Day9
九日目です。
Day9
アラームが鳴る。止める。時間は3時だった。昼の、ではない。朝の、だ。
は?
慌てて時間を確認し直す。やっぱり早朝3時だ。
「どうなってやがる。」
とりあえず、机に向かう。机には手紙と宿題。宿題?
手紙を広げる。読む。
『おはよう、陽人君。』
「おはよう、ところでこの時間はなんだい?」
昼寝をしたはずなんだけどな。
『こんな遅くにしたことは謝罪する。ただ、今日謎解きをする必要がある以上、寝不足になる必要があったんだ。だから、限界近くまで僕が活動し続けて、アラームも1時間後にした。』
「寝不足になる必要って、…え?」
今日謎解きをする?それはひょっとして?
『それはさておき、何があったか教えてあげよう。まずは、昨日の件だ。僕が思った通りの結果が検査で出たらしい。山口JBも感謝していたよ。』
話を逸らすな。
『検査の内容は今伝える訳にはいかない。ここで変な事態になる訳にはいかないからな。』
「その度は本当に申し訳ありませんでした。」
クソ、全然強く出れない。
『で、それに従い、今日は待望の謎解きをする。名探偵がよくやる、僕が一度やってみたかったあれだ。』
「おぉー!」
関係者が一堂に会する、あれか!
『まあ、本当に関係があって、集めても問題の無い人しか集まらないがな。』
「…おー、」
盛り下げないでくれよ。
『その都合上、今日君は公欠だ。』
「よっしゃー!」
思わず大声を出す。
「うるさーい」
速攻クレームが入った。
「ごめーん」
『決して興奮して叫ばないように。』
「遅いよ。」
『手遅れだろうが。』
「ふざけんな。」
いや、待て待て、事情は多少分かったが、この早朝に起こされたのは何なんだ?
『本題に入ろう。引き出しの中に風邪薬がある。副作用が強くて眠くなる奴だ。謎解きの直前にそれを飲んでほしい。』
「はあ、……まさか」
『こればっかりは君に説明してもらう訳にはいかないのでね。僕が出張って直接謎解きをしよう。』
「マジで!」
陰人が初めて直接、面と向かって謎解きをする。二重人格じゃ無ければぜひ見たいところだ。
『という訳で、いざという時によく眠れるように、今日はしっかり寝不足になっておいた訳だ。』
事情を知らない人からすると意味の分からないセリフだ。
それはそうと、
「いつどこに行けばいい?」
『午前10時集合、場所は二重作警部補の勤める警察署、そこに着いたらすぐトイレに行って薬を飲んで欲しい。』
「了解。」
これで準備万端、かな?
『あぁ、そうそう、昨日のお礼だ。宿題の山を見て見たまえ。』
「ああ、分かった。」
とりあえず、手ごろなノートをめくる。文字でぎちぎちになっている。……ひょっとして、
『課題は終わらせておいた。考査の範囲も前にデータが入っていたところにある。もちろん、更新済みの状況で。』
「よっしゃー‼」
今度は気を遣って小声で叫ぶ。ただまあ、やっぱり嬉しいものだ。
『あと、感謝を述べる。どうもありがとう。』
気のせいか、少し手紙がにじんでいる。
『追記、眠らない用の眠気覚ましとしてガムも買ってある。活用してくれ。』
「……こっちこそ、ありがとう。」
時間が来て、警察署に着く。いつも通り、父さんがいる。
「おはよう。」
「ああ、おはよう陽人。」
少し緊張してくる。なんだかんだ言って、この事件がそろそろ終わるのだ。緊張しないわけがない。
「じゃあ、早速行くか?」
「あ、ちょっと待って。トイレ行きたい。」
「それなら、あそこだ。あんまり遅れるなよ。」
「うん。」
こうして、無事トイレに向かうと、個室に入る。
引き出しにあった風邪薬に水もある。(しっかり市販品だ。お茶に入っているカフェインでどうこうあったらまずいからな。)それに今の時点で結構眠い。緊張と眠気が拮抗している。(昨日どんだけ起きていたんだろう?)
薬を飲む。
…
……
………
…………何も起きないが?
とりあえず個室から出ようとする。派手に転ぶ。やっぱり何か起きていたらしい。
僕の意識がだんだん遠ざかる。それと同時に、動かしてるつもりもないのに、体が、動き、出、し、……
顔面に衝撃が走り、続いて背中にも走る。
慌てて目を開ける。すぐどこかが殴られる。ただ、どこかは分からない。
状況は分からないが、どうやら誰かが馬乗りになって僕を殴っているらしい。
なんか分からないけど、非常にむかつくので、とりあえず殴り飛ばす。
「プゲラ!」
よく分からない悲鳴を上げながら殴っていた誰かが飛ばされる。近づいて誰だったのか確認する。
うーん、寝起き、殴られた後、状況が分からない、と3つ条件が重なって誰なのか分からない。
辛うじて働く脳みそを稼働してようやく思い出す。
福田さんだ。
……なんで?
より一層混乱した僕を尻目に、事態は勝手に進んでいったらしい。気づいたら家に着いていた。ようやく落ち着いたが、これはひょっとして後の祭りって奴じゃないだろうか?
とりあえず、状況整理。僕の分かっている事。
・警察署に行った
・陰人に主導権を譲った
・気づいたら福田さんに馬乗りで殴られてた
うん、端的に言って意味不明だ。
ただ、多少は予想がつく。何かあったのは陰人が主導権を握っていた間の事だ。つまり、謎解きをしていた時、何かしらの事があって福田さんに殴られるに至る訳だ。
待て、という事は、福田さんは謎解きの場に呼ばれていた訳か。つまり、
犯人?
いや、関係者ではあるから、でもよっぽどじゃない限り呼ばれないんじゃ、でもトラック関連で何かあったのかも、じゃあなんで殴られる?
うーん、分からない。どういうことだ?
一旦落ち着くためにセルフビンタ。そのまま椅子に座る。足を組む。
きっと名探偵のふりをしながら考えたらこの謎も分かるだろう。
二時間くらい死ぬ気で考えたけど、一切分からなかった。分かってる。分かってるとも。格好や見た目の問題じゃない事くらい。
ただ、唯一分かったのは輸血カーの事だ。輸血センターの傍で井上さんが働かされていたあの輸血カー。最初は気にならなかったが、いくら何でも嫌がらせでそんな所に置くわけがない。じゃあ、何故か。ひょっとして、本人が望んだんじゃないか?豊島の病院に近すぎず遠すぎない、怪しまれないがすぐ駆け付けられるあの場所に。
でも、それだとまるで井上さんが共犯者みたいになってしまう。既に福田さんも怪しいのに。まさか、二人とも共犯者、ってこと?
分からない。
ただ、猛烈に眠いので、そろそろ寝よう。
椅子を立つ、正確にはその直前、机の端っこの方に書き込みがあるのに気が付いた。
『キーポイントはトラックと血。この二つを結び付けられれば謎が分かるだろう。僕が知らせていない情報もあるにはあるが、もう推理するには事足りる情報がある。自力で解きたければ頑張りたまえ。』
名探偵のふりなんてしてるんじゃなかった。よく見とけばよかった。クソゥ……。
頑張って考える。ただ、もう頭が働かない。休養を求める。
諦めて寝る事にした。
さて、皆さんにはこの謎が解けましたか?




