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67忘れられない言葉




 研究開発者達に対しては、他社へのヘッドハンティングにも応じないように入社時に弁護士の元で作成された契約書にサインをさせ、例え薄給になったとしても絶対に移籍をさせない仕組みを巧妙に作っていたため皆逃げることもできず泣き寝入りだった。



 告訴しようにも国と繋がった大企業相手では無理な上に、少しでも不満を漏らせばチーム全体に圧力がかかる。



 研究結果や最新技術を売り捌いた利益は一体何処に行くのかは不明だが、ソフィアの所属していた会社は日本でも有数の大企業である事には間違いなく、重役達はその会社の一員である事を誇りだと思えという態度を取るだけ。


 研究室は互いにライバル同士で啀み合い研究結果を盗まれないように必死で守ろうとするがプレゼンした時点で会社がその情報を自分達から取り上げるのだから結局意味はない。


 その一方で重役達は時限爆弾のように一定の時期が来ると不調になる仕組みの機器を喜んで採用し、頑丈で良心的な機器は不採用にして優れた研究結果は海外流出させる事を繰り返した。




 日本企業の研究者の多くは、どちらかと言うとコミュニケーションが苦手な者が多く上に逆らわない者が多いので企業側は彼らの意見を黙殺しやすく、偶に意見を上司や重役に対して発言すれば研究費は一気に減されて課されたノルマに対する開発ができなくなる。



 そしてその責任をチーム責任者が更に負わされるのだ。





 ――そして彼女は気がつけば社畜に成り下がっていた。



 それが彼女の前世だ。







 だからソフィアは、自分の都合で人から益を毟り取る様な泥棒のような行為が大嫌いだ。



 自分より弱い立場のモノを蔑ろにする奴も大嫌いだ。



 生まれ変わっても会社から受けた仕打ちだけは絶対に忘れなかったし、今だってその泥棒のような企業のフルネームも住所も重役の名前も上司の名前も、度々言われた屈辱的な言葉も忘れてない。



『君は我が社を潤わすためのシステムの一つに過ぎん』



 前世の名前は忘れてしまっていても――



 

 ×××




 「お気付きでしょうが私がベヒモスのマスターですのよ?


 魔人様」



 そう言うと、彼女の手の中に太陽を模した形の長い柄を持つワンドが呼び出される。



『ふうん。


 やっぱりそうなのか』



 ニヤリと笑うスタンの姿をした魔人。



「ええ」



 自分と魔人の二人と、兵士達との間に強固な障壁を瞬時に巡らせる。


 彼女の腰をガッツリ抱いていた筈のシルファも、地面で胡座をかいていたアジェスも、天を仰いでいた里奈も転移魔法で瞬時に障壁の向こう側に追い出したソフィア。



「私、チャッピーをとっても可愛がってますのよ」


『チャッピー?』


「うちのベヒモス()の名前ですのよ。


 とても可愛いでしょ?」


『・・・・・・』


「貴方様は身体がないからスタン様から身体を奪い、魔力が足りないからリーナさんの精神を身体から引き剥がしたんですか?」


『賢いねえキミ。


 そう、ホントならリーナの体から精神を引き剥がした時点で身体は機能を停止してた筈で、スタンは身体を乗っ取った時点で精神が崩壊するはずだったのサ』



 そう言って魔人は肩をすくめた。



「なのにリーナさんの身体は死んでないし、スタンさんの自我は未だ存在してる訳ですわね」



 笑顔のまま急激に魔力が増幅していくソフィア。



『そう。


 な~んか失敗だらけさ。


 思うようにならないもんだねぇ』



 そう言いながらニヤニヤ笑う魔人の目は笑っていなかった。





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