69世界最凶決定戦①
ソフィアの美しいカーテシーに目を向けていた魔神は、スッと片手を胸に置くと反対の腕を肩と水平に上げ、片足をクロスさせるように引いて|優雅なお辞儀《Bow and scrape》を披露した。
『丁寧にどうも』
顔をゆっくり上げると、ニヤリと笑い、
『この世界の最強を決めようか?』
そう言ってフワリと宙に浮き上がる。
『ずっと待ってたよ君を』
片手を上げるとその掌の中には『バチッバチッ』と音のする雷の玉が・・・
彼は無言で、ソフィアに向けて投げつけた。
真っ直ぐに周りを照らしながら、進む雷の玉は体に当たると恐らくだが、痺れて数秒は動けなくなる麻痺の魔法だ。
「「「ソフィア(たん)ッ!」」」
彼女の顔が片方の眉を訝しげに上げる、シルファお得意の表情に一瞬なったように見えた。
×××
「先ずは小手調べですか?」
魔人の放った電撃を杖の一振りで打ち戻してしまうソフィア。
ソレに当たった杖の一部が辺りに虹のような7色の光を振り撒き、思わずその場の全員が眩しさで目を閉じる。
それを片手から出した防御障壁で止める魔人は愉しそうに笑う。
『アンタ、マジでスゲエなぁ』
「あら、ありがとうございます」
ニッコリと笑いながらお礼を言うと、ソフィアの杖の周りから次々に氷の巨大なランスが彼を襲い始める。
『おっと属性も関係なしで使えるのか~』
燃え盛る火の盾でそれを防いだ所に問答無用で風の刃を放つソフィア。
口元は何かを唱えている様に見えるが、詠唱しているわけではないようだ。
例のアレである。
「鎌鼬は風属性だから威力を上げるために氷を纏わせて・・・・」
こんな時まで魔法理論の展開をしなくても良いと思うのだが、これがシルファの刷り込みなので仕方がない・・・
×××
障壁の外側で、婚約者であるソフィアと魔人の戦闘を見ているシルファとアジェス。
「あーあ、アイツ本気で殺す気かねえ・・・」
「いや、あれでもかなり手加減してるな。
まだ口元で魔法の理論を呟いてるから冷静だ」
半目で思わずシルファ王子を睨むアジェス。
「おい、それであの攻撃のスピードってなんなんだよ?」
「ソフィアは子供の頃から世界最強の魔法少女を目指してたからな」
「最強じゃ無くて最凶の間違いじゃねーのか?!」
肩を竦めるシルファは冷静に口を開く。
「さあな。
俺にとっては最愛の魔法少女だからどうでもいい事だな」
――あ~、そうですか。
周りの呆れた視線が彼に集まった。
「ソフィアが最凶になるのは独自の呪文を唱え始めた時だ。
その次がそれも面倒になって止めて、」
「「「「「「止めて?」」」」」」
「身体強化した時だな」
・・・それってただの肉弾戦では?
全員が首を傾げたのは言うまでもない・・・
×××
「貴方様を見ていると昔大嫌いだった方達を思い出して嬉しくなりますわ」
『嬉しい?!』
「ええ、あの時の恨みを全部ぶつけても大丈夫そうなので♡」
そう言うソフィアの胸元から電撃を帯びた龍が飛び出していき、魔人に噛みつこうとする。
『え、なになに?
見たこと無い魔法ばっか撃ってこないでよッ!?
しかも無詠唱って何事っ?』
魔人から上がった声はリーナだが、追尾レーザーの様に背の高い男を電気の龍が追い回す。
「そうですか。それでは」
杖を高く掲げて
「divine punishment」
×××
「あ。馬鹿だな。
ソフィアを煽るから、レベルが上がったぞ」
冷静にシルファがそう呟く。
思わず全員が彼の顔を振り返った。
「アレがソフィアの呪文だ短くて的確な上に容赦が無いヤツだな。
まあ、あれでもまだ手加減してるな」
――殿下、いいんですか? ほっといて・・・
誰も口に出来なかった・・・




