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つないでゆくもの  作者: ぽんこつ


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洞窟の中

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



若い男の見つめる先。

ノートパソコンに映し出されている赤く光る点は、八十八ヶ所中すでに八十七ヶ所まで増えていた。

「よくもまあ、至る所に洞窟があるものだ」

男は半ば呆れていった。背後ではまだ滝の音が聞こえている。

「どこまで続くんだ」

男は目の前に広がる闇を見つめる。

後ろに続く若い男。

「先の結界とは関係はないかもしれないですが、ここも怪しいポイントの一つではありますから……」

「しかし狭いな……」

男は頭が付きそうな天井を手で触りながら進んだ。

「二股の分かれ道か」

男はライトを照らして先を確認した。

「左の方に行ってみよう……足元を照らすから気を付けて」

二人は左の道に歩を進めた。

10分ほどで広い空間に突き当たる。

奥の壁の中央には小さな祠があった。

「着いたのか?」

男は祠に近付き、中を覗き込んだ。

中には色は辛うじて色が判別できる、白と赤の石像が安置されていた。

白の石像は右手を赤の石像は左手を前に出しているように見える。

石像の足元の回りには、さらに小さな石像が五体。

二体の石像を囲うように置かれている。

「何なんだこれは……」

男は顎に手を当てた。

「何か意味があるのかも……見てくださいこの石像、仏像のようじゃないですか?」

若い男はライトで照らした。

二人は祠の周りを調べたが何も見つからない。

「どうやら、無駄足だったようだな……」

「そうでもないですよ」

若い男は祠の前にしゃがみ込み手を合わせた。

「この祠……いつ頃からあるのですかね」

「どうだろう……最近作られたものにも見えなくはないか……」

「でも、明らかに何かの意図を感じませんか?」

「うーむ。しかし、関係があるのか?」

「分かりません」


二人は来た道を分かれ道まで戻った。

そして右の道へ歩を進む。

進んだ先で、明らかに人為的掘られたような穴はまた二手に分かれている。

「また分かれ道か」

「どちらに行きましょう?」

「右にしてみよう」

男が先に進む。

「あれ? 行き止まりですよ」

若い男は壁に手をついた。

「おかしいな……」

男はライトで壁を照らすが、石や土で出来た壁だった。

「ん?」

男は壁の一点にライトを当てた時、何かに気付いたように声を出した。

「どうしたんですか?」

「これは……」

壁の下のほうに穴が開いていた。

若い男がしゃがんで穴を覗く。

奥へと道が続いているようだ。

地面には擦ったような跡がある。

「行けそうですが……」

「どうした?」

「いや、行ってみましょう」

若い男はう四つん這いになり穴へ入る。

「おい、大丈夫か?」

「はい、行けそうです」

男は穴をライトで照らしていた。

若い男はそのライトの明かりを頼りに奥へと進んだ。

「これは……」

目の前に現れたものは石でできた横穴だった。

高さは2メートル程、幅も1メートルほどで人が通れるほどの幅しかない。

若い男は立ち上がり、

「まだ先があるようです、来てください」

男を呼んだ。


「ここからは、歩けるか」

男は顔を上げ、立ち上がった。

「この先に何かあるかもしれない」

しばらく進むと広い空間に出た。

その空間には無数の穴が開いており、鍾乳石が天井に伸びていて神秘的な光景であった。

「なんだここは……」

男は驚愕した。

「鍾乳洞ですよ……無数の穴はここから地下水が湧き出ているんです」

「そうなのか……」

辺りをライトで照らすと一角にこの空間とは明らかに異質な扉があった。

「あそこを見てください」

「扉?」

地面は濡れて滑りやすい。

「滑るぞ、気をつけよう」

男は足元をライトで照らす。

「鉄製か?」

扉は変色しているのか辺りの岩と同様に白みがかっている。

触れるとひんやりと冷たい。

「いや、分かりません」

「ドアノブや溝もないな……」

「どうするんです?」

「まあ、見てな……」

ドン!

男は扉の下部を足で蹴った。

しかし扉はビクともしない。

「これは、無理か」

男はライトで扉を照らす。

扉の中央に窪みがあった。

「ここに何かをはめるのか?」

男は窪みにライトを当てて覗き込む。

窪みの周りには紋様が施されている。

「お手上げか……」

男は呟いた。


若い男の方は扉を離れ周囲を調べ始めた。

「こっちに、階段があります」

「今度は階段か」

男は若い男に近寄る。

ライトの灯りに照らし出された階段は下へと闇を広がていた。

「行ってみよう」

男は降りて行った。

若い男は後に続きながら、

「先客がいるかもしれません」

小声で言った。

前を行く男は振り返る。

「どういう事だ」

「この階段に足跡があります、行き返り両方ですが……それと先ほどの穴に擦ったような跡がありました」

男は足元を照らす。

かすかにその跡が浮かぶ上がる。

「俺たち以外にも、いるってことか?」

「ええ」

「とりあえず、先に行こう」

階段を下りた先には石室のような空間になっていた。

壁やニ本ある柱には見たこともない紋様が施されている。

ライトを四方に当てて見ると床や天井にも紋様があった。

そして奥の壁には扉と思しきものが壁と一体になって固く閉ざされていた。

「ここに何かが隠されているのか?」

男は恐る恐る扉に触れる。

その扉はまるで冷気を帯びたようにひんやりとしている。

押してみるが、びくともしない。

扉にも奇妙な紋様が刻まれていた。

「とりあえず、この部屋を調べてみましょう……」

若い男はライトを照らしながら壁や天井、床を見て回る。

幾何学的な紋様、波打ったような紋様が一面に施されていた。

「何もないな」

男は首を傾げる。

「そうみたいですね……」

若い男は答えると扉を調べた。

鍾乳洞の空間にあったものと似ているが紋様が刻まれているだけで窪みすらない。

「開かないか……」

若い男は呟く。

「どうする?」

若い男は少し考えた後、口を開く。

「さっきの場所に戻りましょう」

二人は鍾乳洞の空間に戻った。

ここの扉も固く閉ざされたままだった。

「やはり開かないか」

「どうします?」

若い男の問いに、男は少し考えてから答えた。

「他の道も調べてみよう……何か分かるかもしれない」

二人は来た道を戻り。

分かれ道で調べていない道を進んだが、その先は行き止まりだった。

仕方なく二人は入口へと戻った。

洞窟を出て滝の近くの岩場を慎重に歩き一息できる空間に出ると、二人は岩場に腰を下ろし水分を摂った。

月明かりのお陰で互いの顔は見える。

その顔には疲労感が滲み出ていた。

タオルで汗を拭うと男は問いかけた。

「ここは、後回しにしてもいいんじゃないか」

「ええ、現段階では……ただ、私たち以外にも秘密を探っている輩がいるのは気になります」

「確かに……」

「昨日の神社の紋様。先にあの謎を解きましょう」

「そうだな」

二人の男は立ち上がり森の中に消えていった。

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