傷痕の花
一昨日できた膝のかすり傷が
知らぬ間にかさぶたになっていた
細菌が入らないように
痛い傷を見せないように
誰にも見つからないように
血小板やらで覆われていた
ああ
傷痕は見せないのが正しいのか
痛いところは隠すのが正解なのか
じゃあこの胸の痛みも
誰にも気づかれないように
分厚いかさぶたで覆ってしまおう
かさぶたは掻き毟られて
剥がれて血が出た
なかなか止まらなかった
痛かった
自分で取ったくせに痛かった
溢れ出る鮮やかな赤は
秘めた痛みを晒すように
皆の目に触れた
隠さなきゃ
覆わなきゃ
嫌われないように
独りにならないように
両手で傷痕を隠した
それでも
指の隙間から見えてしまうから
しゃがみこんで膝を抱えて
前かがみになって隠した
見ないで
僕の傷を見ないで
この血が止まったら
この傷痕が治ったら
ちゃんと笑うから
なんともないように
話をするから
「これ、あげる。」
俯いたまま視線だけを向ける
差し出されていたのは
ひとつの絆創膏
花柄のかわいいやつだった
「お気に入りの、かわいいのだから。
あなたの傷もきっとすぐきれいになるよ。」
君は僕の傷痕を見て
痛そうにその顔を歪めた
それだけだった
独りになんかしなかった
離れたりなんかしなかった
僕の膝に咲いた花は
血と同じ赤色
それでも痛みはなくて
むしろやさしい色だった
僕を彩ってくれるような赤だった
「ありがとう。」
捻り出した言葉には
いろいろな意味を込めた
君には多分
絆創膏をくれた感謝しか
受け取られていないだろう
いつの間にか
枯れた花びらが地面に散るように
剥がれ落ちたかさぶた
血は止まっていた
膝には痕が残っているけれど
痛みはもうなかった
この痕はどうしようか
また隠してしまおうか
いいや
痛くない傷痕は
きっと僕と同じだから
このままにしておこうか
ご覧いただきありがとうございました。
傷痕は隠していたいけれど。
誰かに届きますように。




