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68/120

68では遠慮なく。




 透明な障壁の囲いの向こうで、ベヒモスとレヴィアタンが空中でまるでキックボクシングでもしているように戦っているのがソフィアの目の端に映る。


 魔力で重い体を浮かして建物に被害を与えないように多分シルファ達を含め大勢の魔術師達が配慮してくれたのだろう。



「魔人様は、他者から体も精神も奪って強くなるのなら、御自身が強いわけじゃ無いのでは?」



 ソフィアが彼に向かいそう言うと、魔人は気を悪くした様子もなく微笑んだ。



『それは見解の相違だね。


 だって魔人ってのは元々そういう世界の意識体なんだよ。


 仕方ないでしょ?


 物質界に干渉するなら必要な手順なんだよ。


 でもソレの使い方は誰よりも上手だから心配ないよ?』



 ニタリと男の口角が上がる。



 それがまるで前世で優秀な研究者達を企業の歯車として扱っていた、傲慢な重役連中のいやらしい笑みに重なってソフィアの胃はムカムカする。



「心配なんてしておりませんわ。


 色々なことを思い出して考えてはおりますが」



 右手で握りしめる杖が、眩しいくらいに金色に輝き始め太陽を模した頭頂部の魔石の飾りが虹色に輝き始める。



 ソフィアの魔力の色だ――



 二人はジリジリと距離を取りながら互いの出方を伺い始めた。



「心ゆくまで気の済むまでお付き合い頂きたいですわ」


『?』


「勿論。


 貴方様が精神体だということはよお~く分かりました。


 身体がないからこそ、お分かりになりませんのね?


 ヒトの痛みが。


 でも人じゃないからこそ貴方様は幾分マシですわね。


 彼奴等と違ってね」


『?』


「そうそう魔力酔いって辛いらしいんですのよ?


 幸いワタクシはなったことが御座いませんけれど」



 ソフィアの口角が引き上がった。



「ああ、それと私ってご褒美も頂けないのに社畜の様に働かなければいけない労働環境は好みませんの」


『シャチク?』


「ええ。


 組織に良いように使われて詐欺同然に無茶な仕事をさせられても、それが当たり前になってしまって気付く暇も無いくらい仕事漬けの環境にいる方々の事ですわ」


『?』



 ウフフフフと不敵に笑うソフィア。



「そうそう最後にですけど、自分の都合で人から益を毟り取る泥棒行為もワタクシ好みませんわねえ」



 爆発的に一気に魔力量が上がり、自分で創った魔法の障壁が圧に耐えかね膨れ上がったのが本能でわかる。


 障壁の向こう側にいる魔術師達が慌てふためいているのが目の隅に映った――



「ワタクシ、今まで本気で魔力を出し切った事がございませんの♡


 そうさせて頂ける相手が何処にも存在しなかったということも御座いますけど」



 うふん。と、シナを作るソフィア。



「何よりも本気で()()()()()()お相手がいませんでしたのよ?


 お会いできて僥倖ですわ」



 彼女は美しいお辞儀(カーテシー)をした――





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