66果報は寝て待て?
「じゃあ魔人様。
ベヒモスが30年毎に消えてしまうようにしたのは何故ですの?」
ソフィアのこの質問にニヤニヤ笑う魔人。
『魔素は結晶にし過ぎると大気中や土中、水中の魔素が薄くなるのさ。
少ない方が生き物には害がなくなるけど、折角魔素に馴れてきた人類の身体がまた退化しちゃうだろう?
適当にベヒモスが消えて魔素が濃くなったり、現れて薄くなったりしたほうが魔素の負荷に耐えられる強い身体に人が進化するからだよ』
口角を引き上げながら魔人が答える。
「でもその間魔素のせいで人が大勢苦しみますわ。
元々人も動物も魔素を取り込む体の造りでは無いのですから」
そう、未だに魔力が発露しない人間は魔力酔いという中毒症状で命を落としかけるし、動物達は魔獣となり狂ったように人を襲うのだ。
「そうかな?
魔法が使えるようになったほうが便利じゃないの?」
それが本来この世界に無かったはずの魔素によって引き起こされた症状で、しかもこの眼の前の男の中に存在する魔人の愉しみの為だけに引き起こされたものだとすれば?――
「その間、貴方様は何をなさっていたんですの?」
ソフィアがニッコリ笑った――
『え、何もしないよシステムを組んだだけだね。
あとは放っといたら良いからね』
――果報は寝て待てということか。
「気に入りませんわね」
ソフィアが、とても綺麗に微笑んだ。
×××
過去ソフィアは、自分の能力を高く評価し最高の条件での給与と待遇を提示され日本では大企業と言われる家電メーカーへ就職した。
しかしその会社の開発チームは1つではなく、日本を代表する放送業界や大手ゲームメーカーと提携して開発をする部門毎に似たようなチームを多く編成していた。
彼女は入社と供にそのチームの1つをチームリーダーとして任せられたのだが、それからは地獄だった様に思う。
チーム同士はお互いにライバルであり、互いの成果はチームごとで管理し、最終的にコンテストを行いプレゼン後に重役が気に入った商品を開発できたチームだけが報奨金を受け取る権利が生まれる。
そこまでは普通の会社も同じ様なものだろう。
彼女の入社した企業では製品化されたモノが一定金額の売り上げが達成できなければその責任をチーム責任者が取らされるのだ。
もっとひどい時は、給料から企業の損失分を払わされた上に売れ残った在庫を全て買い取りをしなければならない。
そして決してそういった場合でも会社は技術者をクビにすることはしないし、自主退職も認めない。
各チームの開発した技術はプレゼンした時点で技術者や研究者のものではなく会社の知的財産として秘匿し、優れたものでも作成に金額が掛かりすぎるものや、簡単に壊れないような工夫のされた消費者を喜ばせるようなモノは自社では製品としては取り上げずに、その技術や研究結果を海外の企業や研究者に高値で売りつけ、利益を得ていた。
海外のメーカーが自分たちの開発していた製品と寸分たがわないものを公表し、特許を取り知的財産として占有する。
似たような事が何度も起こり、研究開発期間や発表時期を調べて己の研究結果を売られたのだと気がついたのは彼女のチームだけではなかった。
当然開発者にはなんの利益もないし、給料の査定にも影響しない。
会社の公的財産扱いとされていたからだ。




