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Day6

六日目です。

           Day6

 今日は普通の学校の日。部活動が無いことを除けばいたって普通の日だ。

 いつも通り起きると、机には一通の置手紙。

『おはよう。』

「おはよう。」

 いつもよりシンプルなスタートで手紙は始まっていた。

『昨日はどうもありがとう。おかげでまあ、いい状況になったよ。』

「そうなの?まあ、そいつは良かった。」

 いつ状況が良くなったのは分からないが、多分良かった。

『という訳で、君には中尾さんが何か知っているか、探ってきて欲しい。』

「は?」

『嫌なのは分かっている。ただ、事件は一向に前進していない。遺伝子情報の結果待ちだ。』

 さっきのいい状況になった発言はどうした?

『それに、このままだとどうも良くない気がする。今のところ、全て向こうの想定内といった感じだ。』

「証拠は?」

『証拠はない。探偵の勘だ。』

 いよいよ怖くなってきた。

 あの陰人が、勘に頼るのか?これまですべて推理で理論立てていただろう陰人が?

 これは、案外よくある『意外な一面』って物なのかもしれない。人間なんだから、勘にだってたまには頼るっていう一面なのかもしれない。ただ、今は意外な一面なんてさらけ出さずに、事件を解決してほしい。

『テストの答えもアップロードしておいた。僕は僕の仕事をした。だから、君は君の仕事をしてほしい。』

 だめだ、どうも言い訳がましく思える。

『よろしく頼んだ。』

 手紙が終わった。とても短い手紙だった。

「はあ、」

 思わず溜息をする。憂鬱だ。

 パソコンは見ずに家を出た。いたずらはなかった。


 普通に授業を受け、普通に給食を食べ、普通に昼休みを迎えた。

 さて、

 目の前には中尾さん、教室には幸い誰もいない。つまり、中尾さんが何を知っているのか探る、絶好のタイミング。なんだけど、

 探る気分にはなれない。もうこの事件の存在なんて無視して、ハッとしない日常生活を送るべきなんじゃないだろうか?

「どうしたの?」

「はい?」

 話しかけられた。

「さっきからなんかウジウジしてたけど、どうしたの?」

「えっと、その」

「?」

 ……こうなれば腹を括るしかない。

「居なくなっていた1カ月の時に何をやっていたのかを教えて欲しくって。」

「ああ、まあ、ちょっとね。」

 遠い目をして答える中尾さん。答えるつもりはなさそうだ。

ただ、ここで引き下がったら、僕はただの変人と化す。こうなったら意地でも答えてもらう。

「そう言わずに、教えてくれませんか?」

「どうでもいいでしょ、そんな事。」

 そうだよ、どうでもいいよ!

「いや、ちょっとどうでもよくない事情があって。」

「何それ?バカみたいなこと言わないで。」

「いや、バカみたいに思えるだろうけど、結構複雑な事情があって。」

「じゃあ、その事情って言うのは何?」

「え?」

「そっちがその事情って言うのを話してくれたら教えてあげようか?」

「……」

 これって、話しちゃっていいのかな?まあでも、探るように言われているんだし、このくらいはいいか。

「どうする?」

「今事情を話すので、ちょっと待ってください。」

 そして僕は、中尾さんが事件の関係者として扱われていることを除いて、大体の事を話した。

「……という訳なんですよ。」

「ふーん。」

「それで、この事件に中尾さんが関わっているかもしれな……」

  キーンコーンカーンコーン

「あ、ヤバ。次教室移動あるよ。また後で話すね。」

 そういうと、中尾さんはそそくさと教室を出て行った。

 ……探れてないんだよな。


 次の授業は地理だった。授業は面白いけど眠くなることで有名な先生で、クラスの7割は寝て地獄のような点数を出している。

 僕は普段は真面目な3割なので、起きて授業を聞いている。ただ、

 今はとんでもなく眠い。きっと、陰人が事件で夜遅くまで起きているせいだろう。

 まあ、とはいっても、セルフビンタすれば、こんな、眠気、すぐ、吹、き、飛、ぶ……


 痛!

いきなり左手に痛みが走った。慌てて見る。血が出ている。

 これは、えっと、つまり、どういう事?

 右手から何かが落ちる。シャーペンだ。よく見ると先端に血が付いている。きっとこれで手を刺したのだろう。

 なんで?

