蜥蜴の尻尾だな」


「蜥蜴に再生能力を付与したのは、他でもない奴だ。この程度は造作もない」


「造作もない、か。まずはこの厄介な竜をなんとかしないことには……くそっ、こう寒くっちゃ思うように体が動かない」


 アレスは白い息を吐きながら震えていた。事実、気温は氷点下に達し、自然と起こる体の震えが止まらない。爬虫類の動きを封じるためとはいえ、この環境は苛酷を極める。早期に決着をつけなければ、味方や市民にも弊害が伴うことは、もはや自明であった。


「あの小僧は見事にヴァラクを地上に引き摺り下ろしたではないか。そんなことをいいわけにするのは、貴様の気が緩んでいる証拠だ」


「何とでも言え! くそっ、体が凍りつきそうだ……」



「大袈裟な奴め。この程度の寒さで体内の水分や血液が凍りつくわけでもあるまい」

「そんなことになったら、この町の人間は全滅だ。なんのためにサルベリオンで……ん、凍りつく……そうか! もしかしたら……リエリさん! 手を貸してもらえませんか!!」


 アレスは突然振り返り、大声で協力を要請した。その理由もわからないまま、リエリはすぐに駆けつけた。


「どうしたの、アレス君」


「ふと思いついたんですが、サルベリオンで竜を凍らせることはできませんか?」


「できないことはないと思うけど、そんなことをしたらこの辺一帯の気温が今以上に低下し、私たちにまで危険が及ぶわよ。それでもいいの?」


「だから、首だけを凍らせるんです」


「首だけ……?」


「はい。首を落とし、その断面に溢れる血を凍結させるんです。うまくいけば、再生を阻止できるかもしれません」


「なるほど……わかったわ、やってみる。頼んだわよ、ロア」


「チッ、仕方ない」


 ロアは不満そうに舌打ちしながらも、地上でなおも爬虫類を吐き続ける竜の首を手際よく斬り落とした。それを見計らい、リエリはサルベリオンに命じ、竜の首の周辺温度を一気に低下させた。その結果、溢れ出る血は急速に凍結し、真紅の氷となって切断面を覆った。


 二人は固唾を飲んで見守るが、首は凍結したままで再生する気配はない。


「やったわ、成功よ! やるじゃない、アレス君」


「いえ、そんな……」


 満面の笑顔で振り返ったリエリを前にして、アレスは顔が火照るのを自覚していた。


「後は私とサルベリオンでなんとかするわ。アレス君とロアはヴィラートの応援に向かって」


「わかりました。気をつけて」


「アレス君こそ、ケフィさんをしっかり守るのよ」


「はい!」

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