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つないでゆくもの  作者: ぽんこつ


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慣れない朝

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


鏡の前で前髪を横に流し美樹に貰った髪留めを付ける。

そうだ、美樹に昨日の出来事を話さなくちゃね。

それと謝らないと……

朝食の時、母から今日の14時に西龍寺に一緒に行くから真っ直ぐ買えるようにと言われた。

ご住職の立会いのもとで舞との会話を試みる事になったみたい。

そして母の代わりに、住職が啓助と会って事情を伝えることを聞いた。

何でも、住職も啓助と舞に会ったいたのだそうだ。

世間は狭いというのはこういう事なんだなと思った。

机の上の家族写真に、

「行ってきます」

そう告げると一階へ降りた。

「母さん行ってくる」

「気いつけて、行ってらっしゃい」

台所からの母の大きな声を聞いて、

「行ってきます」

香はそう言って玄関を開けた。

あれ?

いつも階段に座って待っている美樹の姿がなかった。

「美樹?」

思わず声に出した。

階段を降り家の門を出て、左右を見渡しても美樹の姿はなかった。

「どうしたんかな?」

香は一人歩き出す。

日差しが眩しく夏も本格的になってきたようだ。

近所の人達とすれ違い挨拶を交わしながら通学路を歩く。

普段と変わらない風景。

ただ違うのは隣に美樹がいないこと。

何気なく左隣を見てしまう。

スマホを取り出して確認しても、美樹からのメッセージはなかった。

『おはよう、どうしたん?寝坊でもした?』

メッセージを送り、そのままスマホを手に持って歩いた。

ふと立ち止まり振り返る。

「あれ?」

後を歩いている筈の真一郎の姿もなかった。


首を捻りながら歩き出すと、

「おはようございまーす」

自転車通学の万葉が香を追い越しながら手を挙げて挨拶をする。

「あ、おはよう」

挨拶を返し、真一郎にもメッセージを送ってみる。

『おはよう、昨日はありがとう、今朝は寝坊でもしたん?』

サーッと風を残して自転車に乗った嘉陽理央かよう りおが追い越していった。

理央はブレーキをかけると自転車から降りて話しかけてきた。

「おはよう、香」

「理央、おはよう」

「美樹は?」

「うん、先に行ったのかも」

「そうなんや、珍しいなあ、そうそう、昨日の神舞、二人とも綺麗やったよ」

「照れるやん」

「何かこう、うるうるきた」

理央は胸を手で押さえ目を閉じている。

「ありがとう、理央」

「そしたら、ん? なんか元気ない?」

理央は自転車に跨りながら首を傾げている。

「そうかな……」

「なんかあったら言ってよ、私で良ければ相談に乗るからね」

「ありがとう」

理央はピースを頬に当て微笑むと自転車を漕ぎ始めた。

美樹に電話を掛けてみたが虚しくコール音が響くだけであった。

「美樹……」

スマホをポケットの中に仕舞い歩き出した。

美樹がいないとやっぱり寂しいな……

そんな事を思いながら、ふと空を見上げた。

真っ青な空に、ふんわりとした白い雲が浮かんでいた。

そして太陽はギラギラと輝いている。

「今日も暑くなるんかな……」

香は手をかざしながら呟いた。


校門を抜けると、校庭では運動部が朝練の後片付けをしている。

「今日も暑なるなぁ」

サッカー部の男子達が通り過ぎて行く。

下駄箱で靴を履き替えていると加奈が声をかけてきた。

「香、おっはよう」

「おはよう、加奈」

香は軽く手をあげる。

加奈は下駄箱のところで靴を履き替えながら話始めた。

「美樹、一緒じゃないの?」

「うん」

「珍しいね」

「うん……」

「なんかあった?」

加奈は香の顔を覗き込んだ、そして少し考えてから言った。

「もしかして……美樹と喧嘩したん?」

香は首を横に振った。

「それはないか」

加奈は笑って香の背中を軽く叩いた。

加奈と一緒に階段を上がり教室へ入る。

美樹の後ろの自分の席に着くと鞄を机横のフックに掛けた。

「おはよ」

クラスメートが次々に挨拶してくる。

同じ列の一番後ろの席の真一郎も来ていない。

どうしたんだろう……

一抹の不安がよぎる。

「おいおい、みんなこれ見たか?」

万葉が新聞を片手に騒いでいる。

そして美樹の席に座り、

「あれ、美樹おらんやん」

そう言いながら万葉は香の机に新聞を広げた。

一面に昨日の神舞の写真が大きく載っているのが見えた。

写真の周りにはきれいにデザインされた文字が躍っていて。

見出しは『神舞の美女姉妹』と書かれていた。

加奈や朱里も寄ってきて人の輪ができる。

「テレビのニュースでもやってたで」

「二人とも綺麗やったもんな」

「踊ってる時なんて、全然ずれんの……凄かった、俺感動したもん」

各々がそれぞれに感想を言っている。


キーンコーンカーンコーン。

チャイムが鳴ると、ぞろぞろとみんな席に戻っていった。

バタバタと廊下を駆ける足音がして――

チャイムの音が終わりかけたとき、美樹が教室に駆け込んできた。

少し遅れて真一郎も。

美樹は香の前にきて息を整えると、

「おはようさん」

いつものように笑って見せた。

「おはよう」

そう返した香の目に映る美樹が少しだけ、滲んでいた。

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