6廃棄ダンジョン
「あーあ、ケーキもっと食べたかったわ~」
翌朝の早朝。
鬱蒼と茂る木々の間、下草を薙刀でバシバシと音を立てながら歩いていくのは、勿論ご想像通りソフィア・レイド・グレーン嬢と従兄弟のアジェスである。
「ハイハイ、どんだけ食い意地張ってんだか」
木の上にぶら下がるコウモリによく似た魔獣を弓で撃ち落としながら呆れた声を出すアジェス。
「だって、卒業しちゃったから王都には当分用事もないし王城のパティシエのケーキは絶品だもん」
「アホか。
転移魔法でチョイと行って食ってくりゃいいだろ?」
「お茶会なんかではあんなに一杯種類豊富には出ないんだってば~」
「・・・」
「くっそうベヒモスめ。
食い物の恨みはおっそろしいって思い知らせてやる」
「・・・」
魔物は多分わからんぞ、とか言ったら代わりに八つ裂きにされそうだなと口を噤んだ従兄弟である。
×××
「お嬢~! こっちです」
30分くらい歩き続けた頃、木々を抜けた途端に視界が開けた場所に出た。
辺境伯領の私兵達が、ダンジョンの入口付近を取り囲んでいるのが見える。
「えーと、このダンジョンって確か、コアを破壊したヤツじゃなかったっけ?」
「そうなんですよね」
先程の声を掛けてきた小隊長が頭を掻きながら眉を下げた。
ダンジョンは生き物のような仕組みの階層式洞穴で、『コア』と呼ばれる核が最奥に存在するのだが、コレが失われるとただの迷路付きの洞穴になり、魔獣や魔物は生まれなくなる。
冒険者達はダンジョンの魔物や魔獣達を狩ることで生計を立てているのでこのコアを勝手に壊すことは国により禁じられている。
ただ、あまりにも間引きが間に合わないほどダンジョンが増えてしまった場合はこのコアを破壊しいくつかのダンジョン自体を消す事もあるが、その場合は領主、この土地の場合はソフィアの父が判断を下す。
ダンジョンコアは死んだ大型の魔物の心臓から生まれると言われており、魔物のサイズによってダンジョンの深さも変わるらしい。
ダンジョンの魔物から取れる素材は加工品として使われ肉は食用になるし、魔物や魔獣の心臓から取れる魔石は、魔力を蓄えていて人々の生活の基礎になる。
要は乾電池かカセットボンベ式のガスみたいなものである。
――因みに使い捨てのマンガン電池みたいなモノなので魔力の充電は出来ない。
「魔道士達が魔力値が段々上がってるって言うんで、魔道具で調べたら魔力が膨れ上がってるのが計測されたんですよ。
索敵魔法では奥に大型の、それこそベヒモスクラスの魔力持ちが居るらしくってその周りの空間からも小さい反応がどんどん増えてるんです」
非常にヤバそうである。




