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Day8

八日目です。

           Day8

 あの後は結局、髪の毛を渡すだけ渡して家に帰った。その間、父さんはいつもとは打って変わって一言もしゃべらなかった。結構怖かった。

 そんなこんなで色々と釈然としない気分で目を覚ます。過去一寝覚めが悪い。

 だるい気分で満ちたまま手紙を持つ。

『おはよう、早速だが分かりやすく言うと超絶大ピンチだ。』

「……は?」

『だから、超絶大ピンチだ。』

「…………」

 一回手紙を閉じる。…よし、

 再び手紙を開く。

『悪いが現実逃避をしている暇も余裕も一ミリたりとてない。』

「……おいおい、」

 だるさに囚われていた脳みそが活発に動き出す。同時に、この状況のヤバさが伝わってくる。

 超絶大ピンチ、だと?これまでの手紙でそんな言葉が出てきたことはない。大体陰人が解決しているから、ピンチすらそうそう出てこない。なのに、超絶大ピンチ、だと?

『簡潔に言うと、山口巡査部長が墓を暴こうとしている。』

「墓、か。」

 なんで墓が出てくるんだ?

『トラックが発見された小平霊園で、墓が掘り返された跡が見つかった。そこに死体があるものとして、山口巡査部長(以降長いので山口JBと略す)が墓を掘り起こそうとしている。』

 やっぱり巡査部長は長い。JBと省略するのが一番だ。

 いや、そうじゃなくて、

 遺体、見つかったんだ。よか……

『当然この穴は偽物だ。遺体がある訳ないので当然だが。』

 おっとぉ

 断言までいく?遺体が無いことを確信している感じ?

『そうなると、警察が意味もなく墓を暴いたという事実が残る。それは非常にまずい。』

「まあ、そうだな。」

 国家機関が誤認捜査で墓を暴いちゃったら、特大スキャンダルだもんな。それも豊島が喜びそうな。

『だからそれを止めて欲しい。』

「……どうやって?」

 僕に警察をどうこうできる権力はないよ。

『根性だ。』

「ふざけんな。」

 男子中学生の根性で捜査を止める警察はいないぞ。

『正直、こうなるとは思っていなかった。一応、二重作警部補に死ぬ気で止めるように言ってはあるが、果たしてどの位役立つか分からない。だから、君に協力をお願いしたい。』

「でも、それって、」

 焼け石に水なんじゃ

『状況は絶望的だ。正直、もう防げるとは思ってはない。ただ、だからといって、やれる事をやらないのは違うだろう。』

「防げるとは思っていない、ってお前、」

 一瞬不安が頭をよぎる。今度こそダメなんじゃないかと思ってしまう。ただ、

 お前に怒られた時の方がよっぽど絶望的だったっての!

「……任せとけ!お前が思っているよりもいい結果を残してやるよ!」

 元気よく答える。

『彼らは小平霊園にいる。止めるのは明日まで、昨日の髪の毛の解析結果が出るまででいい。本当に、よろしく頼む。』

「ああ。」

 決意を固める、前に一言。

「代わりに宿題もよろしくな!」

 利用できるなら利用しよう。


 そんなこんなで家を飛び出し小平霊園に全力疾走をかます。ただ、

「そういえば今日、普通に学校あったんだな。」

 当たり前ではあるが、今日は平日なので、普通に授業がある。つまりこれは堂々としたサボりだ。道理で母さんが変な顔で見ている訳だ。

 独り言を呟きながら僕は走る。気分はメロス、速度はメロス越えの速さで。(メロスは音速で走ったなんてデータもあるらしいけど気にしない。)

