84プ◯ウ◯に乗ってた人
「危ないッ!」
道路脇でタクシーに向かい片手を上げていた里奈は誰かの叫び声を聞いた。
「え?」
驚いて振り返った彼女の眼の前に急に現れたのは、大きな高級車のフロントガラスの向こうに見える驚いた男の顔で。
――え、マジであの車ってミサイルなの?
そんな間の抜けた想いが頭に浮かんだ。
――あ~ 郁ちゃんにゲームの攻略本貸す約束してたのに。
ゴメン無理みたい。
あ、そうだ広田先生に好きって言っとけば良かったなぁ・・・
お父さんお母さん、ごめんね先に死んじゃって――
スローモーションみたいに車が近づいてきて―― 眼の前が真っ暗になった。
「・・・おい」
「う~・・・」
「おい、大丈夫か?」
「ねえ、どっちなのかしら?」
「分からん。
同時に二人共が意識を失ったからな」
『僕にも分かんな~い。
こんな事初めてだからさぁ』
「マジかよ~」
遠くで誰かが話してるけど聞き覚えがあるような無いような・・・
「誰ですか?」
「あ、気が付いた」
目を開けたら、ベリーピンクの髪色をした青紫の瞳をした綺麗な女の子が心配そうな顔をしているのが見えた。
「え? ソフィアたん? 嘘?」
眼の前にゲーム画面でしか見たことのない最推しの悪役令嬢ソフィア・レイド・グレーンがいた。
「あ、ソフィアたんキタ」
「上手くいったようだな」
このイケボのプラチナブロンドはシルファ王子。
「スゲエ。
やっぱりコイツも強運だなぁ」
このフザけた口調の黒髪の人はアジェスだ。
目だけを動かして周りを見回すと、見慣れない白い天井に直ぐ近くで聞いたことのない様な機械音。
消毒液と病院独特の冷たいような匂いが混ざっている。
「ごめんね。
完全に怪我を治しちゃうとこっちの世界のお医者さん達に疑われちゃうから、痛みを出来るだけ感じないようにしてあるからね」
あ、そうか! そうだった。
私は一回死んじゃったんだっけ。
それで異世界転生したけど、リーナと里奈に別れちゃってリーナが自分の身体に戻れなくなっちゃったから、私の魂の方を元の身体に戻す計画だったんだっけ! 忘れてた?
思い出した!
「時々こっそりお見舞いに来て傷が残らないように治すから。
今は我慢してね」
「うん。大丈夫。
私の体どうなってるのかな?」
ウ~ン全く体が動かないや。
「治癒魔法で一気に直したいんだけどそれじゃ辻褄が合わなくなるから、内臓損傷だけは全部治してあるよ。
両足の大腿部骨の骨折がいちばん酷いわ。
他もあちこち折れてたけど頭蓋骨と背骨と首だけはしっかり直しといた」
――器用だなソフィアたん!? それほぼ死んでるよね?
あ、当たり前か。
私一回死んでるんだもんね。
「今何時?」
「真夜中の3時だけど集中治療室だから誰もいないよ。
もうすぐ巡回の看護師が来ると思う」
ソフィアたんの後ろで心配そうな顔のアジェスと片眉を上げただけで表情のないシルファ王子が立ってるのが見える。
「リーナは?」
「身体は辺境伯邸の私の部屋に運んだわ。
車がぶつかる直前にポチから彼女の意識体が飛び出して里奈ちゃんに飛び込んだみたいに見えたんだけど、同時にリーナの身体の方も気絶したのよ」
「どういう事? ポチにも分かんないの?」
黒い丸い靄がぷるぷると震えた。
『僕にも分かんない。
意識体を肉体に戻す事自体が初めてだからサ』
頼りになんない魔人だなぁ・・・
「時々治しに来るね」
「うん。
ありがとう」
返事をしたらきれいな笑顔をふわりと見せた後、皆んな一緒に転移魔法で消えてしまった。
「さてと」
この後が大変だよ。
大怪我で受験大失敗だもんね~
でも生きてるだけ有り難いよね?
魔法は使えない世界だけど魔物いないから危なくないし。
両親にも郁ちゃんにも又会えるし、スタンさんじゃなくて本物の広田先生にも会えるもんね。
がんばろっと!
でもあのプ◯ウス運転してた人誰だったんだろ?
病院代ちゃんと払ってくれるかな?




