83電気メーカー展示会
「ふ~ん。
こんな風に展示するんだな~。
面白いな」
浅黒い肌をした黒髪のワイルド系イケメンが流暢な日本語で隣の髪色がピンク色の北欧系? の女の子に話しかけた。
この女の子もテレビから飛び出してきたんじゃないかというくらいの美少女だ。
「そうね、どの会社も今年の新製品を目玉商品として並べるけど、ここにあるのは全部見本なのよ」
こちらも綺麗な日本語を喋るので、思わず二度見する係員達。
「見本ばかりでは買えないのではないか?」
見事なプラチナブロンドの映画俳優みたいな極上のイケメンが空色の目を細めて、目の前の巨大なテレビ画面を睨みながら首を傾げる。
その顔を見続けるために一緒になって首を傾げそうになるのを理性で押し止めるコンパニオン達。
「大丈夫よ。
予約制なの」
「え、じゃあ最新機器って予約以外には買えないんですか?」
豪奢な金髪に不思議な赤っぽい目の色をした女の子が驚いたように振り返り、目玉が落ちるんじゃないかというくらいには目を見開いた。
こっちの子も目を引く美人だ。
「ううん、そんな事無いよ。
誰よりも早く手に入れられるってだけで、半年くらい待ったら店頭に並ぶわ」
・・・ この4人、美形なのはいいんだけど、案内しなくて良いのかしら?
でも私達の説明全然要らないじゃないの?!
どうすればいいの?
×××
ここは大手家電メーカーの合同展示会場だ。
小売店舗の招待客がメインだが、メーカーのファンで興味があるという人や、通りすがりの人でも入場口で名前さえ記入すれば気軽に入れる。
そんな場所にソフィア達一行が平気な顔で入場し、展示ブースにやって来て様々な展示品を眺めたり触ったりしているが、芸能人かコスプレイヤーのようにやたらとキラキラしている彼らを遠巻きにする入場客と係員達。
招待客の場合は招待したメーカー絡みの店舗社員が案内するが、知り合いなんかいない異世界の御一行様なので説明は主に元大手家電メーカー企業の研究員だったソフィアである。
しかも眼の前の家電に関する知識がやたら専門的なので、メーカーから派遣されているコンパニオン達は遠巻きにして近寄らない。
下手に質問されたくないからである。
もし間違った説明なんかしようものならメーカーの恥になりかねないと、尻込みしているのだ。
勇気を出して声を掛けた男性社員もいたが、求められた説明が専門的すぎて笑顔が固まり『ごゆっくりご覧ください』と、即時退場になった。
「ソフィアの居た企業はどれだ?」
「ここ」
「ふ~ん。
でっかいテレビだな」
「コレ置くために家を買い替えなきゃ駄目ですね。
首が痛くなるんじゃないですかね?」
「そ~ねー。
日本家屋向きじゃないわよね。
何考えてるんだか」
「城なら大丈夫だな」
「陛下の寝室に置くといいんじゃない?
きっと伯母様が喜ぶわよ」
会話が異次元である。
「この紋章がメーカーとやらのロゴマークか?」
「そうなの。
会社のビルの屋上にデカデカと同じマークの彫刻と会長の銅像が置いてあって、その横にでかい野外テレビが据えてあるのよねー」
ニッコリと美少女が微笑んだ。
「良い目印でしょう?」
「ああ。覚えたな」
「おう」
「あ、私は知ってますから大丈夫ですよ」
4人は愉しそうに笑っていたが、
「そろそろ行こうか」
そう言って会場を後にする為にエレベーターに乗り込んで行くのを周りの客やコンパニオン、電機機器メーカーの社員達は呆けた顔で見送った。
「あれ、乙女ゲームのコスプレ?
それとも本当にゲームの中から出てきたのかしら?」
誰かがボソリと呟いた――
「なあ、帰ったら同じもの魔法で作れるかな?」
「テレビ局がないと意味ないじゃん。
テレビ番組見れないわよ」
「ブルーレイで映画でいいんじゃないか?」
「画面だけ作って、ゲーム機とゲームを持って帰ったらいいんじゃないですか?」
突然丸い靄が彼らのそばに現れ
『時間だよ~』
というポチの声がする。
エレベーターが1階で止まりドアが開いたが、4人の姿はそこにはなかった。
産業ビルのガラスの自動ドアの向こうで雪が静かに降っていた――




