74幽霊みたいな存在〜元リーナ視点②〜
王子本人の意志を無視して王家の決めた政略婚の為の婚約者より私のほうが王子の近くに常にいるから、卒業パーティーのエスコートも引き受けてくれたのだと勝手に思い込んでいた。
それが――
「入場するまでのエスコートはしてやっても良いと伝えたが、会場入りした後はすぐに離れるように申し伝えたはずだ。
しかも私の婚約者に向かいぞんざいな口のきき方をする事を誰が貴様に許したのだ?」
そう言って私を見つめる目は、私の夢見ていたような甘やかなものではなく何処までも冷たく凍えるような青い瞳。
「今日が王都で綺羅びやかな世界を愉しむ最後の時間だったからこそ、お前のような図々しい女のエスコートも引き受けてやったがソフィアに対して無礼な口をきくお前など、この場から直ぐに最前線へ送り込んでやる」
微笑んだ美しい顔はまるで悪魔だった。
×××
偶々王子が婚約者をエスコート出来ない状況になってたから引き受けてくれたなんて後で教えて貰った所で、どうしようもないじゃないのッ!
あのクソ近衛と魔術師達ッ!!
そもそもシルファ王子だって先に理由をちゃんと教えなさいよッ!
あーもうッ!!
明日は入団テストだから早く寝ろって?
腹が立って寝られるわけないじゃないッ!
そう思ってたら眼の前に現れた黒い何かに話しかけられたの。
×××
『アンタ、今の自分がいる場所が嫌なんでしょ?
俺と一緒に来る?』
私は一も二もなく頷いたのだ。
こんな辺鄙な土地になんていられる訳無いじゃない。
私は都会の女なのよッ!
――それが、身体を失う事だったなんて知りもしないで――
×××
魔人と名乗った靄みたいな存在と一緒に空に浮いた時、ベッドの上に身体が取り残されたけどちゃんと息をしてたのは確認した。
だからずっと意識がなくなって眠ったままになるんだって勝手に思い込んでた。
あの時闘技場で私を見つけた時、何故私の身体が動いてるのかが疑問だった。
でも嫌な予感がした。
魔人が
『消える予定だった』
と言ったのをほんのさっき聞いたから――
魔力も打ち出される魔法も、そして身体能力も圧倒的に違うあの女に翻弄された魔人が降参した時、
『さっきのリナって子が『小娘』の元の身体なんだろう?』
私と魔人の器になる予定だったスタンという名の男の問いに
「ええ。
ただ、前世の記憶に塗り替えられた魂が今は中に居て動いてます。
本来なら精神体が引っ張り出された時に身体は死んでる筈だったんでしょ?
ということは、今のリーナさんの身体の持ち主は里奈さんじゃないでしょうか?」
あの女がそう言ったのよ。
そしたら魔人の奴悪びれもせずに
『そうだよ』
って――
じゃあ私は死んじゃってるってことじゃない?!
なんで? どうして?
どうしたら生き返るの?
でも私の身体は生きてるのよね?
え?
私ひょっとして幽霊みたいになっちゃったって事?
えぇー・・・・




