空白を嫌う世界
この世界は、広いようで狭い。
生き物たちは、空いた場所を見つけるたびに、そこを占拠する。
廃墟になった建物には、すぐに蜘蛛の巣が張る。
枯れた木には虫が、電線には鳥が、池には魚が、
そして空き家には、人が――いや、泥棒が入り込む。
どうやらこの世界には、“空っぽ”を検知するセンサーがあるらしい。
何もない場所は、たちまち埋め尽くされていく。
まるで虚無そのものを嫌う、目に見えない意思が働いているかのように。
けれど、埋め尽くされたあとの世界はどうだろう。
余白のないノートのように、居心地が悪くならないだろうか。
どこもかしこも誰かのもので、
心の片隅にさえ「立ち入り禁止」の札が立っている。
私たちは、空虚を恐れすぎてはいないか。
何かで満たさないと、落ち着かない。
モノで、情報で、あるいは人で。
だが、埋めることに夢中になるほど、
本当に必要な空間が見えなくなっていく。
もしかすると、“空っぽ”とは、最も贅沢な余白なのかもしれない。
その余白を生き物たちは本能的に探し出し、見つけるやいなや占領して、束の間の安らぎを得る。だが、その瞬間に余白は消えてしまう。
それでもまた、探し、埋め、失い、そして求める。
その無限の往復こそが、生きるということなのかもしれない。




