9敵わない小娘 〜スタン視点〜
「冒険者は身体が資本だろ?
いつ死んでも不思議じゃない仕事だから割と早いうちに引退して、貯金を資本にして商売とかを開業する奴等もいるんだ。
嫁や子供がいる奴は残せる金がでかい方がいいからって続けるヤツも居るけどな」
色気も素っ気もない会話をしながら職人街に足を進める。
――今日に限って何故かコイツの手を握ったままだ。
何やってんだ俺?――
彼にとっては魔人に捕まった後、自分の中に入ってきた『魔力』の本来の持ち主であるリナ。
お互いに自我が消えずに一つの身体の中で共存して反発し合いながら過ごした相手(?)である。
言葉遣いも冒険者相手みたいに適当に話しても全く気にしない彼女は、なんとなく付き合いやすく不思議と遠慮もない。
本来の身体に戻った彼女は少しだけ雰囲気が変わったけど魔力が体に戻ったと思えばそんなものかもしれない。
少しだけ事情を知っているスタンとしては、前世のリナの記憶も今は混ざってるから当然なんだろうとも思う。
「ギルドの職員は、薄給でも安全てことでしょうか?」
後ろから声がかかった。
「まあ、現場の冒険者達よりは確実に安全だ。
新人研修なんかに駆り出されなけりゃな」
「新人研修?」
「冒険者になったばっかりの連中の引率だ。
野外で新人ばかりを引き連れて基礎訓練をするんだよ。
泊まり込みで野外キャンプで魔獣狩りって感じだな」
「へえ~。
親切ですね。
騎士団なんかいきなり前線部隊行きでしたよ」
アハハハと思い出して笑うリナの言葉にギョッとして振り返った。
ニコニコ笑いながら此方を見るワインの赤のような瞳が綺麗だ。
「え?
訓練無し?」
「ええ。
いきなり眼の前に魔獣の群れですね。
で、動きを見て本人向きの部署に配属が決まったら、あとはほぼ毎日最前線です」
「マジか。
この国の騎士団が強い訳はそういう事か」
そういえばコイツは強い魔力を誇るからこそ魔人に魔力を盗まれたんだっけ。
「休みも多いですよ。
給料はSクラスの冒険者さんには劣るかもですけど。
何しろ最低でも20人編成の集団戦ですからね。
分配すればそんなものでしょう。
スタンさん達は四人でそれをやってる訳ですから、私達の5倍は給料を貰わないと割が合わないでしょうから、それが当たり前かもしれません」
「!」
里奈の考え方はスタンにとってはある意味斬新だった――
「凄い理屈だな。
そう考えるとギルドの職員は人数は馬鹿みたいに多いから薄給になるのは当たり前だな。
仲介手数料だけでやって行くのは辛いから宿舎や食堂や酒場の経営もヤッてる訳だが・・・」
「直営の宿もですよね」
「ああ。
そうやって考えたら俺のやった事は本当なら許されない犯罪だな・・・」
後悔とは後からするモノとはよく言ったものだと思うスタン。
「でも残業手当も出ないのに一人で遅くまで仕事してたでしょう?」
「あ? ああ。
よく知ってんな。
ギルマス達は家庭があるし、職員は定時で就業させる義務があるからな」
「じゃあ、スタンさんも定時に終わっていいんですよ」
「え?」




