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つないでゆくもの  作者: ぽんこつ


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帰還

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


舞は長い長い峠の坂道を登り切った。

左には細い山道が伸び、岬へ通じる右手には、横棒の一本少ない鳥居があった。

それをくぐり進む。

少し勾配がついた道は、尾根伝いに続いていた。

視線の先には海の間に砂浜の道。

その奥には小さな島。

周りの木々は背が低く辺りが見渡せる。

かすかに聞こえる潮騒の音に耳を澄ませば、この世界に自分しかいない。

そんな独り占めの景色を眺めた。

空に浮かぶいろんな形をした雲。

その縁が鮮やかに夕焼けに染められて輝いている。

輝いていると言えば……

振り返って麻霧山の西龍寺がある辺りを見る。

やはり一点が光っている。

何だろう?

鏡みたいなものがあるのかな?


「よし、もう一息」

岬へと緩やかに下っている道を歩き出した。

砂浜まで降りて来ると、潮の香りを含んだ風が鼻先をかすめる。

「あんな所に島なんてあったけ?」

そんな呟きを連れて、砂浜の道を進む。

「きれい」

零れ落ちた声と共に、海は黄金色に染まり始めている。

そして、両側から波が打ち寄せている砂浜の道をゆっくりと歩く。

左右の波のリズムは異なり、途切れることなくない響きが、まるで海の中に身を置いたようで心地よい。

小島の手前にある鳥居も、先程の物と同じで横棒の一本少ない鳥居だった。

島へと伸びる道の脇には、木で作られた棒に朽ちかけた銅鐸がつるされている。

「本物だ……」

近寄って見てみる。

側面に、二匹の龍が彫られていて、上下に体をくねらせて正面と思われる位置に龍の顔がきていた。

下から中を覗き込むと空洞で、その真下の地面に中にあったと思われる紐の付いた銅製の球体の物体が落ちていた。

「鳴らしてみようかな」

舞は球体を手に取り、誰もいないと分かっていながらも、辺りの様子を窺った。

そして、銅鐸の空洞部分に下から手を入れる。

中から銅鐸を叩いてみた。

ブワーン。

という聞いたことのない音が震えた。

ばさばさ。

島にいた鳥たちが一斉に飛び立った。

「あぁ、ごめん……」

球体を元あった地面に置き。

大岩の傍に行って、そこに寄りかかる様に座った。

正面には麻霧山がある。

先ほどまでの光はなく整然と佇んでいる。


「香さん、来たよ」

その時、背後から、複数の足音と笑い声が近づいてきた。

手を繋いだ女の子二人。

駆け足で舞の横を通り過ぎると、少し進んだ所で振り返った。

その動作は鏡に映っているかのように、お互いに乱れないものだった。

白い着物を着た女の子は舞を見てニコッと笑う。

「舞ちゃん、みーつけた」

何で名前を知っているの?

純粋な疑問が湧く。

「え?」

「あんたが舞ちゃんか」

朱い着物の女の子も笑っている。

「え?」

舞は訳が分からずに二人を交互に見る。

白い着物の子はおかっぱ頭で、朱い着物の子は腰まである長い髪をしている。

「私はユナ、よろしくね」

白い着物の女の子が言った。

「私はユキだ」

朱い着物の女の子は言った。

「あ、はい」

舞は呆然としながらもそう答えるのが精いっぱいだった。

二人は舞の傍に来ると、左にユキ、右ユナが座り、自分の手を取り繋いできた。

「あの、ユナさんとユキさん?」

舞は、二人の顔を交互に見ながら聞いた。

「そうだよ、私はこの島を護っている」

ユナが答えた。

「え?」

「この島には結界が張ってあるから、外からは入れないし中からも出れないんだ」

「結界……」

ユキの言葉に、舞は確信する。

ここが結界の中だと。

「そう、結界やな」

「私たちも、この島から出れないの」

「え?」

ユナとユキは舞の前に顔を突き出して互いの顔を見て笑っている。

そしてユナが語りだした。

「このユナキ島はね、昔々のお話があるの」

ユキが続けた。

「このユナキ島は、昔々のお話があるんや」

「どんなお話?」

二人は舞を見て微笑んだ。

「昔々のお話、この島に二人の姉妹が住んでいました。その二人はとても仲が良く、いつも一緒に遊んで暮らしていました。ところがある日突然、一人がいなくなりもう一人も姿を消しました。島中を探しましたが見つかりませんでした」

