10クロサイヘビメタ仕様
さて、時間は現在の森の中のダンジョン内に戻るのだが・・・ーー
「うーん、クロサイにしては物々しいわねぇ」
眉を顰め、こっそり岩陰から目の前の巨大な魔物を観察するソフィア嬢。
顔は馬のように長く、鼻先に縦並びに2本の大小の角が並んでいてその下には嘴のように先が尖った口がある。
耳は丸めた団扇のような形をしていてパタパタと忙しなく動いている。
もう、この時点で軽く見積もってもサイだが。
小さめの目が面長の顔のやや側面に有り、地面を見つめながら口をモゴモゴと動かしているのだが、多分魔石を食べているのだろう。
そして重そうな胴体を支える4本の短めの足は丸太のように太く、肩の辺りには額にある角と同じモノが3本付いている。
顔はサイ、身体は象で、肩周りはヘビメタ仕様といったところだろうか。
首から尾てい骨に向かい背筋に沿って硬そうな鱗が尻尾間際まで続いており、何だか前世で見た動物園のアルマジロを思い出す。
肉厚な尻尾は短い三角形で腹側に倒しているのだろう、先端が此方からは見えない。
岩陰から観察していると眼の前の魔物が前足で地面を1回踏みつけると地面の下からキラキラと柔らかく光る親指の先ほどの魔石が土から現れ、もう1度地面を踏みつけると、途端に隣り合った小石サイズの魔石同士がくっついて一回り大きくなった。
「え? 何あれ」
「土魔法を使ってるんでしょうな」
「ウ~ン・・・ 流石はベヒモス。
伝説の魔物」
部下達は感心してる場合かよ、と若干遠い目になったが小隊長と領主代理のソフィアとアジェスには文句を言えないので押し黙る。
「本物のベヒモスを見たのは初めてなのよね」
「俺もだ。
アイツ本当に魔法を使うんだな」
「ここ何十年かは現れておりませんからなあ」
――絶滅危惧種かしら?
前世のクロサイと混同し、首を傾げるソフィア。
「絶滅したと思っとりました」
――絶滅危惧種だった・・・
魔物だけど。
「魔物の中では比較的大人しいヤツらしいですが図体がでか過ぎるんで、動き回られるとその辺の物がぶっ壊れるんです。
そのせいで災害級指定の魔物なんですよね。
コレでもかなり小さいんですよ」
大人の象のサイズで小さいって・・・
やばくね?
「どうやってゲットしようかしら?」
ウ~ン、と腕組みをする美少女に
――やっぱり捕まえるつもりかよッ!?
全員が目が点になった。
×××
丁度その頃、ダンジョンの入口付近で包囲している辺境伯領の兵士達と野盗と見られる連中が小競り合いを起こしていた。
「この廃ダンジョンは入っちゃいかん。
辺境伯様の命令だ」
「うるせえッ!
俺等はここに用事があるんだよッ」
お互いに数は同数だが、見るからに山賊か野盗のように見える男達に兵士達は警戒の度合いを上げる。
「この中には災害級の魔物がいるんだ。
サッサと引き上げろッ!!」
「へえ~、そりゃあ上物じゃないか」
「情報通りならベヒモスのはずだぜ」
「「「?! 何故それを知ってる?」」」
「なんでってそりゃあ、ギルドからお達しがあったからさ」
ゲラゲラと下卑た笑いをする男達。
「お前達は冒険者なのか?!」
ギルド所属の冒険者なら、ここまで人相が悪いはずは無い筈だと、兵士達は警戒をして腰の剣の柄頭に手を置いて構え、魔法使い達は杖を手に持った。




