64闘技場崩壊の危機
「で、何故ベヒモスの主人を知りたいんですか?」
陛下から目を離して、魔人に顔を向けると首をコテンと傾げるソフィア。
彼女はその時初めて黒いマントの男を間近で見ることになったのだが。
「インテリ眼鏡男子・・・」
と。
思わず呟いてしまう。
背の高い男で、如何にも魔術師と言った風貌なのだが敢えて言うならばインテリっぽいのだ。
この世界では珍しくYシャツにネクタイをしている上に、スーツによく似た形の服を着ていて身体つきはスッとしていて痩せている。
辺境の男達は魔術師でもどちらかというと細マッチョなので、今のソフィアだと見慣れない体型のはずだが前世ではよく会社で見かけた研究職の連中に近い為、何だか懐かしい・・・
が。唐突にその男が叫んだのだ。
『あーッ!
アタシじゃんッ?
どうしてそんなとこにいるの?
何で私の体が勝手に動いてるのッ?!』
何故か目の前の魔術師からリーナの声が聞こえ驚いた里奈は肩を揺らした。
「え?
リーナ? この男の人が?」
そう言いながら、思わず上目遣いで見上げるリーナと黒いマントの魔術師の目線が合い・・・
「な、な、なん、なんで?」
狼狽える里奈と首を傾げる魔人。
『うん?』
「広田先生ッ!?」
「「「「『は?』」」」」
確かにこの男性、言われてみれば日本人男性っぽい顔をしているな~
とソフィアだけは納得してポンと手を打ち鳴らした。
目が青いけど・・・
×××
「そそそ、その節はお世話になりましたッ!」
真剣な顔になった里奈の勢いに圧される魔人。
『え、えぇ・・・?』
困惑の表情になる男を無視して、なおも言い募る里奈。
「残念ながら受験前に命を落としてしまい・・・」
「ちょっとちょっと、里奈さん、この人は広田さんじゃないってば。
シッカリしてッ!!」
慌てて止めるソフィアの声でハッと我に返る里奈。
「あ。
そうか広田先生がここにいるわけ無いか・・・」
急にショボンとなり、しおしおと項垂れる里奈に何故か慌てる魔人?
『あ。
すまない期待に添えず。
俺はヒロタという名前ではない。
平民でスタンという名だ』
いや、違うこれはギルドの主任だろう・・・
多分・・・。
「スタンさんですね。
覚えました」
握り拳を思わず作る里奈。
覚えたんかーいッ!
とその場の全員が声なき声で叫んだのは間違いないだろう・・・
×××
「ねえ、里奈さん、広田先生って誰?」
「家庭教師の先生で、受験間際までお世話になってました」
ポッと頬を染める里奈・・・
思わず生暖かい目になるソフィアと、何となく聞こえてないけど察してしまう周りの兵士達・・・
そして困った顔になるスタン。
でもこの男、今は魔人に体を乗っ取られ中なので非常にややこしい。
『何か変なことになっちゃったなあ・・・』
『それより何で私の体が勝手に動いてんのよ~ッ!』
「それより・・・ うおぅッ!」
陛下が口を出そうとした途端に地面が揺れてひっくり返りそうになり、その場の全員が思わずしゃがむ。
『我の主人にケチを付けたなッ!』
『ベヒモスが生意気だからダ!』
いつの間にか離れた場所で象サイズに戻ったチャッピーと同じ様なサイズのワニのような姿のレヴが後ろ足で立ち上がり、お互いの前足で相手の顔を押しやっていた・・・
相撲かな?
闘技場がめっちゃ崩壊の危機なのかもしれない・・・




