いや、しゃれにならんてほんま
私は気が付くと畳に寝かされていた。・・・ん?畳?なんで畳?
開け放たれている障子から見えるのは竹林(?)とも表現し難い、藪(?)のような、とげとげしい草木が乱雑に生えているのが見えた。いや、ここどこだよ。身をよじろうとするが、上手く体が動かない。何とか動かして数ミリほど体が揺れたが、背中にゴリゴリとした感触があった。どうやら寝かされていたのは畳ではなく薄っぺらい茣蓙でその下に小石がいくつもあったようだ。
ふと見ると、ぼさぼさの荒れ果てた髪を後ろに結った、紫色と白の縞模様のひざ丈の着物(?)浴衣(?)を着た、目つきの悪い女性が近くでじっとこちらを見ていた。私はその女性を一目見るや否や、気が付いてしまった。
――――――――「あんたもしぬの」
あの母親だと。
私は驚いて、じたばたしたが手足が空を切るだけで、一向に体が動かない。それにしても、なんかやたら赤っぽいというか濃いピンクっぽくて小さい手や足だなぁ。それになんだか肌がベタベタしている。まるで生まれたての赤ん坊のような。・・・ここでようやく気が付いた。私はどうやら生まれたばかりの赤ん坊のようだ。
近くには、ぱちぱちと燃える薄汚れた囲炉裏があった。この部屋は全体的に灰色で薄汚れていた。
母親は睨むように囲炉裏の傍にあった鉄串を見ると、ニタニタと笑い始め、その鉄串を手に取った。
母親は鉄串の先を私の方へ向けて近付けてくる。
嫌な予感がするが、体は相変わらず動かない。―――――――――――――
私は気が付くと、串に刺さった黒い炭の塊ようなものを見下ろしていた。
炭の横で紫と白の縞模様の浴衣の女がぎゃはぎゃは笑っている。女は囲炉裏からその串に刺さった炭を持って外へ出た。外には浴衣を着た子供が男女3人ほど遊んでいる。
「おかあさん、それなーに?」
「踏んでごらん」
「なんで?」
「いいから!」
その炭のようなものを子供3人に踏ませた。すると女の笑い声が
ぎゃーはははははっはっははははははははははははっはあっははははあはははあはあぎゃははははははははははあはははははははあははははははははははははははははははははははははぎゃあははははっははははははっははははははははっはははははは・・・うるさいほど辺りに響き渡った。
いや、しゃれにならんて。私は心の中で似非関西弁で言った。
誰が好き好んで母親に殺される夢なんか・・・。
そもそもこれは夢なのか?どちらにせよ、
母親に股から串刺しにされて火あぶりにされる赤ん坊の自分とか見たくないわ。
ほんまに。
しかもその女、それを子供たちに踏ませるとか。・・・ありえんて。
・・・でも、あの母親ならあり得る・・・。
私はそう思った。仮にここが親の権利が強大たっだころの昔の日本のド田舎で、藪の中に家があって、ご近所なんて概念がないくらい、周りの目が無かったらあり得る。
元居た世界の母親が私の左腕にナイフを刺すだけで済んだのは、世間体を気にして、とか逮捕されたくない、とか思ったからで、決して私の為に思い留まったわけではないことは薄々勘付いていた。
状況がそろえば私は母親に殺される。逆に言えば、その状況を作らなければ生きられる。
状況・・・つまり周りの目さえあれば・・・。
今回は運が無かった、そうゆうこと。次・・・があるのか知らないけど。っていうか今どういう状況なのかわからないけど。
もしまた転生出来たら、次こそうまくできると良いな。