 混乱しながら授業を受けようとする。その時、ノートに走り書きがあるのに気づいた。

『何をやっているんだ、君は。』

 これは、陰人からの手紙か?なんだか怒気を含んでいる気がする。

『関係者に事情をペラペラと話した挙句、何も情報を引き出せないなんて、どういうつもりだ?』

 気のせいじゃない、確実に怒気を含んでいる。陰人が完全にキレている。

『君しか頼れる相手がいないんだ。頼むからしっかりしてくれ。』

 ……そうだよな。こんな賢くない奴しか頼れないんだよな。陰人の存在を知っているのは僕くらいなんだから。

なんだか、本当に理不尽にむしゃくしゃしていた気がしてきた。

『とりあえず、この後の中尾さんの行動に注意してくれ。関係者なら十中八九何らかのリアクションを起こすはずだ。頑張ってくれ。』

 走り書きはここで終わっていた。

 ……やるか。

とりあえず中尾さんを確認する。いない。

いない?

 隣の奴に話しかける。

「なあ。」

「どうした?」

「中尾さん知らね?」

「1分前くらいに早退したぞ。」

「へ?」

 困惑した顔で困惑した顔を見られる。

 リアクション早すぎじゃない?

 どうするべきか悩む。どうする?

 リアクション自体は起こしたからそれで良しとするか、詳しく調べるか。

本当はこれで良しとしたい。ただ、僕のせいで陰人に迷惑をかけてしまったのは事実。

数秒間悩む。そして決める。

「先生!」

「どうしましたか?」

「トイレ行ってきます!」

 そう言ってすぐさま教室を出る。教室が少し騒がしい気もするが気にしない。

 階段を爆速で降りて下駄箱に着く。急いで靴に履き替える。ダッシュで学校を出る。

 荷物?知った事か!

 正門を出て辺りを見渡す。ギリギリ中尾さんを見かける。着いていく。

 完全なる不審者だが、そうも言っていられない。

 中尾さんは電話をしながら速足で歩いている。誰にかけているんだ?


そのまま歩くこと15分、僕たちは福田運輸に着いた。

 なんで?

 中尾さんはそのままずかずかと入って行く。仕方ないので、こそこそと後を付ける。

 中尾さんはそのまま奥の部屋に入る。こればかりは入る訳にはいかないので、扉に耳を付けて聞き耳を立てる。

「福田さん、井上さん、まずいですよ。」

「そうだね、どうしようか。」

 中尾さんと福田さんが話している。そして知らない人、井上さん。誰?

「一応、捜査自体は僕らの思い通りに進んでいるらしいが、何故中尾さんが引っかかっているんだい?」

「分かりません。学校でこの事を言った記憶はありませんし。」

「ひょっとして、長袖で疑われたんじゃないですか?」

 長袖?それがどうした?

「いや、そんな推理はできていないはず。きっと、豊島関係を漁っていたらたまたま見つかったくらいだろうな。正規の捜査じゃなくて子供を使っているくらいだし。」

 その子供が二重人格で片方が探偵である可能性は考えてないらしい。(当たり前か。)

「ちなみに、この長袖はどの位やればいいんですか?」

「まだしていて欲しい。大丈夫、1カ月もかからずに治るはずだ。」

「それなら良かったです。これ暑いんですよね。」

 何が治るんだ?

「まあ、とりあえず、中尾さんはその、二重作、だっけ?そいつから情報をできる限り引き出して欲しい。福田さんはとにかく目立たないように。」

「はい。」

「分かった。」

「では、解散。」

 足音が近づいてくる。全力ダッシュで逃げる。

 福田運輸を出て100メートルくらい走った所でようやく止まる。

 さて、学校どうしよう?


 学校に帰った後は謝罪祭りだった。呼び出されて先生に怒られ、帰って母さんに怒られ、電話で父さんに怒られた。過去一怒られた。(まあ、学校脱走してきたら誰だって怒るだろうけど。)

 ようやく自室に籠れた。そして、今日最後の謝罪をする。

「陰人、ごめん。」

 頭を下げる。

「お前の計画をめちゃくちゃにしちゃって本当にごめん。許せないだろうけど、とりあえず謝る。」

 僕の部屋に僕の声が響く。

「こんな奴しか頼れないのは歯痒いと思う。でも、頑張るよ。」

 それ以降、今日は僕の部屋に僕の声は響かなかった。

よいこのみんなは、陽人おにいさんみたいにがっこうを脱走したり、陰人おにいさんみたいにじぶんのてにシャーペンを突き刺したりしないでね。

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