 なんとなく見覚えのある道を無事走り切って、小平霊園に着くと、周りは警察官で溢れていた。

 とりあえず堂々と入る。直前ですぐに止められた。

「すみません、ちょっと今は入れなくて。」

「いや、少し入る用があって、」

「どんな用ですか?」

「それは、その、」

捜査を止めに来た、なんて言ったら入れてくれないだろうし、適当に誤魔化すしかないか。

「ちょっとトイレを借りに。」

「ダメです。」

にべもなく断られた。こうなったら、最終奥義だ。

「あ!UFO!」

「……帰ってください。」

やっぱり無理だった。

仕方なく、一旦離れる。少し助走をつけて殴り飛ばすしかないな。

下がりきった時、一瞬人を見かける。

「あ、豊島、じゃ」

人違いだった。

「何!」

 そう言うとその警官がダッシュで走り出て行った。

「ない、ん、ですけど、まあいいか。」

 その警官は放っておいてそのまま入って行く。


 場所が分からないから適当に走り回る事10分、ようやく父さん達を見つける。どうやらもう墓を掘り返そうとしているらしく、周りに数人スコップを持った警官がいる。

「それじゃあ、掘り返しましょうか。」

「ちょっと待ったー!」

 慌てて叫ぶ。結果、その場にいた全員の視線が突き刺さる。

「陽人⁉学校は⁉」

 ゴキブリを見つけたみたいに叫ぶ父さんはさておき。

「どうしましたか?」

 こっち、山口JBが問題だ。

「今、墓を掘り返そうとしていますよね!」

「そうですけど?」

「今すぐやめてください!」

「は?」

 迫力のある「は?」が返ってきた。でも、気にしている暇は無い。

「見つかった穴は偽物です!下手に掘り返すと警察が無意味に墓を荒らしたっていう結果だけが残ります!そんなんじゃ犯人の思うツボです!だからどうか、お願いします!」

 一気に言い切ると頭を下げる。誠意を示すためもあるが、山口JBがしている顔を見ないために。

「……確かに、あなたの推理力は信用しています。これまでの実績も然り、今回だってその推理力には脱帽しています。」

「じゃあ!」

 思わず顔を上げる。そこには多少はやさしくなったとはいえ、やっぱり険しい顔をした山口JBが立っていた。

「今、豊島が起きた以上、反論をくらう前に決定的な証拠を掴むしかないんです。その為なら多少のリスクだって冒します。」

「え、そんな、」

 計画は続行するらしい。陰人の推理力が信用されているのが幸いだが、それにしたってまずい状況だ。

「そこを何とか!」

「お願いします!」

 急に横やりが飛んでくる。その人物は、

「……父さん?」

「なんであなたが。朝、やる事は伝えたはずですよ。」

「分かってます!でもこの通りです!どうか!」

 そういうと、急に土下座までしだす。

「わああ、ちょっと!」

 慌てて僕も土下座する。

「な、なんでここまで?」

 小声で隣の父さんに訊く。

「可愛い息子の願いだ。このくらいはやらないとな。」

「え、」

 喜びたかったけど可愛い息子という単語がそれを止める。

「それに、これまでずっとずっと助けてくれたしな。しかも、これも警察の為なんだろ?じゃあ、こんな頭でいいなら何度だって下げるし、土下座だって何回もやってやるよ。」

 うん、この言葉には素直に感動する。

「ありがとう。」

「聞こえてますよ。」

「「え?」」

 山口JBがやれやれと言わんばかりに首を振る。顔の険しさは消えている。

「それで、いつまで待てばいいんですか。流石にずっとは待てませんからね。」

「それなら、昨日渡した髪の毛の解析結果が出るまででいいです。」

「……分かりました。見当違いだったら、すぐ掘り返しますからね。」

「はい!ありがとうございます!」

 ヤバイ、泣きそうなくらい嬉しい。僕がようやく陰人の役に立ったからかもしれない。

「それはそうと、」

 父さんに腕が捕まれる。

「ん?」

「学校をサボるような不良児は、補導しないといけないな。」

「ゲ!」


 結局、僕は学校をサボった代わりに警察官との楽しい楽しいお話をする羽目になった。……もう二度と学校サボりたくない。

「大変です!」

「どうした?」

 父さんにお話ししていると、急に警察官が飛び込んできた。(そういえば、あの間違って豊島を追いかけちゃった警察官じゃない?)

「どうした?野田。」

「豊島が有馬に襲われました!」

「なんでだよ!」

 僕もそう思う。なんでだよ!

「豊島の現状は?」

「幸い、軽傷です!」

「そうか、有馬は?」

「現在は落ち着いています!」

「そうか。」

 そうか、じゃねぇ!

「そもそも、なんで豊島が外にいるの?」

「簡単に言うと、取材のためにとか抜かして逃げた。」

「スゴ!」

 これが昨日まで寝た切りだった怪我人のやる事か?というか、

「ひょっとして、警察って案外弱い?」

 今から強硬脱走しようかな?

「職業柄慣れてるんだろ。」

「……そっかぁ。」

 雑誌記者ってそういう職業なんだ。

「それで、なんで有馬に襲われているんだ?」

 父さんも知らないのね。

「なんでも、取材をするために近づいて行ったらしいです。それで、逆鱗に触れて殺されそうになったとかで。」

「何やっているんだ、ガチで。」

「本当に。」

 あれでしょ、有馬って記事で親が記事に書かれて仕事をくびにされた人でしょ。本当に何やってるんだ?

「ちなみに次は福田さんに取材しに行くそうです。」

「絶対に止めろ。監視してでもだ。」

「はい、分かりました!」

 野田さんは去って行った。

「……豊島は何やってるんだろうね。」

「取材だろ。」

「そうなの?そうだね。そうだろうね。そういえば」

「説教を続けるぞ。」

 楽しいお話しからは逃げられなかった。


 一通りのお話しは終わり、昼過ぎになってようやく帰れた。

 家に着くと、予め話が行っていたのか、母さんからは何も言われずにご飯を渡された。かつ丼だった。おいしかった。

「という訳だ。じゃあ、よろしく。」

 部屋に着くと、すぐにこう言った後、寝た。精神的にとんでもなく疲れた。

お父さん、覚醒!

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