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CAPRICE -カプリース-  作者: 陽気な物書き
第一部 サリスティア王国編 ~第三章 急転~
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魔王召喚

「俺の考えはこうだ。宰相ノーラが親父を無実の罪に陥れ、処刑を執行した。国王への影響力が大きく、強大な力を有した親父を始末したノーラは、この機に王都の悪魔召喚師を一掃しようと考えた。だが、奴にはもう一つの懸念があった。ケフィ=アルカスターの存在だ。親父の罪に連座する形で弾圧を始めれば、正義感の強いケフィは必ず弾圧される側について抵抗する。あまつさえ、魔王の召喚方法を知る彼女だ。奴は魔王を召喚されることを恐れ、ある人物に彼女を抹殺する話を持ちかけた。それが、あんただ」


「なかなか面白い話だ。もし本当にそうだとすれば、私は間違いなく宰相の話に乗るだろうな」


 フォルナーは薄らと笑みを浮かべ、アレスの推理を楽しんでいるように見える。


「ケフィ殺害計画を持ちかけられたあんたは、魔王の召喚方法を知るもう一人――マルセンもついでに始末しようと考えた。そこで一計を案じ、協力する代わりにマルセンを殺して欲しいとノーラに頼んだ。奴もまさか近くにもう一人いるなんて思っていなかっただろうから、これ幸いと二つ返事で承諾したんだろうな。そして、計画は実行に移された。第一段階として、刺客であるフォルセウスに聖堂を襲わせた。その時あんたは不在を装い、唯一支部長室に出入りを許されているシエラに、さも侵入者がいたかのように演じさせた。あんたから目をそらせるためにな」


「待ってください! まさか、支部長が犯人の一味だというのですか?」


 血相を変えてイセリナが問うと、アレスは大きく頷いた。


「まず間違いない。侵入者の姿を見た者がいないこと、その進入経路が不明なことも、それですべて説明がつく」


「……今の話、本当なのですか?」


 イセリナが絞り出すような声で尋ねると、フォルナーは落ち着き払った声で問い返す。


「君は、私と彼、どちらを信じるのだ?」


「そ、それは……」


 返答に困り、イセリナは視線を逸らす。


 二人の間に醸し出された空気に誰も入り込めず、息苦しい静寂が場を支配する。


「くしゅん!!」


 不意に可愛いくしゃみを発したのは、ロアだった。いかにもわざとらしいが、場の空気を破壊し、アレスに会話の切欠を与えるには十分だった。


「混乱しているあんたのために、俺の話が嘘でないという根拠をもう一つ示そう。たしか聖堂での犠牲者の中に、顔を潰された奴がいたと言っていたよな?」


「はい……それが何か?」


「断言してもいい。それが行方不明のシエラだ。おそらくは口封じで殺されたのだろうが、顔を潰されていた説明はつく」


「だから、どこを捜しても見つからなかった……」


 愕然とした表情で、イセリナが呟く。


「どうだ、反論はあるか?」


 顔を近づけてアレスが詰め寄ると、フォルナーは小さく笑みを浮かべた。


「……降参だ。まさか君がこんなに頭の切れる人物だとは思わなかったよ」


「支部長……」


 哀しくも切ない声を漏らし、イセリナは失望の眼差しを向けた。フォルナーはこれを表情一つ変えずに真正面から受け止める。


「すまないな、イセリナ。大筋(・・は彼の言ったとおりなのだよ」


「そんな……どうして……」


「人間は愚かだ。悪魔召喚という術で悪魔を支配している気になっているが、実際はむしろ逆。悪魔の手の上で踊らされているに過ぎないのだよ。だから私は、人間にとって最も脅威である魔王に関する一切を、この世界から抹殺するつもりだったのだ!」


「そのために罪もない人たちを……信者の方々やシエラまで殺したと言うのですか!」


「そのとおりだ」


 震えながらイセリナが搾り出した言葉を、フォルナーはあっさりと認めた。


「これで決まりね」


 この時とばかりに、リエリが横から口を挟む。


「あなたが事件に加担していたとわかった以上、私も黙ってはいないわよ。治安維持の一翼を担う者として、あなたを逮捕するわ」


「フフフ……ハハハハハッ!! 逮捕か、面白い。できるものならやってもらおうか。解陣――」


 大笑いしてすぐに真顔に戻ったフォルナーはスッと立ち上がり、手馴れた様子で悪魔を召喚した。


 アレスたちとフォルナーの間に召喚された悪魔は鎌を手にした子供の姿で、二首の頭部を持つ小型の竜に跨っている。


「チッ、厄介な奴を……」


 ロアは苦々しく呟いた。


 悪魔と竜は徐々に巨大化し、やがて部屋の天井や壁が崩壊し始めた。


「皆、外へ出るわよ!」


 アレスの手を取り、リエリは部屋を飛び出した。他の者もそれに続いたが、フォルナーの姿がないことに気付いたのは、イセリナだった。足を止め、部屋に戻ろうとしたが、壁が崩れて道が塞がれてしまったため、断念せざるをえなかった。


「やばいわよ、アレス君」


 廊下を駆け抜けながら、リエリは話し掛けた。その表情はいつになく緊迫感に満ちている。


「あれが何か知っているんですか?」


「実物を見るのは私も初めてだけど、あれはエルガ七十二魔王の一人、爬虫王ヴァラクよ。まさか聖堂会の支部長が魔王召喚方法を知る者だったなんて夢にも思わなかったけど、それ以上に驚いたのは、あんなに容易く魔王を召喚したことね。ヴァラクの召喚要件って一体――」


「危ない!」


 アレスはリエリに飛びつき、体ごと前に押し出した。


 背後では、轟音を立てて崩れてきた天井が土煙を上げている。


「ありがとう、アレス君」


「とにかく今はここを出ましょう。後のことはそれからで」

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