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50/120

50魔人




 「うわ、何だこりゃ」



 凍りついた廊下には氷柱(ツララ)が天井から下がり息が白くなるのを見てギルドマスターが驚いて口をあんぐり開けたが、異常事態を感じ取ったのだろう慌てて部屋に引っ込んだ。



「クソッ」



 総務主任は無詠唱でファイアストームを目の前の小さな子供のようなフードを被った人物にぶつけたが・・・



『アハハ。


 やあ、いいね元気で。


 其れなら問題なく使えそう』



 しかし黒いフードの人物は、片手を差し出して火の勢いを小さくすると自分の手のひらでヒョイとつかんで消してしまう。



『いい感じ』


「おい、どうしたんだ?


 そこのちっこいのはなんだ!」



 執務室に1度引っ込んだギルドマスターが大きな両刃のグレートソードを握り、慌てて廊下に走り出た。



「敵かっ?!」


『やだなあ、器が増えてもアンタじゃ使えないよー』


「なんなんだこいつ!」


「分からん、俺が知るかッ」



 次に放った雷を纏ったスピアーも消されてしまう。



『じゃ、貰うね』


「何をだッ」


『アンタの身体』


「「?」」



 目の前でフードを脱ぐと、そこに現れたのは輝くような金の髪に赤いワインのような瞳をした美少女で・・・


 彼女が両手を上げると魔術師(総務主任)の身体が宙に浮いた。



「っ!」


「オイッ、友人をどうする気だッ!」



 ギルドマスターが走りながらグレートソードを少女に向けて突き出したが、彼女の身体は魔術師と共に宙に浮き



『この器はもらうよ』



 そう言って、暴れる魔術師のシャツの襟首を捕まえると



『フフッ。


 手に入れた』


「お前ッ!


 何なんだよッ」


『え? 魔人だよ、知らないの?


 ま、いっか』



 ニンマリ笑ってあっという間に消えてしまった。



「騎士団に連絡しろーッ!」



 後に残されたギルドマスターが廊下を覗いていた職員に向かって叫び声をあげ、その場が騒然となった。 




 ×××




「魔人って何だよッ」


『え、ほんとに知らないの?』


「知らねえッ」



 襟首を掴まれたまま空に浮いて冒険者ギルドの建物を眺める少女に向かって総務主任は怒鳴ったが



『遊ぶのには身体がいるんだよ。


 精神だけじゃ足りないんだ。


 まあアンタの意識は無くなるけど別にいいよね~?


 ()に不満があるんでしょ?』



 無邪気に笑う美少女に顔が引き攣りそうにる魔術師。



「俺をどうする気だ」


『乗っ取る?


 アンタ達風にいうとそんな感じ』



 自分を魔人と名乗る少女はうふふふと口角を上げて笑い声を上げるが、温度の感じられない瞳に心底ゾッとする



『大人の魔術師の身体が欲しかったんだ。


 ()()はまだ若くてさ、身体が貧弱で使えないと思ったから。


 この魔力に釣り合いの取れる器が成人男性くらいだったんだよ。


 偶々アンタの身体が目に入ったからさ』



 そう言った途端に少女の身体が黒い霧状の何かに溶けるように変化した。


 その霧は男を包み込むように徐々に纏わり付いて行く。



「うわっ、何する気だ!」



 口や鼻、耳、全ての穴からその黒い(かすみ)が彼の身体に侵入し始める。



「やめろッ!」



 あまりの気持ち悪さに吐き気を覚えたのか、それとも黒い呪縛から自分を守ろうとしたのか。


 思わず口を手で塞ぐ元魔術師。



『大丈夫さ。


 すぐに馴染むからー』



 男の頭の中にあの声が響いた――





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