(12)
『あの……水原さんのアパートの前に来てるんですが……その……水原さんの同居人の女性の方に帰ってくれって言われて……』
「何でだよッ⁉」
水原は退院したが……職場には復帰しなかった。
なので、アシスタントの1人を水原の自宅に向かわせたのだが……。
連載の新章の第一話は杉山さんにも気に入ってもらえた。
しかし、次話のネームを書いても……どうも、しっくり来ない。
ウチのスタジオの天才である水原の助けが必要だ。
なのに……水原は仕事に来ない。
どうなってんだ?
ちょっと才能が有る位で増長してやがるのか?
だとしたら、あいつの将来の為にも、少し「わからせ」をやる必要が有る。
『「未払い分の給料は要らないので、もう退職させてくれ」と水原さんが……』
「はぁっ?」
『え……えっと……水原さんが、そう言ってるって、同居人の女性の方が……』
「水原が、そんな事言う訳ないだろッ‼」
『いや、でも……その……』
「水原本人と話をしろッ‼水原が、そんな事言う訳がねえッ‼」
『えっ?』
「何が『えっ?』だ?何がッ?」
『い……いや、それは、その……』
「おい、その同居人の女の写真を撮っとけ」
『へっ?』
「その女にバレねえようにな……」