「……」

「その姉妹の名前はユナとユキ」

舞はドキッとした。

そして、二人はまた顔を見合わせて言った。

「二人はお空の上の上にいる神様に会いました」

「神様は、その姉妹に言いました。『二人でここを守るのじゃ』」

ユナが続けた。

「『二人でユナキ島を守っていくのだよ』」

ユキも続いた。

「『どんな時も二人一緒じゃよ』」

二人は舞の手を握りながら微笑んでいる。そしてユナが舞の目を見つめて言った。

「だから私たちはいつも一緒なんだよ」

「そう、二人でこの島を護ってるねん」

「二人一緒なら怖くないでしょ」

二人は舞の手を自分の頭に持っていった。

意味が分からず二人の頭に手を乗せると二人はニコニコしている。

舞もつられて笑っていた。

しばらく笑っていると、ユナとユキは突然、舞の頬にキスをした。

そして二人は立ち上がり手を繋ぐと舞の正面に立ち、

「もうユナキ島を出る時間だね」

二人は声を揃えて言った。

「え?」

そして、ユナが振り返り指を差す、

「舞ちゃんを呼んでいる人があそこにいるよ」

舞はユナが指さした方を見たが誰もない。

「あんたもええ人や」

ユキがそう言うと、二人は手を繋いだまま歩きだした。

舞は立ち上がり、その後ろを付いていく。

するとユナとユキはこちらに振り返り手を振った。

目の前が急に明るくなったと思うと視界が白くなり何も見えなくなる。

――しばらくして目を開けると、目の前に白いワンピースにサンダルを履いている女性が立っていた。


「香さん?」

その声に香がハッとして振り向くと、ポニーテールの女性が立っている。

「舞……さん?」

女性は笑いながら、何度も頷いている。

香は思わず舞に駆け寄り、香は嬉しくて舞の手を取っていた。

「舞さん、良かった……」

「ありがとう、香さん」

舞は香の手を両手で包むと胸の前まで持ち上げて、

「優しい巫女さん、ありがとう」

額をその手に付けた。

「あぁ、舞さん……それは、内緒です」

「もちろん」

顔を上げて笑う舞を見ていると、香も自然と微笑んでいた。

「舞さん帰ろう」

香は舞の手を握ったまま祈ると白い光が周囲を包みパーッと広がった。

微かに波の音が聞こえる。

目を開くとお地蔵さまが見えた。

「香?」

「大丈夫ですか?」

美樹と啓助の声だ。

「ん?……あれ? 舞さん? 舞さんは?」

立ち上がり二人の顔を交互に見ると二人とも笑っている。

「香さん」

その声の方を見ると舞が笑顔で佇んでいた。

「ありがとう、ほんとうにありがとう」

啓助が自分の手を取って深々と頭を下げながら膝から崩れ落ちた。

「大丈夫?」

美樹が心配そうに近寄って来る。

「もう、お兄ちゃんは……」

舞も近寄って来て、こっちに向かって会釈をする。

「お兄ちゃんごめんね……ありがとう」

啓助の傍にしゃがんで抱き着いていた。

「舞……良かった……」

啓助は涙を零しながら舞を抱きしめている。

香は、そんな二人を見て安堵感に包まれ胸を撫で下ろした。

「香、すごい……すごいや、頑張ったね」

美樹が優しく抱き着いてきた。

「ううん、みんなのお陰だよ、美樹もありがとう」

香は美樹に頭をくっつけて抱き締めた。

夕陽は沈みかけ夜の帳が降りてきている。鮮やかなグラデーションが描かれた空の下この光景を見ている人物が二人いた。


啓助は舞の手を取ってゆっくり立ち上がると舞の顔を見た。

涙目ではにかんでいる舞の姿が確かにあった。

「怪我とかしてないか、調子悪くないか?」

「うん、全然平気だよ」

笑って見せる舞の服には所々、土で汚れた後が着いている。

「そうか、よかった」

啓助は香と美樹の方を向いて深々と頭を下げた。

「二人ともありがとう」

「ありがとうございました」

隣で舞も一緒に頭を下げている。

「そんな、お礼なんて、私も舞さんを助けられて嬉しいです」

香は胸の前で小さく手を振り微笑んだ。

「ほんまに、よかった」

美樹は涙を拭いている。

そして啓助がお地蔵さんに手を合わせると、三人もそれに倣った。

何がどうなったのか啓助に分からない。

ただ、香や美樹。

二人の少女。

龍応に眼鏡や達磨。

健太郎に彩也に絵美。

携わってくれた皆に感謝していた。

「じゃあ、行きましょうか」

啓助が声を掛けて、大岩を後にする。

防波堤の突端の小さな灯台にはすでに明かりが灯っていて、瀬田港や町並みの光が水面を照らしいた。

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