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祟り屋・大阪難波店  作者: HasumiChouji
第一章:狂った形
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(15)

「諂曲さん、何か、この雑居ビルの前に変なおっさんが居たんで連行してきました」

 翌日やって来た3人は……如何にもな「ヤカラ」という感じだが……まぁ、敵を油断させる為に、あえて、頭の悪そうなチンピラを演じているのだろう。

 そして、その3人とは別に、もう1人……しょぼくれた中年男を絵に描いたようなおっさんが居た。

 そのおっさんは両腕をつかまれて、床に座らされている。

 その顔に浮かんでいるのは「どうなっとるんや?」と言いたげな表情。

 何と言うか……俺の漫画に出そうと思っても、主人公サイドとしても、悪役としても魅力が無い。

 平凡過ぎて、3ページ後には読者が、どんな感じの顔だったか忘れてしまいかねないほどの……ありがちで、ありがちで、ありがちな外見のおっさんだった。

 体格は、やや小太り。

 背丈は、この年齢だと平均やや下ぐらいだろう。

 服……シマムラか無印かユニクロで売ってそうな服。中高生だったら「ママが買ってきたものを、そのまま着てる」よ〜な感じだが、あいにく、こいつは、おっさんだ。

 眼鏡……ダサいが……ありがち。

 ええっと……このおっさんを俺の漫画に出すとしたら……う〜ん……。

「何言うとる?俺は警察官やッ‼」

 へっ?

「何で、警察官が私服でこのマンションの前を明らかに何かを探ってるような感じで、うろついてた?」

「大体、警察官って2人1組での行動が基本じゃなかったのか?映画とかドラマとかで観たぞ。もう1人は、どこに居る?」

「俺は今日は非番やッ‼お前ら、非番とは言え警察官を拉致監禁して、ただで済むと……」

「じゃあ、所属とか言ってみんか、ゴルアっ‼」

 おお、流石は諂曲さんの仲間だ。

 やっぱり、ヤカラかチンピラみたいな外見は「フリ」で本当は、すごく、すごく、すごぉ〜く頭がいい。

「西成署の生活安全課の浜田ちゅ〜(もん)やッ‼」

 え……っ?

「知ってんですか?」

 諂曲さんのお仲間は、俺の表情が変ったのを見て、そう訊いてきた。

「ええ……たしか、ウチの女性(メス)のアシスタントの自殺未遂事件の担当だった警官です」

「ふ〜む……そうすると……」

 話を横で聞いていた諂曲さんが考え出した……。

 その後、諂曲さんは、どこかへ電話し……そして……。

「問題は、何で、その男が、例の女さんのアシスタントの自殺未遂事件の担当の警官を名乗れたのかです」

 え……?

「じゃ、やっぱり、この人は……偽警官」

「いや、そうに決ってるじゃないですか?」

 諂曲さんは……「何で、そんな馬鹿な質問するの?」って感じで、そう答えた。

「あ……あのなぁ……俺は、本物の警察官(サツカン)やッ‼」

「ほら、本物っぽい感じを出す為に、警察官の事を『サツカン』とか言ってる。わざとらしいにも……」

 諂曲さんの仲間が、おっちゃんを無理矢理立たせ……。

「おい、何する気やッ⁉」

「黙れ、偽警官ッ‼」

 ドゴオっ‼

 諂曲さんの蹴りが、おっさんの腹に入る。

 しかし、2人がかりで拘束されてるせいか……派手に吹き飛ばない。

「うぶっ……」

「俺は警察にコネが有るから、警察官は雰囲気で判るんだよッ‼テメエは、どう見ても偽警察官だッ‼」

 2度目の蹴り。

「ぐ……ぐへぇ……」

「おい、吐け。誰に頼まれた?」

「……な……何を言うとる?俺の担当しとった自殺未遂事件が……訳の判らん理由で捜査中止になったから……何か変やと思うて……」

 ペチ……。

 今度は顔を平手打ち。

 ペチ……。

 ペチ……。

「おい……」

 ペチペチペチペチ……。

「やめろ……」

 何度も何度も平手打ち。

 地味に効いてるようで……十分以上も続けてる内に、偽警察官は泣きそうな表情(かお)になっていった。

「おい、誰かの圧力で捜査が中止させられたってのか?ん?そんな話信じられるか?たかが漫画家のアシスタントの自殺未遂だぞ?」

「だから、何か変やと思うて……」

「すいません、捨てても大丈夫なバスタオル有りますか?なるべく大きめの」

「は……はい……」

 俺は風呂場にバスタオルを取りに行き……その途中で……。

「おい、誰か、コンビニ行って、店に置いてある中で、一番大きなバスタオル買って来てくれ。2つな」

 アシスタント達に、そう声をかける。

「あ……あの……」

「ちょっと待って下さい」

 アシスタント達が、何か言いたい事が有るらしいが……後で、ゆっくり聞く事にしよう。「後」がいつになるか俺にも判んないし、その「後」になっても覚えてたらだけど。

 いい加減かも知れないが、それでウチのスタジオは今まで大した問題は起きなかったんだ。

 俺は、バスタオルを持って、諂曲さん達が居るダイニング・キッチンに戻る。

「持って来ました」

「ああ、どうも」

 何故か、諂曲さんの手には黒い皮手袋。

 諂曲さんは、バスタオルを偽警察官の顔に被せる。

 喉の辺りに、窒息死しない程度の強さで紐を巻き付けて、バスタオルが顔から外れないようにする。

 何か、すげ〜手際がいい。

 流石は諂曲さんだ。

「お……ひ……にゃにおしゅ……りゅくぃ……?」

「正直に吐けッ‼お前は、誰の手先だッ⁉」

 たった数分で、偽警察官の顔に巻き付けられたバスタオルは血塗れになった。

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