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81我が人生に悔いは無し?




 『えー駄目だよーう。


 だってお隣さんの箱庭だもん。


 僕のじゃないからサ~』


「そこをなんとかしろ」


『エエ~。


 この人ホントに人類? ねえ魔人じゃないの?


 んにゃ魔王?』


『魔王かも。


 でもぉ、いい手かもしれないわよ』


「ウルサイ。


 二人で交渉してこい」


『『こわ~い!!』』




 ×××




 ある晴れた日の昼下がり。


 辺境伯邸の中庭でお茶をしようと用意をさせていると、庭の隅でシルファとポチがひそひそ話をしているのが目に入った。



「ねえ、シル?


 ポチもどうしたの?」


「ああ、なんでも無いよ。


 すぐ行くから」



 シルファが極上の王子様スマイルでこっちを向いた。



「・・・」



 彼のこの笑顔を私が平気で受け流しているとみ~んな思ってるけど、そんな事無いからねッ。



 学園に入学してからこっち、色気が増し増しになってきてさ~ 誤魔化すのも苦労してるんだよ。


 王太子妃教育の賜物で我慢できるだけなんだからねッ!


 それとなッが~い間幼馴染みポジでいたから、急に自分が変わるのが恥ずかしくて平気なフリしてるんだからさ~。


 もうその顔急にするのやめてくんないかな―― 鼻血出そうで困るがちや!




 ×××




 「え?


 隣の箱庭に行くって、前世の時に居た地球ってこと?」


「そうだ。


 肉体の移送だと時間制限はあるが行けるそうだ。


 元々あちらとこちらの『箱庭』は環境が似てるらしいからな」



 シルファは手元の珈琲をブラックのまま口元に運んだ。



「どうして?」


「うん?


 ポチの中にいる平民の魔術師の身体をどうにかしないといけないからっていうのもあるが」



 ポチだけなら従魔として側にいるのを許してもいいが、ソフィアに暴言を吐いたリーナが一緒なのは非常に気に食わないシルファは眉を寄せた。



「が?」


「お前は前世でやり残した事があるんじゃないか?」


「? そうなの?


 自分じゃ分かんないわ?」


「・・・ そうか」



 首を傾げるソフィアに向かって片眉を上げるシルファ王子。



「?」


「そうか、なんの未練も無いのか」


「そう言われるとあるような無いような・・・


 でも小さい時から生まれ変わりを自覚してたからなぁ。


 散々反省はしてきたから」


「反省?」


「うん。


 ちゃんと睡眠は取って食事も摂って、休憩は十分取って、イライラせずに、完璧を求めずに物事を適当に手を抜く・・・」



 ソフィアが一つ一つ指を折りながら口にする内容を聞いていたシルファの片眉が上がる。



「全部普通のことじゃないか?」


「それが出来てなかったから死んじゃったんだってば。


 後は~、契約書を交わす時はちゃんと確認して、慌ててサインしない!」



 ――まるで詐欺の手口に引っ掛からない心得みたいだ――



「そうか」



 急に彼の手が、ソフィアの頭に伸びてきてポンポンと軽く撫でた。



「?? 何?」


「・・・」


 

 庭を散歩しながら魔石結晶を庭中にばら撒いていたチャッピーが、無言で彼女の頭を撫でるシルファとニコニコ笑うソフィアを振り返った。



(あるじ)ポチが帰ってきたぞ』


「え? ポチとリーナさんどっか行ってたの?」



 リーナ本体から離れたままの元リーナの意識は何度か身体に戻そうと試みたが、ことごとく失敗し相変わらず自我を持ったままポチと行動を共にしている。


 このままではいずれは消えてしまうのが普通だとポチは言うが、リーナの自我は中々強固なので実の所彼の方も消えそうにないと内心は思っているらしい――


 

『ただいま~』


 

 ソフィア達の直ぐ横の空間から、ニュッと黒い靄が現れた。



「わわッ」



 どうも魔人の動きは転移魔法と違い、空間魔法で物を取り出す時に似ているため妙に馴れないソフィア。



『権利もぎ取ってきたよ~』


『マジでホンっとに頑張ったわよ!』


「え? 何の権力?」


「時間指定で隣の箱庭に紛れ込む権利だ」



 事も無げにシルファがそう言って飲み終わったカップをテーブルに置き長い足を組んだ。



 プラチナブロンドが日差しを受けてキラキラ輝いていた――





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